一部の悪意により起きた事故、もしくは全く異なる規模の事例により、小規模建築の善意による丁寧なものづくりまで、がんじがらめに規制しなくとも良いのではないかの疑問を感じざるを得ないのである
5月から盛土規制法の施行が始まった。この法律によると、1m以上の盛度を行う場合は、川口市の開発指導課に申請をしなければならないこととなった。これまでは、2m未満の擁壁の場合は、設計者判断で良いとされ、2mを超える擁壁の場合は県条例により工作物申請が必要だったのだが、これからは1m以上の盛土で行政への申請が必要となったので、これは大変である。行政に協議に行くと、どうやら受け入れ態勢はまだまだのようで、大臣認定商品ならすぐに許可がおろせると思うが、普通に構造計算をされた擁壁の安全性を確認するのはなかなか難しそうな様子であった。
この法律ができた要因は、伊豆半島で起こった土砂災害である。それを防ぐために1m程度の小物までを全て規制するのは良いが、規制をしても許可申請の体制整備ができなければ、結果的に既存の古い擁壁の作り替えが遅れ、杉並の擁壁崩落事故のような事象を引き起こす改悪となる。実はこのような現象が4月の建築基準法改正によっても起きている。今年の4月から、これまで構造審査が免除されていた木造2階建の建築物でも、構造審査が必要となった。その結果、確認申請機関は、確認申請案件の増加に対応しきれずに、審査待ちの状態が続いている。これまで普通に電話の問い合わせができていたのに、今はそれすら難しい。
果たして、住宅のような小さな建築の製造過程を複雑にすることに、どれだけの意味があるのだろうか。一部の悪意により起きた事故、もしくは全く異なる規模の事例により、小規模建築の善意による丁寧なものづくりまで、がんじがらめに規制しなくとも良いのではないかの疑問を感じざるを得ないのである。住宅は個人の最も大きな投資である。自分のものに許される自由と、全体最適を生み出すための規制のバランスは難しい。もう少し丁寧な施作を政治と行政に期待したいと思う。
