増井真也 日記 blog

屋根裏空間の面白さは、小屋組にある。

2024/07/23

屋根裏空間の面白さは、小屋組にある。この建物では登り梁を構造用合板で固めて剛性を持たせた屋根による小屋裏空間に、写真のような魅力的な部屋を作った。奥は寝室として利用され、手前の方はワークスペースになっている。急勾配の屋根ならではの空間の質、なんとなく懐かしさを感じるまるで昔のアニメのワンシーンのような世界である。

今日は昨年行った古民家再生工事の外壁の土佐漆喰のひび割れ補修を行った。

2024/07/17

今日は昨年行った古民家再生工事の外壁の土佐漆喰のひび割れ補修を行った。漆喰などの素材はどうしてもひび割れるものだが、補修することも意外なほどに簡単である。ただ少しコツが必要で、普通の素材を塗り込むというよりは、微粒子状になったものを刷り込むような作業が必要だ。土佐漆喰の場合は、水でねった土佐漆喰のあまと呼ばれるペースト状のものを刷り込むようにしてひび割れの中に入れ込み、すぐに固く絞ったスポンジで拭き取れば出来上がりとなる。簡単だけれど、コツがわかるまでは、すぐに固まってしまう土佐漆喰のスピード感についていけなくて戸惑う作業だ。一時間ほどの作業を経て終了。クライアントのYさんにはお茶までご馳走になってしまった。感謝である。

 

とても良い家ができたのでご紹介する

2024/07/13

今日は東京都でつくった螺旋階段の家の撮影に立ち会った。

1階にはアトリエ、2階にはLDK、ロフトには茶室が設られている。車が入ることができない狭小地での工事ということで、鉄骨の階段を切断して再接合するなどのとても苦労した住宅である。仕上げは漆喰をセルフビルドで仕上げている。高い勾配天井と空を望む開口部のおかげで、内部はとても伸びやかな空間が実現できていて、心地よく過ごすことができる。とても良い家ができたのでご紹介する。

長い建築人生で久しぶりに感動するものを見させていただいた

2024/07/12

今日は地域主義工務店の会の建築見学に参加した。この建物は東京都某所にある音楽室である。浮き屋根の荷重を受けるための束が開口部に沿って並んでいるのかと思ったら、実は屋根荷重は全てこの細い斜材を伝わって柱に直接かかっているとのことであった。この斜材、実は先端が細くなり鉄製の受け材に包み込まれるようになっている。角は微妙に削り込まれ、繊細なフォルムを作り出している。
驚くことに、この形態を提案したのは設計者ではなく担当した大工であるという。その提案を受け入れた意匠と構造の設計者が編み出した鉄の無垢材からの削り出し接合金物、長い建築人生で久しぶりに感動するものを見させていただいた。

左官技術研究 テラゾーその2

2024/07/10

左官技術研究 テラゾーその2

今回のテラゾーはもう少し現代的なデザインの表現をイメージした。使用骨材は以下の通り。

ニアガラブルー5mm
ニアガラブルー1mm
セメント(上記3種各1:1:1)
大理石(蛇紋石)ハンマーにて破砕(鏝押さえ後にばら撒き、叩き込み)

今回は大理石を購入し、ハンマーで叩き割ってばら撒いているのでとても綺麗な緑色が出ている。とはいっても大理石が石灰岩の変成した岩石であるのに対し、蛇紋岩は、かんらん岩、閃緑岩、斑レイ岩などの深成岩が変成した岩石で、大理石とは組織が根本的に異なる。この石は台湾蛇紋と言って、建築建材の世界では大理石の一種とされている。
日本にも関東蛇紋という製品があった。これを生産していてた秩父の鉱山はすでに営業を停止しているのだが、その背景には緑色の綺麗な石が取れなくなってきたという事情があるようだ。
基本骨材のニアガラブルーはブルーグレーの綺麗な表現ができるのでおすすめだ。用途としては、玄関土間や薪ストーブの下部の耐火床などに合いそうである。

埼玉県蕨市にて古民家再生を検討中のクライアント打ち合わせ

2024/07/08

午前中は川口茶道会会議に参加。埼玉県の川口市を中心に活動する茶道の先生が流派を問わず集まって、文化の継承のために頑張っているとても良い会である。とはいえ他の団体同様にだいぶ高齢化が進んでいて、僕が最年少とまでは言わないけれど下から2番目、50歳を目前にして駆けずり回っているような状態である。今日の会議の会場は「ステーキやるじゃん」なる川口の名店だ。高齢化だけれどハンバーグ、だから元気なのだ。なんとなく「青春とは人生のある期間ではなく心の持ち方を云う」、というサミュエル・ウルマンの言葉を思い出した。人生100年の時代である。ここにいる先生方は皆青春真っ盛りなのだ。僕も負けずに頑張ろうと思う。

午後、川口中央図書館にてチルチンびとの寄贈。最近の図書館は図書の購入予算が削られているらしく、とても喜んでいただいた。僕は図書館という場所が好きだ。お金をかけずにあらゆるジャンルの本を読むことができ、しかも涼しくて、居心地が良い。いろんな人がいて、それぞれのいろんな時間が流れている。なんともゆったりとした時間が流れている場所なのだ。

