増井真也 日記 blog

栃木県の那須烏山市にキャンプに出かける

2020/10/31

今日は久しぶりの連休を取って栃木県の那須烏山市にキャンプに出かけることにした。キャンプ場はいつもカヤックを教えて頂いている齋藤さんの所有地なので、今日は僕の家族だけの完全プライぺートである。初めての利用ということで、どんなものかと心配しながら長男と一緒にキャンプ場に向かった。途中お肉屋さんの「石原」に寄り道をして買い出しをする。買い出しも烏山の地元のお店を利用することに、ここは以前斉藤さんに教えて頂いた家族経営の美味しいお肉屋さんである。なるべくこういうところでお買い物を行うことも齋藤さんのポリシーの一つ、僕たちを自然に案内して、自然に紹介して、そして地元の店を使うことの大切さを静かに語るその様子を見ていると、僕たちもそういうことを大切にしたいなあと思うのだ。

少し肌寒いのでまず火を起こすことにした。焚火は慣れているし、薪はいくらでもある。初めて見る9人用の大きなモンベルのドームテントを何とか張っていると、齊藤さんが合流した。やり方を教えてもらって作業を終えようやくひと段落である。

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一足遅れて次女と妻が烏山線でやってきた。とてもローカルな電車で駅の外には迎えの車が列を作っている。齋藤さんが早く迎えに行けというから出発したものの、駅までは車でわずか5分である。待つこと15分ようやく合流し、みんなでキャンプ場に戻った。しばらくすると、齊藤さんから誕生日の花火をあげるとの掛け声がかかった。明日11月1日は僕の誕生日、そういえば前回来た時にそんな話をしていたのだが、まさか本当に花火の用意をしてくれているとは思わなかった。全部で100発くらいだろうか、20mくらいある栗の木よりも高く上がる打ち上げ花火、なんだか嬉しくて涙が出てきてしまった。明日で46歳、なんだか折り返し地点のような気がするけれど、とにかくこれからもさらに良い家づくりを行っていきたいと思うのである。

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設計中のHさんの家の打ち合わせ。

2020/10/30

10時、埼玉県上尾市にて設計中のHさんの家の打ち合わせ。今日は実施設計の3回目の打ち合わせということで、1階2階の室内展開図・キッチンの詳細図などを用いての打ち合わせを行った。ますいいでは現在自然素材使用の家造りを提案している。具体的には以下のようなコンセプトでの家造りを「森の生活」と名付けて行うことにした。ちなみに森の生活というのは、大量生産大量消費社会に疑問を呈し、一人森の中で小屋を造って自給自足の実験生活を行った「ヘンリー・D・ソロー―森の生活」から名付けさせていただいた。

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コンセプト

①地産地消の考えで地域の自然素材を活用する
木:北関東(栃木県中心)で採れる桧、杉材を採用
土:内装仕上げに漆喰材を採用
石:大谷石などの関東で採れる石を採用
紙:地元で漉いた和紙を壁紙などに採用

②住まい手と作る職人の健康を害する部材を使わない
合板・ベニヤ・ビニルクロス・新建材・サイディング等を使わない。
塗料・接着剤も安全に配慮する

③廃棄時の環境負荷を考慮した部材を採用する

④室内空気環境を測定する

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ますいいリビングカンパニーは「もっと自由に家を造ろう」という理念のもと誕生した工務店機能を兼ね備えた設計事務所である。その理念を実現するために「セルフビルドを積極的に取り入れる」「モノの値段をクライアントと共有して一緒に考える=原価公開」を大切に家づくりを行ってきた。こういった自由な家づくりの一環として、本当に森の中の暮らしのような健康的な住宅を造るということに本格的に取り組んでみることにしたのである。現在設計しているHさんの家、Oさんの家はその完成形となる予定だ。進行を楽しみにして欲しいと思う。

進行中のKさんの家の現場管理へ。

2020/10/29

朝一番で埼玉県川口市にて進行中のKさんの家の現場管理へ。Kさんの家では大工の本間さんと瀬野さんの手によって、上棟工事を終えてから、屋根の下地工事を経て金物工事や筋交い間柱の取り付けへと進行中である。登り梁の現場なので2トン用のオメガコーナー金物が直角に取りつかないなどの小さな問題点も、構造設計事務所の間藤先生にご相談などして解決していく。この先2週間ほどの作業内容についての確認をして帰事務所。

