増井真也 日記 blog

窓辺のキッチン

2021/12/30

窓辺のキッチン

僕の自宅のキッチンは目の前に大きな窓がある。北向きだけれど、安定した光が入るし、その向こうにはちょっとした緑もあって季節ごとに変化を楽しむことができる。ふと気がつくと塀の上を猫が歩いていたりの驚きもある。キッチンのタイルはセルフビルドで貼った。素人の仕事なのでちょっと雑なところもあるけれどそれも味だ。ステンレスのバイブレーション仕上げの天板は傷も目立ちにくいしなかなか良い。写真の木の作業台の天板はタモである。全てをステンレスや人造大理石などで仕上げてしまうのではなく、こういうところに天然の木の仕上げがあるだけで豊かさが増すように思える。

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今日は埼玉県上尾市にて作ったHさんの家

2021/12/27

今日は埼玉県上尾市にて作ったHさんの家のチルチンビト撮影立ち会い。雑誌の撮影立ち会いはこれまでにも何度も行ってきたが、チルチンビトさんは生活感を撮る雑誌さんなのでクライアントにも登場して頂くことにした。撮影は朝の十時ごろスタート、まずは外観写真、そして内観へと移っていく。キッチンやリビングにある大きな階段の写真にはHさんご夫妻が実際にそこで過ごしている様子を撮影した。最後は屋根の上にあるウッドデッキである。このウッドデッキは屋久島で取れた杉で作られいて、遠くに富士山、そして春には庭にある枝垂れ桜でお花見を楽しむことができるという特別な場所になっている。

ちなみに屋久島の杉材は油が多くとても丈夫で外部使用にはとても適した素材だ。どれくらい油分が多いかというと、4寸角の柱材、普通なら軽々と持つことができるのだけれど、屋久島の杉の場合はとても重くて僕でもなんとか持てるくらい、それくらいに違うのである。

下の写真は撮影時の様子。ウッドデッキの写真はドローンを飛ばしての撮影である。ドローン撮影も最近は珍しく無くなってきている。現実ではあり得ない、視点をずらした建築の見え方を楽しむ良い手法なのだ。

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代休のおかげでホワイトクリスマスイブ

2021/12/24

代休のおかげでホワイトクリスマスイブを過ごしてしまった。今日は八ヶ岳の北横岳に冬山登山に出かけた。冬山など登るのは10年以上記憶にないのだけれど、ひょんなことから登山を再開することになって以来、自然と意識が向いてしまった。僕が山と出会ったのは早稲田中学・高校時代の山岳部である。本当は中学1年性の時にスキー部に入りたいという意思表示をしたはずなのだが、その時の担任の高橋先生に「スキー部はやめときなさい。山岳部がいいよ」と言われて、なぜかそれを鵜呑みにしてしまった。山を歩いていると、特に何にも考えることができない環境の中で、それでもいろんなことを考えようとするもので、そういう自分自身を見つめる時間が僕にとってはとても貴重なものだったような気がする。幼いながらに禅の如き時間を過ごしたような感じだろうか。47歳になり再び山と対話しながら登山をする自分がどうなるか・・・、これが不思議なことに昔と全く変わらないのが面白い。まあ怪我をしないように継続していくこととしようと思う。

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今日は埼玉県川口市にて設計中の

2021/12/22

今日は埼玉県川口市にて設計中の、川口市立グリンセンター内シャトー赤柴大集会堂の基本設計中間報告会を行った。この施設はワークショップなどの文化施設と飲食スペースに分かれて利用される予定である。これまで4回のワークショップを行う中で、この施設を利用するとしたらどのように魅力的な運営方法が考えられるかについて、実際の市内業者さん達のご意見を伺ってきた。僕たちが作り上げた基本設計計画はこのワークショップの中で得られたご意見を取り入れながら行っている。さまざまな行政施設が無用の長物として利用されない箱になってしまっている中で、こうして使う人の意見を聞きながら設計を行うということはとても大切なことだと思う。民間だったら当たり前のことなのだけれど・・・、だからこそ僕たちみたいな設計事務所と行政が協力して良いものを作らなければいけないのだと思う。

