増井真也 日記 blog

住宅設計は面白い

2024/06/26

住宅設計とはなんだろう。建築というのはその土地に建つものだから、まずは敷地の状況を確認する訳だけれど、僕のように埼玉県や東京都の仕事が多いと周りにはなんらかの建物が建っていたりするわけで、やっぱり自分が設計した建物が建った後にその町の雰囲気が良くなるような住宅を作りたいというのが一番ではないかと思う。そしてやっぱり住宅設計を考える時には、そこに住まう人のことを一番に考える。そこに住まう家族が幸せに暮らすことができるような家は一体どんなものだろうかの思考がとても大切であると思う。

大学1年生の時の設計課題に「お母さんのための家」というものがあった。一番大切な存在の象徴としてお母さんを人物を課題にしたのだが、自分のお母さんだったら趣味や家での過ごし方などを最もよく理解しているから、施主にとっての良い家とはを考えるにはとても良い課題だと思う。そしてそれを最初の設計課題でやるということもまたとても大切であると思う。

実務においてはある日、目の前にとあるご家族が現れる。そこには必ず奥様がいる。独身の方の場合でも、同じように女性のクライアントがいる。男性だけの独身の家は滅多に建てない。僕の人生の中でも1軒だけだ。でも女性の一人暮らしの家はすごく多い。だから目の前にいる女性がどんなふうにこの家を使ってくれて楽しんでくれるかがいつもテーマになる。民泊をしながら一人暮らしを楽しみたいという人もいるし、家族4人でゆったりと暮らす家で自分の工房を持って制作や販売をしたい人もいる。ご両親が亡くなった後に自分を取り戻すために家を作りたいという人もいた。家づくりは色々な理由で行われるのだ。その色々な理由に寄り添って考える時間が最もやりがいのある、そして楽しいひとときである。、という理由はこれであろう。建築になんらかの力があるとしても、その力がわかりにくくなってしまった現代社会において、住宅だけは変わらずにその力を持ち続けている。それは住宅が個人にとってはもとも深い関係のある建築だからだと思う。だからこそ住宅はやめられないのだ。

(さんかくの家ドローイング:この住宅は離婚をしてしまったお母さんと娘さんのための住宅である。ギリギリの予算しかない中で、こだわりの薪ストーブを配置して、まるで包まれるような空間を実現した。お嬢さんは成人し、結婚。そしてお母さんは再婚してこの家を出て行った。新しい住まい手もますいいで探して、そのご家族には新しい命が誕生した。そして次はさんかくの家の娘さんから住宅の設計を依頼されている。家づくりとはこんなふうに誰かに寄り添うことなのだと思う。先日久しぶりにさんかくの家の最初の住まい手と飲みに行った。きっと一生こんなふうにたまに飲みにいく、そんなお付き合いになるんだろうと思う。)

今日は出展していた窓計画の講評会ということで、早稲田大学名誉教授の石山修武先生、東京大学の加藤耕一先生、早稲大学の中谷礼仁先生が批評をしてくれた

2024/06/23

早朝、滋賀県立美術館に向かう。今日は出展していた窓計画の講評会ということで、早稲田大学名誉教授の石山修武先生、東京大学の加藤耕一先生、早稲大学の中谷礼仁先生が批評をしてくれた。

この窓計画展は石山先生によって集められた建築家、工務店、彫刻家による展示である。山本理顕さんのような巨匠から、上海で都市計画家として活躍している趙城埼さん、東北大学の藤野さんや、明治大学の門脇さん、石山先生のお弟子さんの渡邉さんや佐藤さん、坂本龍馬記念館の高橋さん、・・・・・なんとも豪華な顔ぶれの中で工務店代表として選ばれたのが僕たちであった。作品の制作には名古屋の左官の加村義信さんが協力してくれた。最後には優秀賞の表彰までいただくことができた。大変良い経験をさせていただいた石山先生には心より感謝である。この経験を活かして、今後は今まで以上に建築の創作活動に邁進していきたい。

銘木屋さんにはそういったものが一切無い。代わりにあるのが床柱や細い丸太、とてつもなく厚くてでかい板、うねうねと曲がった丸太、黒柿が製材されている乾燥中の板・・・建築を設計している人でも和室や茶室などを作ったことがいない人だと、どんなふうに使って良いかわからないようなものばかりが立ち並んでいる

2024/06/20

今日は東京都新宿区にて建築中のNさんの家のお施主さんと一緒に、川越にある川越名木センターさんにお買い物。この銘木センターさんは僕が和室を作る時に必ず訪問する材木屋さんで、小江戸川越の数寄屋を支える大切なお店である。