事務所に帰るとオグラさんで購入していた栗の丸太材が届いていた。今回の栗丸太はすべて24mmになるように挽いているので、主に棚板や、建具の枠に使用することをイメージしている。前回よりも薄く挽いているので価格も抑えることができて使いやすい。国産の栗材で建具枠を造るなどこのうえない贅沢であるのだが、丸太で購入することによってそれほど高価な商品ではなくなる、というよりも普段使用している輸入材の枠材とそれほど変わらないお値段でお譲りできるようになるというマジックなのである。全部で65枚、材木倉庫に運び入れるのもなかなか大変な作業なのだが、それでも自分でやりたくなってしまうくらいにいとおしい素材達なのである。

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進行中のKさんの家の上棟工事。

2020/10/27

今日は埼玉県川口市にて進行中のKさんの家の上棟工事。朝一番から担当スタッフたちは現場に出ている。手おこしの上棟工事ということで現場には9人の建て方大工さんと2人のますいいの大工さん、総勢11名で作業をすることとなった。手おこしというのはクレーンを使わないで上等作業を行うことを言う。つまりがすべて人力で2階や屋根の上の部材をあげるということで、これはなかなか大変な作業である。大変だからこそ大工さんがたくさん必要となる。クレーンを使用していれば通常は4名程度の作業なのだが、その差7名は部材を楊重する代わりの荷揚げ作業を行うというわけだ。

雑誌チルチン人の取材班が会社に来たので、僕も一緒に現場に向かった。取材班はライターの松岡さんとカメラマンの秦さんのお二人だ。現場につくと秦さんがドローンを飛ばしての空中撮影を始めた。近くでドローンを実際に飛ばすのは初めて見たのだけれど、羽音がなかなかの迫力だった。それにしても撮影方法も変わったものである。お昼前に山下社長が川口駅に着くというのでお迎えに上がる。山下さんはチルチン人という雑誌をつくった方である。「地域の木を大切にする工務店のための雑誌」であるこの雑誌は、僕が20年前にますいいを立ち上げたときからあこがれの雑誌だった。僕が日本で一番良い家づくりをしていると思う人たちが紹介されている雑誌に紹介され、仲間になることを誇りに思いつつ、さらに良い家づくりに邁進していきたいと思う。

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ある手記を読んだ。

2020/10/22

ある手記を読んだ。内容は以下の通りである。ますいいの家造りは国産材を利用する家づくりにするが、これもまた地産地消という環境保護につながる小さな行動であると考えている。ますいいリビングカンパニーの小さな活動も、同じような志の会社が増えることによって大きな効果を生み出すだろう。国産材市場はまだ不透明な市場である。でもきっとこれから大きく伸びる、というよりは何でもかんでも海外から運んでくるというシステムが崩壊して、それしかないという社会が到来すると思うのである。

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現在の気温上昇が様々な動植物の死滅につながる、と主張する学者もいる。彼らは、現在のままの状態が続くと、6500万年前に起きた動植物の死滅に次ぐ、地球の歴史で6回目の死滅になると主張している。温暖化は地球上の水の循環に大きな影響を与えるので、水害、ハリケーン、台風などの気象災害の頻度を増やす。その兆候は米国だけではなく、日本でも見られる。だが温暖化がもたらす長期的な損害についての学者たちの見解は、新聞の大見出しにはならない。気候変動の問題は、メディアが報じているよりもはるかに深刻だ。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「2030年までに温暖化ガスの排出量を2010年レベルの45%に削減しない限り、生態系が破滅的影響を受ける可能性がある」と警告している。我々はあと約10年以内に、平均気温の上昇幅を産業革命前に比べて1.5度未満に抑えなくてはならないのだ。残された時間は少ない。

