本物の漆喰にはその白さの奥にある何かを感じるような、まるで水面のゆらぎのような感覚がある
漆喰仕上げの話をしよう。漆喰仕上げというと最近はプラスターボード仕上げに、白い壁や村樫の漆喰などすでに袋詰めされて調合されている材料を水ごねし、2ミリほどの厚みで塗りつける仕上げ方法を採用することが多い。もちろんこの手法でも立派な漆喰仕上げであるが、さらに厚塗りにしたい場合は昔ながらの工法を採用する必要がある。
厚塗りだと何が良いかと聞かれることがある。漆喰の持つ調湿効果や消臭効果が高まるというような話もあるがこれは来年からものつくり大学の大学院にて研究をする予定なので、それを待つこととする。しかし明らかに違うこと、それは視覚効果である。厚塗りの場合、石膏ボードに薄く塗ったものと比べると同じ平滑な壁でも微妙なテクスチャーを生じる。
ますいいのモデルハウスではラスボードを下地として、4ミリほどの石膏下地を塗り、その上に本漆喰を4ミリほど塗って仕上げとする手法を採用しているのだが、この壁に光が当たる様子は誰が見てもとても静謐さを感じる仕上げである。ただ単に白いのではない、本物の漆喰にはその白さの奥にある何かを感じるような、まるで水面のゆらぎのような感覚があるのだ。
壁を感じるのは視覚である。目に見えるもの以上のものは感じようがない。しかし見えるものであれば結構微細なことでも感知できるのが人間である。壁の厚さが違うことによる差異は普通の人でも確実に目で見て感じることができる。だからどんな人でも、この部屋の漆喰が良いと思うのだろう。