午後より埼玉県川口市にて設計中のNさんの家の打ち合わせ。今日は45坪まで絞った案についてプレゼンを行った。55坪・60坪・45坪とさまざまな広さでご提案をしているが、実際の床面積はそれほど大きく変わっているわけではない。大きくなるとその分吹き抜けなどの床には参入されない面積が多くなっているのである。4人家族にとって適正な広さの感覚は人によってさまざまだろう。大抵は30坪から40坪程度が多いのではないかと思うが、最小限住宅では上下合わせて18坪の9坪ハウスのごときものだってある。暮らしのスタイルは人それぞれ、どのようなものが自分に適しているかを見ることから始めるのが良いのだと思う。

今日は高尾山から景信山までの縦走を楽しんだ。

2021/12/19

今日は高尾山から景信山までの縦走を楽しんだ。景信山までの稜線は尾根の上と北側の日陰の道があって、日陰の道を行くと小さな氷のオブジェが沢山あることに気がついた。なんだか変わった形をしたこの氷は、「しもばしら」というシソ科の植物の辞表の部分が枯れて残った地下茎からである蒸気が凍ってできたものだという。自然の作る奇跡の造形とも言えるだろうか、低山といって侮るなかれ、東京都の低山ハイクで思わず人生初モノの体験をしてしまった。

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埼玉県伊奈町にて設計中のTさんの家のリフォーム打ち合わせ

2021/12/17

今日は埼玉県伊奈町にて設計中のTさんの家のリフォーム打ち合わせ。お母さんが一人で暮らす実家に家族みんなで移り住み、大勢で暮らすためのリフォームである。敷地には大きな畑があって、暮らしの中に畑作業を取り入れることができるなんとも羨ましい暮らしである。普通の人が農地に暮らそうとすると、農家として認めてもらうための就農研修などに参加する必要があるけれど、ご実家であれば全くそんな必要はないのである。

かくいう僕も実は畑作業を楽しむ一人である。畑は地元の農家さんからお借りしているのだが、広さは意外に広く2反(600坪)ほどのスペースをますいいの安江さんと、茶道の知人であるAさんと一緒に楽しんでいる。最近は忙しくてあんまり参加できていないけれど、農薬をほとんど使わずに育てた野菜や、この場所でやる焚き火は僕の大切な楽しみの一つだ。そして何よりも娘と一緒にこんな作業をできるのもまた大切な時間なのである。

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東京都東村山市にてリフォームを検討中のUさん打ち合わせ

2021/12/16

午後より、東京都東村山市にてリフォームを検討中のUさん打ち合わせ。ご両親を亡くし、これからの暮らしを営む家をどうするかの検討である。リフォームするもよし、新築するもよし、どちらも可能性があるので二つのご提案をさせていただくこととなった。

下の写真は僕が初めて埼玉県建築文化賞の最優秀賞をいただいた作品である。この住宅の施主のMさんは、この家を建てる前にご両親を亡くし、新しい暮らしのスタートのために僕のところに家を建て替えるご相談に来てくれた。その時に自分の今の状態は、この写真の中にある神田日勝さんの後ろ足のない馬の模写のような状態だけれど、家を作ることでしっかりと地に足をつけて暮らしていけるようになるような気がする、という話をされた。32歳で亡くなった天才画家については、連続テレビ小説などにもモデルになった人物が描かれたりしたので知っている方も多いだろう。家づくりというのは、人の人生の支えになるくらいにとても大切なことだと思う。そもそも家というのは人が生きるための箱なのだ。さまざまな思いを抱きながら幸せに暮らすことができる箱、それを作るという尊い行為とこれからも真剣に立ち向かっていきたいと思う。

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避難観測所兼茶室の打ち合わせを行った。

2021/12/15

午前中は埼玉県川口市にて設計中の避難観測所兼茶室の打ち合わせを行った。このプロジェクトは荒川の氾濫時に想定される川口市の浸水の時に、高齢のおばあさんが自宅に居ながらにして避難することができるようにするものである。鉄骨で嵩上げされた小さな小屋には2階の窓から移動することができるように自宅2階内部にスロープを設置し、そこから渡ることができるように設計されている。1階から2階への垂直避難は、押し入れの床に穴をあけて車椅子ごと2階まで移動することができるように作った簡易エレベーターで行う。この垂直避難にはチェーンブロックを使用しているが、これはあくまで避難時のみに使用するもので普段は荷物の上下移動にしか使用できない決まりがある。古屋には小さなテラスが付いており、ヘリコプターによる救助にも対応できる構造だ。年明けからいよいよ工事にないる予定、出来上がるのがとても楽しみなプロジェクトだ。