和紙を壁に貼るセルフビルドをご紹介

2020/10/20

和紙を壁に貼るセルフビルドをご紹介しよう。埼玉県の岡崎さんの工房では手すき和紙を漉くことができる。原料はコウゾやミツマタを使用し、着色も天然の花などの成分で行う本格的なものである。住宅の仕上げ材として写真のように色を付けた和紙を貼り込むのだが、作業自体もセルフビルドで行うことができる楽しい作業だ。ビニルクロスなどにはない自然素材ならではの優しい風合いが魅力的である。

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新築住宅を造ったSさんの家の増築計画打ち合わせ。

2020/10/17

夕方、埼玉県さいたま市にて数年前に1000万円住宅プロジェクトにて新築住宅を造ったSさんの家の増築計画打ち合わせ。今日は平面図と断面図を用いて全体計画についての打ち合わせを行った。今回の図地区計画は800万円という予算で計画をしている。ロフトの形状、屋根の庇、セルフビルドの範囲設定、どこを取ってもデザインとコストのはざまでのせめぎあいである。こういう極限の計画は実はとても勉強になるものだ。だって余分なものを造る余裕がないのである。余裕がないからこそ面白いものができる、そして無駄をそぎ落とした魅力的なものができると考えている。次回は展開図などの打ち合わせ、丁寧に進めていこうと思う。

栃木県那須塩原市にある二宮木材さん見学

2020/10/16

朝一番で事務所を出て栃木県那須塩原市にある二宮木材さん見学へ。この製材所は栃木県でも有数の大きな工場で、主に栃木県産の杉を中心に製材している。杉というと秋田杉やら吉野杉が有名だけれど、最近では栃木県産材が日本一の品質を誇っているとのアピールのあるくらいに良質の素材が造られていた。この地方の杉材はちょうど樹齢70年程度のものがそろっており、しかも山でとても丁寧に手入れをされていることにより節や曲がりが少ないということである。ますいいの事務所でも杉のフロアリングを使用しているのだけれど、杉はとても柔らかみがあってはだしで過ごしたくなるような温かみのある床を造ることができるので良い。ほかにも室内の天井などに貼る羽目板や、造作で使用するための板材などを上手に取り入れていきたいと考えている。

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設計中のHさんの家の実施設計打ち合わせ。

2020/10/14

午前中、埼玉県上尾市にて設計中のHさんの家の実施設計打ち合わせ。今日は室内展開図を主に用いての詳細打ち合わせを行った。この住宅では薪ストーブをリビングの中央部に配置している。薪ストーブの上には吹き抜けがあり、2階のホールには書斎の様に使用できる開けたスペースが計画されている。ホールの上部にある開口部は大きなFIX窓と高所用の縦滑り出し窓の組み合わせとした。南側の高いところにあるこの窓が開くことにより、北側の階段室にある大窓との間で風の通り道ができることとなる。この窓はきっと夏場の暑い空気を排出することにも役立つであろうと思っている。

薪ストーブの両側には庭を望むことができる縦スリット窓を取り付ける予定である。リビングのどこにいても庭に対して開いていることは暮らしに大切な潤いを与えてくれる。リビングのどこにいても薪ストーブのほうを見るとその向こう側には庭が感じられるようにすることで、大切にしている庭を家の重心と呼べるような中心的な場所に設えることができると思うのである。

明治神宮にて開催された裏千家のお家元の後継者を指名

2020/10/13

今日は終日、明治神宮にて開催された裏千家のお家元の後継者を指名するという格式披露茶会にて、全国から集まった50歳以下の茶人による茶席に参加させていただいた。創作の棚・若手作家の道具を使用しての立礼ということで、それぞれの道具に応じた扱いを工夫しながらお点前をするなどというなかなか面白い嗜好であった。僕も2席目の点前をさせて頂いたのだけれど、いざお席が始まるとそれまでの準備も吹き飛ぶような緊張感に包まれる中で大変良い経験をできたと思う。

このような伝統文化というのは継続していくことがなかなか難しい。実際に茶道の人口もどんどん減っていると聞くし、次世代の家元となる千敬史さんもその時代を担う上で大変な苦労をされることが予想されるわけである。茶道がいわゆる女子絵の花嫁修業という時代は終わった。花嫁修業などという概念自体、共働きが主流の現代社会には全く当てはまらないと思う。今はその時代に茶道を始めた人たちが僕たちのさらに上の世代として文化の担い手となっていただいているわけだけれど、後10年もすればそういう時代の方々に頼り続けることは無理があるだろう。そして10年後には僕も50代半ば、いつも間にやら上の世代の担い手になってしまう。

