住宅設計は面白い
住宅設計とはなんだろう。建築というのはその土地に建つものだから、まずは敷地の状況を確認する訳だけれど、僕のように埼玉県や東京都の仕事が多いと周りにはなんらかの建物が建っていたりするわけで、やっぱり自分が設計した建物が建った後にその町の雰囲気が良くなるような住宅を作りたいというのが一番ではないかと思う。そしてやっぱり住宅設計を考える時には、そこに住まう人のことを一番に考える。そこに住まう家族が幸せに暮らすことができるような家は一体どんなものだろうかの思考がとても大切であると思う。
大学1年生の時の設計課題に「お母さんのための家」というものがあった。一番大切な存在の象徴としてお母さんを人物を課題にしたのだが、自分のお母さんだったら趣味や家での過ごし方などを最もよく理解しているから、施主にとっての良い家とはを考えるにはとても良い課題だと思う。そしてそれを最初の設計課題でやるということもまたとても大切であると思う。
実務においてはある日、目の前にとあるご家族が現れる。そこには必ず奥様がいる。独身の方の場合でも、同じように女性のクライアントがいる。男性だけの独身の家は滅多に建てない。僕の人生の中でも1軒だけだ。でも女性の一人暮らしの家はすごく多い。だから目の前にいる女性がどんなふうにこの家を使ってくれて楽しんでくれるかがいつもテーマになる。民泊をしながら一人暮らしを楽しみたいという人もいるし、家族4人でゆったりと暮らす家で自分の工房を持って制作や販売をしたい人もいる。ご両親が亡くなった後に自分を取り戻すために家を作りたいという人もいた。家づくりは色々な理由で行われるのだ。その色々な理由に寄り添って考える時間が最もやりがいのある、そして楽しいひとときである。、という理由はこれであろう。建築になんらかの力があるとしても、その力がわかりにくくなってしまった現代社会において、住宅だけは変わらずにその力を持ち続けている。それは住宅が個人にとってはもとも深い関係のある建築だからだと思う。だからこそ住宅はやめられないのだ。
(さんかくの家ドローイング:この住宅は離婚をしてしまったお母さんと娘さんのための住宅である。ギリギリの予算しかない中で、こだわりの薪ストーブを配置して、まるで包まれるような空間を実現した。お嬢さんは成人し、結婚。そしてお母さんは再婚してこの家を出て行った。新しい住まい手もますいいで探して、そのご家族には新しい命が誕生した。そして次はさんかくの家の娘さんから住宅の設計を依頼されている。家づくりとはこんなふうに誰かに寄り添うことなのだと思う。先日久しぶりにさんかくの家の最初の住まい手と飲みに行った。きっと一生こんなふうにたまに飲みにいく、そんなお付き合いになるんだろうと思う。)