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日本経済新聞で僕の茶室をご紹介いただいた。

2021/12/12

今日の日本経済新聞で僕の茶室をご紹介いただいた。日本経済新聞の記事だというからどんな風にご紹介されるのかと思ったら、僕が普段着で茶室にパソコンを置いて仕事をしている風景であった。取材の日は着物を着込みお点前をしてのお出迎えをしたのだけれど、取材後の談笑の様子が掲載れるのは予想外というが、予想通りというか・・・。
僕の自宅の茶室ではお茶のお稽古をしているわけではない。お稽古は先生の稽古場で行うので、自宅はあくまで楽しみの場である。冬の茶室は特に良い。冬は畳に空けられた穴を開けてそこで湯を沸かす炉を使用する。(ちなみに夏の間は風炉というまあるい火鉢のようなところで湯を沸かすことになっている。)炉の季節になると、まるで家の中の焚き火状態で、パチパチと起こる炭の音と香りを楽しみなが、そしてほのかな暖をありがたく思いながらの、ゆったりとしたひとときを過ごすことができるのである。

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アスタリスクカフェというカフェを作らせていただいた。

2021/12/10

埼玉県川島町で10年ほど前にアスタリスクカフェというカフェを作らせていただいた。早期退職をしたご夫妻が訪ねてきて、1200万円ほどでカフェ兼住宅を作りたいというご相談を受けたときには一度お断りをしようと思ったのだが、ご主人のやる気を感じるに従い、この人だったらある程度の箱までを作ってあげれば、そのさきはセルフビルドで理想のカフェを作りあげられるのではないかという思いでお仕事を受けさせていただいたのである。その後カフェはとても繁盛し、テレビや雑誌の取材を受ける人気店となった。

良い建築は良い施主が作るものだ。お金がふんだんにあれば良い建築ができるかというとそうでもない。予算が少なくとも素晴らしい建築はある。決してお金じゃないのだ。そこに必要なものは、こんな建築にしたいという施主の思いとそれを実現しようと真摯に向き合う建築家の思いであり、それが同じ方向に向いたときに初めて良いものができるのだと思うのである。

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埼玉県蓮田市にて農業を営みながらゆったりとした田舎暮らし

2021/12/08

午前中、埼玉県蓮田市にて農業を営みながらゆったりとした田舎暮らしを楽しみたいというOさんご家族打ち合わせ。蓮田市という場所は東京から東北自動車道を使えば車で1時間ほどの郊外である。田んぼや畑が広がるとてものどかな地域で、見渡せば空が見えるとても暮らしやすい場所だ。Oさんご夫婦はもうしばらくは東京でお勤めの仕事があるけれど、数年後の退職、そしてその後の第二の人生を豊かにするための移転を考えたということであった。コロナを経験してテレワークという選択が普通になった今、郊外型の暮らしを楽しみたいという声はとても増えている。今回の計画はキッチンとダイニング、そして洗面室とトイレのリフォームである。蔵のある大きな農家を購入したので、一つづつ丁寧に手を入れながら暮らしやすい形に整えていきたいというOさんのご要望に寄り添えたらと思う。

埼玉県坂戸市にて作ったYさんの家は、農家というわけではないけれど田舎暮らしの事例である。市の保留地で売り出された土地を購入し、広い庭を囲むような住宅を設計した。リビングに薪ストーブを設置、庭には薪置き場もしつらえている。畑で育てた野菜を採って、そのまま料理に利用するという楽しみもできるし、庭でお花を育てることもできる。僕はこの家の設計をするときに京都の大原で暮らすベニシアさんの暮らしをイメージしていたのだけれど、奥様がそんな豊かな暮らしを描き出してくれていることだろうと思う。