僕たちの時代における茶道のような文化の意味とは?
・自国のアイデンティティーとして
・観光産業に素材
・精神的安定の材料として
・趣味
・一部の人にとっては生活の糧
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こういうことが考えられると思う。

でも、こういうことは花嫁修業のごとき爆発的普及はしないだろうから、そのまま放っておけば能や狂言のように、一部の人しか見たこともないというような、一般人には関係のないものになっていってしまうかもしれない。そして茶道がもしそうなれば・・・、抹茶、茶碗などの陶器、軸、漆や蒔絵、着物などなど多くの周辺にあるものたちもまた衰退の一途をたどるであろう。

僕は建築家としてモノづくりに携わっているから、こうした伝統的なもののデザインとか造り手にはとても興味があるし、伝統的でない現代の作家さんたちにも同じように興味があるのだけれど、こういうことに同じような興味を持つ人たちはそれほど多くはないだろう。そもそも茶道の道具はなんといっても高すぎる、という致命的な事実もなかなか普及できない理由の一つだと思う。高いものを購入するという事実は人のエゴとか見栄とかが購入要因であることもある。そして一部で本当に素晴らしい作品に対するリスペクトである場合も多いと思う。前者による購入が少なくなるとするならば、後者による購入の適正価格とはいかほどなのかを追求し新たな販路を造る事、これは道具作家の生き延びる一つの道かもしれない。

次世代の家元が茶道をどのように率いていくのかはわからないけれど、一つの流派の家元だけではなく社会全体としてに日本らしい暮らし方の一つとしての茶道を大切にしていく傾向が高まっていくようなことを期待したいと思う。
イギリスの哲学者トゥインビーの言葉で、
・自国の歴史を失った民族は滅びる
・物の価値をすべてと捉え、心の価値を失った民族は滅びる。
・理想を失った民族は滅びる
という言葉がある。
これからこの国で生きる子供たちのためにもやっぱり大切にしていきたいものだと思うのである。

設計中のSさんの家の断面スケッチ。

2020/10/10

午前中は埼玉県さいたま市にて設計中のSさんの家の断面スケッチ。Sさんの家は1000万円で家を建てるという挑戦をした木造2階建ての住宅の増築計画である。土地を購入し、既存の木造住宅と行き来できるような別棟を造る予定であるが、今日は矩計図といういわゆる断面詳細図を作成し、作り方の基本を押さえるためのスタディーをした。1階の床は土間仕上げである。基礎コンクリートの上にモルタルを50mmほど打つ仕上げとした。2階の床は下地に無垢ボードという杉の幅ハギ材を使用しその上にフロアリングを貼る。それにより水平剛性を確保しながらそれをそのまま天井仕上げとして現しにすることを検討している。

ロフト部分は杉の30mの厚板をそのまま仕上げとして貼る。もちろん裏側も現し仕上げだ。こうすることで天井下地を作る作業などを省くことができるので、全体的なコストダウンを図りつつ、構造の梁や床フロアリングの無垢材の天井現しという木の家の魅力を生み出すことができることとなるだろう。

午後、茶道稽古。来週の火曜日に明治神宮での茶会にてお点前をするということで急遽、三園棚による立礼のお点前の特訓である。本来はいつでも指名されたらすぐに動じずにできなければならないものであるのは重々承知はしているものの、なかなかそうはかないのが現状である。久しぶりの立礼だったが、3回ほど繰り返すことで何とか思い出すことができたようだ。

一日中建築のスケッチをして過ごした。

2020/10/08

今日は一日中建築のスケッチをして過ごした。午前中は昨日と同じ埼玉県川口市にて進行中のKさんの家。昨日に引き続きリビング、キッチンにある窓枠の意匠、ペレットストーブの配置などについて検討をした。

午後は埼玉県上尾市にて設計中のHさんの家のスケッチである。玄関周りの框や窓、収納家具などについてのスタディーを終え、リビングに配置する大階段の窓や、薪ストーブの上に付ける予定の大きなFIX窓などについて検討をした。