夕方、埼玉県蕨市にて古民家再生を検討中のクライアント打ち合わせ。お盆前には植木屋さんが入るので、その後からプランの打ち合わせを始めようと思う。

ミクロの文化は個人によって作り維持することが可能であるということを裏千家の活動を通して知った

2024/07/07

今日は裏千家の淡交会青年部という会で出会った仲間と共に七夕の茶事を行なった。12時席入りということで、9時過ぎには席主と水屋のメンバーがますいいリビングカンパニーのモデルハウスに集まった。席主、料理担当、半東とともに前回の茶事で指名されたメンバーである。高価な道具組を競うようなものではなく、手作りの茶事を楽しむ、そんな嗜好で続けている会である。

11時40分ごろ、お客様到着。12時席入。前回はかまどのご飯の水の量を間違えてしまい硬いご飯を柔らかくすることに苦労した。今回は席主が使い慣れたガスコンロで使う現代かまどを持ち込んだが、席主が忙しくてまたもや失敗、結局前と同じように硬いご飯を柔らかくする作業である。中高時代の山岳部で培ったこの技術、今こうして役に立っている。風炉の茶事は久しぶりである。故にところどころ間違いながらの進行となったが、これは次回への反省だ。

僕の地元は京都でも鎌倉でもない、川口市である。歴史や伝統文化が色濃く残る地方とは異なり、東京のベッドタウンとして高層マンションが建ち並ぶ近代都市だ。どこも同じ大型店舗に、チェーン店、なんとも悲しい限りだが、こういう街を作ったのは他でもない私たちなのだ。確実に経済原理によって作られていく街の大きな流れを変えることは困難である。しかし、ミクロの文化は個人によって作り維持することが可能であるということを裏千家の活動を通して知った。僕の活動など本当に小さなものだけれど、これからも継続していきたいと思う。

今日はテラゾー仕上げという左官技術のワークショップを行った

2024/07/05

今日はテラゾー仕上げという左官技術のワークショップを行った。ご協力いただいたのは濱井さんという左官職人さん、ものつくり大学の非常勤講師の先生である。ますいいではモデルハウスのキッチンにもこの技法を取り入れているが、混ぜる種石の色などにより様々なバリエーションが出せるだけでなく、小さな面積ならセルフビルドも可能な技法ということで楽しみである。30cm四方のタイルにすれば、好きな文様のタイルを玄関土間などに貼ることも可能だし、もう少し大きな直方体を作れば椅子の座面などにすることもできるから、その利用方法も無限大だ。昔の小学校などにあった手洗い場の仕上げ、というとなんとなく思い出す方も多いだろう。

テラゾーは、イタリア語で「テラス」を意味し、18世紀にイタリアで初めて使用された技法である。以下にその特徴を示す。

素材
大理石やガラス、石英、花崗岩などの小片(骨材)を使用
骨材はセメントに混ぜて使用

見た目
カラフルでモザイクのような見た目が特徴。
骨材の色やサイズを調整することで、様々なデザインが可能。

耐久性
非常に丈夫で、長持ちする素材

メンテナンス
日常の掃除は簡単で、水と中性洗剤で拭くだけで十分。
定期的な再研磨やシーリングを行うことで、長く美しい状態を保てる。

環境への配慮
リサイクル素材を使用することができるため、環境に優しい。

こちらが研ぎ出した後の見本の様子である。今回は関東蛇紋という石が入っているが、この文様だとちょっと昭和な感じがするので、次はもう少し現代的なデザインにしてみようと思う。

土壁の美はランダム、アバウト、ノープロブレムな出来事の中にある

2024/07/04

土壁の仕上げは千利休が草庵を作ったところから始まる。利休以前の土壁は、縄文時代の竪穴式住居の土間、荒壁、泥小屋、版築、土塀、竈門・・・それらは土地に住むものの用としてただ存在していた。利休は初めて土壁の中に美を見出した。それは内面化された美として侘び寂びの世界の鑑賞の対象ともなった。

土壁の美はランダム、アバウト、ノープロブレムな出来事の中にあることを小林澄夫さんから聞いた。
ランダムとは土壁を形成する自然素材にはバラツキがあること。
アバウトとは土壁は水仕事で風によって固まるものゆえ、その素材も過程も自然のあり雪でできるものであるから大雑把でおおらかであること。
ノープロブレムとは土地壁が下地、中塗り、仕上げとゆっくりとしたプロセスを経ていくため、その過程で自由に変化しうること。土壁は職人にも自然にも開かれているのだ。

リフォームの現場で木ずり土壁中塗り仕上げを採用した。土は左官職人さんの指導を受けながら、スタッフの久保くんとクライアント、そして学生の手によって塗られた。木ずりの上に調湿作用が豊富な約12ミリの土が塗られているから、とても心地よい空間が出来上がっている。土は淡路島の半田、砂は名古屋の城陽砂を採用した。あとは藁しか混ざっていない。この部屋は寝室である。本来最も環境を良くしたい部屋を土壁にすることができて本当に良かったと思う。

小沼さんに作ってもらった大切な左官の塗り見本を一列に並べたり、本棚に向かって仕事をすることができるようになったりと、なかなかの居心地である

2024/07/01

今日は事務所1階の普段僕がいるスペースの改修工事をした。全部で8坪ほどのスペースを半分に区切る腰壁を撤去し、壁に棚板を設置した。棚板は、日光の田村材木店さんから杉の厚板を送ってもらったものである。全体を広く使うことができるように、4mのトチの木のテーブルの向きを長手方向に変え、16人のスタッフ全員が一堂に座って会議をすることができるようになった。工事の内容は大したことはないけれど、小沼さんに作ってもらった大切な左官の塗り見本を一列に並べたり、本棚に向かって仕事をすることができるようになったりと、なかなかの居心地である。さてさて次はなにをしようかな。

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