均質なものが全て、生産性の高いものが全てと言われる世の中で、発酵させた泥を捏ねて、鏝だけでそれを操ることをやり続ける左官職人のことを僕は本当に大好きである。
先週完成したNさんの家の玄関である。ニッチの中は、左官の名人、小沼充さんの手によって沖縄の赤土で仕上げられた。左官の色は自然が作り出した土の色である。土は鉱物やそこに住み着いた生物などが複雑に絡み合い、その土地にしかない色を生み出す。その色はペンキなどの人工的なものとは違い、さまざまなものが偶然の調和によって生み出した偶然の産物であり、2度と同じものを作ることはできない唯一無二のものである。左官は土と水を使って、そこに藁や海藻を煮出して作った糊などのわずかな配合物でこのような魅力的な壁を生み出す職能を持っている。使うものは全てが自然界に存在するものである。均質なものが全て、生産性の高いものが全てと言われる世の中で、発酵させた泥を捏ねて、鏝だけでそれを操ることをやり続ける左官職人のことを僕は本当に大好きである。世の中から絶対に消えてほしくない、まさに本当の職人なのである。