スケッチは肉体労働か頭脳労働か?僕にとっては大した差異はない。建築の世界では設計者として偉そうにしている頭脳労働者が多くの肉体労働者を使っている(僕が最も嫌いな表現だがあえてここでは使ってみよう)のが普通だけれど、そもそも資本主義社会においては。肉体的であれ頭脳的であれ、すべての労働が貨幣価値に変換されてしまっているのだから、区別すること自体に意味がないのだ。あるとしたらどちらかの側に立った人が自分を認めるためのエゴでしかないのだと思う。

もう少し詳しく書くと、資本主義社会において賃金をもらって働いている以上、頭脳労働者としての設計者は決して本質的な指導者的立場にあるのではなく、ただ単に設計という労働をしている肉体労働者と変わりはないのだという事だ。もしかしたら一日中机の前に座っていなければいけない分だけ、体に悪い厳しい仕事ともいえるだろう。ではだれが支配的立場にいるのだろうか。ある一面では大手のディベロッパーであり、ある一面では行政や政治の世界の人たちかもしれない。

昨今の建築現場ではベトナム人の研修生の姿をよく見かける。彼らは一日1万円にも満たない給料で事実上の肉体労働者として働いているのだけれど、同じ労働をしている日本人がその倍以上の給料をもらっているという現実は、労働の種別ではなく、研修生という名のもとに支配されてしまうという新たな階級を生み出している。

世の中はずるいのである。そんなことはわかっているが、でも自由に造りたいものを造りたい。住宅は唯一それが許される世界なのだと僕は思う。そしてそれはクライアントにとっても同じことなのだ。

自分の家を自分で考える、つまりは設計行為を自分自身でも行った建築の現場作業を自分で行うという事は、肉体的でも頭脳的でもない新しい労働の質を生み出す。頭の中から生まれた形を、現実のものとすべく職人さんたちと協働しながら、そして自分の体も動かしながら造り上げる労働は、お金の為の労働ではなく、そしてただの遊びでもない、まさにウイリアムモリスが羨望した景色に描かれた新しいスタイルだ。こういう事を大切にしていくことが人間の尊厳を大切にする事なのだと思う。

進行中のKさんの家の図面チェック。

2020/10/07

午前中は埼玉県川口市にて進行中のKさんの家の図面チェック。今日は洗面室とトイレについてのスケッチを中心に描く。洗面室で使用するのはTOTOの実験室用シンクである。このシンクは大型で価格も安く使いやすいのでますいいでは定番の商品だ。洗面台の天板には9mm厚のフレキシブルボードを使用する。幕板は栗の板を製材して使用する予定だ。前面の壁には同じく栗で造られた枠にはめ込まれた鏡があり、その横にはしな合板の収納家具が取り付けられる。フレキシブルボードの天板と鏡のあいだにはセルフビルドでタイルが貼られる予定だ。セルフビルドのタイル貼りは初めは少々とっつきにくいけれど、タイルのカットさえ覚えてしまえばだれでもできる簡単な作業だ。壁にはモイスという石灰質の板材を貼る。背面には大きな収納があり、家族全員のタオルや下着などの収納が可能となっている。

身の回りの様々なものを自分で造ろうという事は、知覚できるテリトリーを出来るだけ拡張していこうとすることだと思う。ハイテク社会において便利なものを受け入れれば受け入れるほどに、なんだかよくわからない物や事に支配される割合が少しずつ増えていくような気がする。意識するとしないとにかかわらず、何者かに自分自身の行動や嗜好を監視され分析され・・・、社会全体が表面からは理解できないほどに迷宮化している。でも、人が暮らすってそんなに複雑な事なのだろうか。住宅は僕たちの理解できる空間へと創り直すことが出来る唯一の居場所である。だからこそ出来ることは自分でやる、セルフビルドが価値があるのだと思う。

スケッチをしているとだんだん楽しくなって見積もりに入っていない物まで書き始めてしまう。勝手に書いて追加を請求できるはずもないので、気を付けないといけないのだけれど、でもやっぱりこうしたいなあの感には勝てるものでもない。クライアントにとっては一生に一度の家づくりなのだ。少々のサービスは良しとしよう。

