遠山記念館で行われた日本左官会議の見学会に参加した
2025/08/24
午前中は、遠山記念館で行われた日本左官会議の見学会に参加した。今日の講師は左官の名人、久住章さんだ。僕は初めてお目にかかったのだけれど、やっぱりものづくりに没頭する人特有のオーラがある。左官について話をし出すと、もう止まらない、周りのことなんか関係ないのである。話の引き出しは無限にあるようだ。一つ一つが面白い。写真の玄関土間は研ぎだしの仕事である。黒い部分はまるで石を張ったようだけれど、どこかで6角形に作った研ぎだしタイルのようなものを、貼り付けて、目地を埋めたのだろうということである。その証拠に目地の幅が全て微妙に違う。もしもここで研ぎ出して目地の模様をつけたのならば、目地幅が違うわけはないというのだ。踏み石のような部材も研ぎ出しである。白セメントに赤い色をつけて、白い種石を入れて研ぎだしたのだろうとのこと。あまりのレベルの高さにただただ驚くばかりである。

こちらは茶室の写真である。壁に何やら白い紋様が入っているが、こういう様子はよく目にすることだろう。これは竹小舞を編んで荒壁をつけた後に、貫とか筋交の部分だけは漆喰で貫伏という作業を行う。荒壁の土はよく発酵させて塗るのだけれど、発酵した土は塗った後にアクが出て変色することがある。でも貫伏で漆喰を塗ったところはアクが出ないからそこだけ模様のようになる。この現場の貫伏の後はやたら広いのだが、それはわざわざ貫伏の幅を広くしているのではないかというのである。通常の抜きの幅は3寸ほどである。そうすると細いラインのようになってしまうが、ここまで広いとまるで2色の塗り分け仕上げのようである。これが初めからの狙いだとしたら、まさに図面には現れない、土と漆喰による彩色仕上げなのである。
ここ、遠山記念館にはこれまでも何度も来たことがある。茶会もやったことがあるけれど、ここ迄左官に注目して見学したことはなかった。すでに補修塗りからも40年近い年月が経っているということで、だいぶ色褪せてしまっている部分もある。なんでも今後は改修工事に入る予定とのこと、現代の名人たちによって再び華やかな壁が現れるのを楽しみに待ちたい。
夕方、北千住にてミュージカル座・ひめゆり鑑賞。新人スタッフの太田くんの知人が、出演するということで、4人で観劇させていただいた。ハマナカトオルという演出家が主催するミュージカルということで、初めて足を運んだのだが、これまでみたことがあるものとはちょっと異なる演出を楽しむことができた。なんでもこのひめゆりはこれまで何度も演じられてきたそうで、社会派の題材を、若い出演者たちが懸命に演じる姿は、観客の心を打つものであった。簡素な舞台装置は劇団四季などとは全く異なるが、逆に演者の表情ひとつひとつにまで目が行くことで、引き込まれたような気がした。また機会を作って観に行くこととしよう。