銘木屋さんというのは材木屋さんの中でもかなり特殊な形態だ。普通は柱や間柱、床板や棚板、合板をはじめとする新建材などを扱うのが材木屋さんの商業形態なのだが、銘木屋さんにはそういったものが一切無い。代わりにあるのが床柱や細い丸太、とてつもなく厚くてでかい板、うねうねと曲がった丸太、黒柿が製材されている乾燥中の板・・・建築を設計している人でも和室や茶室などを作ったことがいない人だと、どんなふうに使って良いかわからないようなものばかりが立ち並んでいる。でも僕のように茶室を作っているものからするとここは宝の山である。木を見ていると、この材料でこんなふうに使いたいなあの様子が頭に浮かんでくるわけで、あとはお財布と相談しながらの検討をする訳である。今日はお目当ての赤松がなかったので仲間の名木屋さんを探してもらうことにした。さてさてどんなものが出てくるか楽しみである。

(写真:僕の自宅の茶室床の間・床柱は赤松・床框は檜の錆丸太)

こんなふうに建築を好きになってくれた若者たちが、ずーっと建築を好きで働き続けることができるような会社を運営し続けることができたら、どんなに素晴らしいことだろうと思う。

2024/06/19

今日は大阪芸術大学から4年生が就職活動兼会社見学に来てくれた。とてもセンスのあるポートフォリオの作品たちを見ていると、建築学科を心から楽しんできた様子が伝わってくる。こんなふうに建築を好きになってくれた若者たちが、ずーっと建築を好きで働き続けることができるような会社を運営し続けることができたら、どんなに素晴らしいことだろうと思う。

始めた時は自分が好きなことをして生きていくことができる場であったますいいリビングカンパニーである。今では20名弱のメンバーが共に働いている。するとここはすでに自分のための器ではなく、社員が好きな家づくりを行いながら幸せな人生を過ごすことができる場、つまりは公器であると思うのである。

最後にますいいに就職したいという思いを聞いて、なんだか胸が熱くなった。若者が夢を抱いて全力投球できるような職場であり続けるよう頑張ろうと思う。

窓計画展に展示している作品について

2024/06/16

窓計画展に展示している作品について

日本の四季
土佐漆喰に硝煙を混ぜて着色した壁に、同じく土佐漆喰を用いて稲穂と蛙、そして蜻蛉を描いた作品。窓の中には入れ子状に大津磨きの赤い箱があり、その内部空間には貝殻を焼いて作った製作途中の貝灰が展示されている。

キッチンで料理、当たり前の光景だけれどちゃんと使ってくれているんだなあの感である

2024/06/15

午前中、埼玉県川口市の小さな土地の購入を検討しているSさんご夫妻打ち合わせ。この土地は以前ますいいで住宅を建てた敷地のすぐ裏にある。敷地の下見に行った時に、その家を見ていたらお施主さんがキッチンで料理をしていた。建てた家での暮らしを垣間見れたような気がして、なんとなく嬉しい気持ちになった。キッチンで料理、当たり前の光景だけれどちゃんと使ってくれているんだなあの感である。

敷地は古い家が建っている正方形に近い土地である。ここに18坪くらいの小さな家を作る予定だ。少し前に9坪ハウスというものを作った。これは最小限住宅という名作を現代版にアレンジしたものである。小さいけれど豊かな暮らしをデザインしたいと思う。

高い断熱性能と機密性能を実現し、第1種換気を取り入れることで高機能な住宅を計画した

2024/06/08

11時、埼玉県さいたま市にて設計中のOさんの家の地鎮祭を執り行った。幸いお天気も良く、とても良い地鎮祭をできた。この現場にはアクセサリー工房を兼ね備える住宅が建つ予定だ。長い敷地に合わせて、中庭を配置してその向こう側にリビングを作った。高い断熱性能と機密性能を実現し、第1種換気を取り入れることで高機能な住宅を計画した。現在確認申請中、いよいよ来月からは工事に移る予定である。

今日は朝から川口市の錫杖寺さんにて行われた茶会に参加した

2024/06/01

今日は朝から川口市の錫杖寺さんにて行われた茶会に参加した。滋賀県の信楽という街から、杉本貞光さんという陶芸家が来て開いた茶会である。僕は主にお点前の係、1日で4回ほどのお点前をした。杉本さんは今年で89歳になるそうだ。信楽というとたぬきの置物が有名だけど、あれは天皇陛下がいらっしゃるのに合わせて作った記念品らしい。僕の家でも妻が隣町の、蒲生町の出身ということもあり、2匹のたぬきが玄関の前に居座っている。信楽という街は、瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波・備前の6つの窯で作られる六古窯の一つで、町中に陶器屋さんが立ち並ぶけれど、近年はなんとなく元気がないようだ。僕も一年に一度は足を運ぶが、なんとなく人手が少ないなあという気がしている。杉本さんはそんな中で、多彩な技能で全国各地の焼き物を焼いている。もちろん土はご当地の土を取り寄せるそうだ。信楽の一つの時代を作るパワフルな作家さんである。ご一緒できて本当に光栄であった。

増井真也 日記アーカイブ