SNSは普段あまりお会いすることはできない人を思い出させてくれる。

2020/10/05

SNSは普段あまりお会いすることはできない人を思い出させてくれる。僕はそれほど得意ではないのだけれど、Facebookだけは何となく暇な時に目を通す。先日は気まぐれカフェなる隠れ家的なカフェを営むあべさんの記事を目にした。内容はカフェの話もあるけれど、日常の中でふと目にする自然の営みのような内容も多いので読んでいて面白い。そしてふと季節を思い出させてくれる。

このカフェはとても古い住宅のリフォーム工事を依頼されるところから始まった。構造体はゆがんでいて、建て替えをしてもおかしくないような状態であったのだけれど、あべさんの強い思いでリフォームの道を進むこととなった。居間にはご両親の遺影が飾られていたことを強く記憶しているけれど、家を建て替えずにリフォームされる方は必ず遺影が飾られているものだ。ご両親やご先祖様とのつながりがあって自分がいる、そんなことを大切に思う心が家も大切にするのだろう。工事は耐震補強工事、お風呂などの設備のやり替え、古い部分を残したり部材を再利用したりしながら経年変化の良さを残しつつ、カフェとしての内装を造る事工事、庭との関係を生み出すデッキ工事などを行った。

この写真は昨年辰巳拓郎さんのテレビ取材を受けたときに撮影したものだ。辰巳拓郎さんも健康にはかなり気を使っているそうで、あべさんの体に良いレシピにとても興味を持たれていたことを思い出す。

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栃木県の那珂川下りの3回目である。

2020/10/04

今日は栃木県の那珂川下りの3回目である。レクリエーションカヤックで初の体験をした後に、ハイブリッドタイプと呼ばれるカヤックを経て、ついにリバーカヤックに初挑戦することになった。これまで乗っていた物と比べるとだいぶ小さく感じる。長さは2mほどしかないだろう。リバーカヤックというのは川下り用に開発されたカヤックで、小回りが利いて自分の思い通りに動かすことが出来るので、ホワイトウォーターと呼ばれるいわゆる激流下りなどもできるタイプのものを指す。今回乗ったのは、ダガーのリワインドMD、フラットボトムで安定性があるタイプである。

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何となく始めたカヤックによる川下り。毎週のように栃木県の那珂川に来ていると、自然の中で過ごす心地よさが病みつきになる。那珂川の太平洋側には八溝山地という低い山々が連なっていて、そこでは良質な杉材が育てられている。最も高い山は標高1022mの八溝山、この八溝山系で伐採された材木は「八溝材」といい、国産材の八溝杉はその一つである。素性がよく狂いにくく、木目が美しい、赤身の色が美しい、曲げに強いといった点から、関東きっての良材として、木材業界では高い評価を受けている。ますいいでもこの山系のスギ材を柱として使用しているし、今後の家づくりでは梁材もこの八溝杉を使用していく予定である。

山の豊かさが川を通じて、海に恩恵をもたらすことは広く知られている。山の樹木から落ちた葉や、森の土壌に含まれる多くのミネラルをはじめとする様々な物質が雨水や地下水に溶け込み、河川を通じて海洋に運ばれ、植物性プランクトンを大発生させて、それが貝類や動物性プランクトンの餌となり、やがて小型魚、大型魚と食物連鎖が進んでゆくのだ。「海を豊かにしているのは山の森」なのである。その山を整備するにはやはり人手が必要だ。山を整備すてくれる人々、つまり林業に関わる人が暮らしていくためには、その山でとれる木を売らなければいけない。地域の山を育てる人、地域の山の木で家をつくる人、地域の山の木で作った家に暮らす人、こういう関係性が成立する事こそが僕たちの暮らす自然を守ることにつながるのである。

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川下りのベースキャンプの近くには石畑の棚田というところがある。ここでは平成12年から、地元農家7名が集まり、棚田の再生と保全を目的に、入郷棚田保全協議会を結成し、現在は、毎年50~60組のオーナーと11戸の地元農家が活動しているそうだ。
・・・以下茂木町HPより
石畑の棚田について
日本の棚田百選にも選ばれている当地区。
年会費3万円で、棚田のオーナーになれます。
田植え、草刈り、稲刈りなど、年間を通じた農作業に参加していただきます。
地元の農産物のお土産付きです。