蓮田市のOさんの暮らしも、丁寧に創り上げるお手伝いをしていけたらと思うのである。

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埼玉県川口市にある古い住宅を壊さないで利用した

2021/12/07

埼玉県川口市にある古い住宅を壊さないで利用したいというご相談があった。「造らない・壊さない建築家」を心がけている僕としては、こういうご相談はとても大切にしている。建築は上手に手入れをしてあげれば古いほうが価値がある、これは海外では当たり前の考えである。特に最近の手間がかからないように造られている無機質な建築と比べると、昔の職人さんが手間隙をかけて作り上げた古い建築のいかに素晴らしいことか。古き良き時代、その時代に作られたものを大切に使い続けてあげることが文化だと思う。建築家は文化の作り手でありたい。だからこそ今の時代に受け入れられる形に最小限のアレンジをしてあげて、そしてまたこの先数十年と利用される形にsなければと思うのである。

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今日は茨城県の筑波山に登ってきた。

2021/12/05

今日は茨城県の筑波山に登ってきた。この山はロープウエーを使わなければなかなか上りがいがある山で、登り下りの標高差が800mという僕にはちょうど良い体力度だ。冬晴れで見晴らしもよく、気温も高いので心地よい汗をかきながらの登山となった。途中にある大きないしが引っかかったような弁慶の七戻りという岩、これはもうアートとしか言いようがない。自然の偶発的な造形の魅力、そしてそれを大切に守ってきたこの土地の人々に感謝したいと思う。

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今日は日帰り京都である。

2021/12/04

今日は日帰り京都である。裏千家の大会を運営するための委員を務めている関係で、会合に参加するために京都まで足を運んだのだが、久しぶりの京都駅の周辺で見た久しぶりのすごい人だかりになんだか驚いてしまった。

京都市というと財政破綻のニュースが最近は耳に聞こえてくる。これだけの観光都市が保育園の利用料金を上げなければいけないほどに厳しい状況になってしまうことが不思議だが、話題になっている一般市民の保育園の利用料をあげることと、ゲストを迎える豪華茶室まである市役所の改修工事とのギャップを見るに、まるでこの国の格差の歪みが現れているようで気持ちが悪い。いくら観光都市とはいえそこで暮らす人々が幸せになることができなければ、煌びやかな建築投資をする意味はないのではないかと思うのだ。こういう問題が表に出たのはコロナが始まってからなのだろうか。まあ急に財政が悪化したわけではないだろうが、収入が減ることで表沙汰になってしまったのかもしれない。

どんなことでも無理は禁物であるが、京都は一体どんな無理をしたのだろう。同じように世界的な観光地のスペイン・バルセロナにあるサクラダファミリアはいったいどのように資金を集めて建て上がっているか。この建物は贖罪教会なので、資金調達は信者の喜捨に頼ってきた。資金不足により工事がなかなか進まなかったが、1990年代以降に拝観料収入が増えて資金状況が好転したそうだ。税金を使いまくっての建築ではないのでとてつもない時間を要しているが、それがまた魅力になっている点も面白い。最近の京都はちょっと無理をしてしまっていたのだろが、そんなに無理をしなくとも元々ある京都の魅力を少しずつ育てていくことで十分なのかもしれないと思うのである。

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フランス、パリから電車で300キロほど移動するとロンシャンという小さな町がある

2021/12/03

フランス、パリから電車で300キロほど移動するとロンシャンという小さな町がある。第2次世界大戦によって礼拝堂が壊されてしまい再建を願う人々によってル・コルビジェに設計が依頼され現在の礼拝堂ができた。シェル構造の屋根を支える分厚い壁と、そこに開けられた無数の開口部から差し込む様々な色の光が特徴的な建築である。いわゆるコルビジェの近代建築の5原則から離れたとても個人的で恣意的な造形建築だが、僕はサヴォワ邸よりもやっぱりこちらの方が好きである。数年前に見に行ったきりだけれど、コロナが落ち着いたらもう一度行ってみたい場所の一つだ。

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まゆのような茶室を作った。

2021/12/02

まゆのような茶室を作った。鉄筋を曲げ、床のベニア板に差し込み外形を作ったら、そこに毛糸を巻きつける。どんどん巻いてきといつの間にかそこに白いうっすらとした空間が現れる。床には麻のマットを敷き込み座りやすくしたら、茶室の出来上がりだ。完全に区切るのではなく柔らかく区切られた空間はなんとも言えない心地よい緊張感のある茶室空間となった。ただただ伝統的な空間だけではない囲まれただけの居場所で感じる「茶室らしさ」を感じた時、「茶室とはなんなのだろう」と感じる不思議なひとときであった。

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