●棚田の特色
中山間地の谷津田が棚田を形成
面積 2.4ha 田の枚数 180枚
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人口約1万人の過疎の進む町でもこうして豊かな自然を守る活動を行っている。最近毎日のように隈による被害が報告されているが、人は厳しい自然と調和しながら、そして時には川の流れを変えるがごとき力業を使いつつ、人が生きていくことが出来る状況を作ってきたのである。家づくりとは人が暮らす場を作ること、だからこそそこで使う材料も僕たちや子供たちが暮らす未来につながるように考えながらセレクトしていきたいと思うのである。

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進行中のKさんご家族打合せ。

2020/10/03

10時、埼玉県川口市にて家づくりが進行中のKさんご家族打合せ。現場では基礎工事が進められているのだが、今日はアルミサッシや外壁、屋根などの色について話をした。外壁はモルタルとジョリパットの2種類を1階と2階で塗り分ける。2階が1階よりも910㎜跳ねだしているのでモルタル仕上げの荒々しいグレーのボリュームに、ブラウン系のアースカラーで仕上げられた大きなボリュームが乗っかるような建築である。モルタルの外壁面と呼応して、ジョリパットも少々粗目の小粒ロックSが良い。屋根などの色ももちろんブラウン系である。アルミサッシの色は外壁に合わせて上下階で分けることにした。出来上がるがとても楽しみな住宅である。

川下りをしているとカワセミを見かけることがある。カワセミは翡翠と書いたり、川蝉と書いたりする小さな鳥で、羽の色が鮮やかな青色をしているのが特徴だ。水の中にいる小魚を捉えて食べるので、水面に近い小枝などに留まっていることが多く、水面側から崖を眺めていると運が良ければ見つけることが出来る。川が濁っていると魚を食べることが出来ないので生息できなくなってしまうから、自然環境のバロメーター的な存在として扱われてきたそうだ。実際に翡翠を見た時の印象は、映画の中で見るティンカーベルのようなイメージである。飛び立つと直線的な動きをして獲物を捕らえ、そしてまたどこかへ留まるのだけれど、その小ささと色の鮮やかさが、実際には見たことはないけれどそんなものを思い出させるのだろう。

日本にはたくさんの山や川がある。そして周りを海で囲まれている。なんだか最近はクマに襲われた事故のニュースばかりが目に付くのだけれど、自然は僕たちにそれ以上の様々な恵みを与えてくれていることを忘れてはいけないと思う。都会で生活をしているとどうしても忘れてしまうことがある。でも都会での平穏な暮らしがこの先もずっと続いてくれるというような楽観的な思考は、昨今の異常気象などの状態を見るとなかなか持ちえないのではないだろうか。台風による風被害や洪水、動物たちによる被害、地震、世界中で燃え続ける山火事、・・・一体僕たちの住む地球はどうなってしまうのかと考えない日はない。翡翠を見ると彼女の妖精の粉を浴び「信じる心を持てば空を飛べる」ティンカーベルを思い出すのは、その愛らしい姿が僕たちの心に「僕たちが信じればこの地球もまだなんとなやり直せるのではないか」と思わせてくれるからかもしれないと思うのだ。

Mさんの家の作業立ち合い。

2020/10/02

朝7時過ぎ、埼玉県蕨市にて10年ほど前に造ったMさんの家の作業立ち合い。今日の作業は3階のバルコニーに猫の為の囲いを造るという作業である。レッドシダーのツーバイフォー材をあらかじめキシラデコールで塗装しておいたので、まずは大工の本間さんとスタッフの堀部君と一緒に荷揚げ作業を行った。地上、2階のバルコニー、3階のバルコニーの3か所に分かれ、荷揚げ作業をする事約30分、短い時間でも汗ばむ大変な作業である。大工さんが囲いを造った後に、Mさんたちがネットを張って出来上がり。捨てられた猫を保護して、飼育して、新たな飼い主を探すというボランティア活動に少しでも協力できたとても有意義な一日であった。

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