増井真也 日記 blog

今日から3日間、日本建築学会の全国大会に参加する

2025/09/10

今日から3日間、日本建築学会の全国大会に参加する。昨年よりものつくり大学で修士課程に進学している関係での2回目の参加である。大学教授、ゼネコン研究所などの大集会といったところであろうか。僕が普段生きている工務店とは全く違う世界だけれど、最先端の技術があったり、はたまたこんなことを研究してどうするのというようなマニアックなものがあったりの楽しい世界である。今日は解築学なるコンペの公開審査に参加した。審査委員長は松村秀一先生、審査員の中には早稲田の中谷先生もいる。全国予選には200を超える案が出されたそうで、その中を勝ち抜いてきた10案が発表されて、その場で最優秀賞が選定された。解築学などという学問は今のところ存在しない。松村先生のお話を聞いていると、どうやら建築だらけの世の中で更なる建築をするためには壊さなければならないよね。壊して作るというプロセスに対して、なんでもいいから提案してみてくださいね。というのが今回のコンペの趣旨のようである。さまざまな案が出されたが、優勝案はバングラディシュの港町に廃船を解体した部品の倉庫と、その骨組みを使用した建築を作り、廃部品をめぐる新たなコミュニティーを計画するというものであった。偶然にも息子が通った早稲田大学の渡邊研究室の後輩ということで、嬉しい限りであった。

全体を通して感じたのは、この案以外はとても後ろ向きな建築家のあり方、つまりは作るのではなくどのように少しずつ壊していくか、建築の森を原野に戻していくかの提案が多いことであった。学生の案でこれはいかにの疑問が湧いたが、これもまた時代なのかもしれない。僕もたくさんの家を作ってきた。それも深く深く考えて、あるべき住宅の姿をお客様と話し合って作り上げてきた。でもそこまで深く考えて解体をしてきたかと言われるとそうではないような気もする。ただ壊す。安ければ良い。そんな気持ちで壊してきた。

コンペの中で「拾痕」というテーマを発表していた学生がいた。全てを壊すのではなく、半分リノベ、古きものは利用する、そんな提案であった。今、埼玉県蕨市で古民家の再生を行なっている。ここでも全てを壊すのではなく、築100年の古民家の約半分を残した計画をした。この計画では、構造家の山辺先生のアドバイスのもと、現在の耐震基準を実現させて、さらに断熱性能などもしっかりと兼ね備えた再生を行なっている。黄色い壁は新たに付け加えた耐力壁で、緑の面は屋根に加わる地震力を耐力壁に伝えるための水平剛性である。ただ壊すのではなく、味がある古い建具などの使えるものは使い、新たな性能を加えていくという行為である。ちょうど今やっている工事の中に、なんだか解築学の答えがあるような気もするのである。

施工後に調査を行った結果、防音の性能はD45から50という結果を得ることができ、これは建築学会で推奨するレベルとなっている

2025/09/08

先日、三軒茶屋で作った長屋型の木造賃貸アパートでは、防音の工事を注意深く行うことで、D45から50程度の高い防音性能を確保することができた。設計には防音専門のコンサル会社にご協力いただき、下の図面のような仕様を採用している。界壁には、吸音材にロックウールを採用し、石膏ボード15mmを両面張り、アスファルト4mmを両面張り、石膏ボード12mmを両面張りして仕上げを行っている。施工後に調査を行った結果、防音の性能はD45から50という結果を得ることができ、これは建築学会で推奨するレベルとなっている。写真は、施工途中のもの。アスファルトはしっかりと目張りを行い、石膏ボードも目地をコーキングするなど入念に施工した。

賃貸投資物件ということで収支計算が合うようにコストを最小限に抑えなければならず、本体工事で坪単価を106万円で造っている

2025/09/05

最近は賃貸用の木造アパート建築を造ることが増えてきている。ビニルクロスにサイディングのハウスメーカーのアパート建築とは異なる特徴的な投資物件を作りたいという方が増えてきているからだと思うが、先日三軒茶屋に作った長屋もそのような賃貸物件である。木造2階建ての長屋建築は、住居部分と2層の長屋、そして1階と2階に分かれている賃貸の3つの区画から成り立つ。

賃貸投資物件ということで収支計算が合うようにコストを最小限に抑えなければならず、本体工事で坪単価を106万円で造っている。コストダウンの工夫としては、内装仕上げに土佐和紙を使用したりの手間を抑える仕上げを採用すること、長屋というシンプルな構造形式を採用することなどの工夫を施した。計画には住宅金融公庫の賃貸住宅建設融資制度を利用するなど、資金面でも工夫をした。ガルバリウムの外壁に洗い出しの土間、メーカー建築にはないテイストの賃貸住宅となったと思う。

埼玉県さいたま市にてアクセサリーショップ兼住宅を作った

2025/09/03

埼玉県さいたま市にてアクセサリーショップ兼住宅を作った。敷地の道路側にお店を配置し、住居部分は奥側に作った。お店のスペースは10畳ほど、その中に売り場と工房がある。工房は、木製のフレームで囲われていて、売り場とのコミュニケーションができるようにした。

展示のためのニッチは、実は断熱のための壁ふかしを利用して作られた。ショップの部分は床が低くて床下断熱ができないために、基礎断熱が施されている。そのためには断熱材の厚み分、壁の内側にふけるわけだが、その厚み分のニッチを壁に作ることで展示スペースとした。床はウォールナットで、この下にも断熱が施されている。

準防火地域で防火建具の規制がある中で、木製建具を使用するために、ここには防火シャッターを仕込んだ。木製の建具は、建物にお店の入り口としてふさわしい、人を迎え入れてくれる優しい表情を作り上げてくれる。外壁の目の通ったとても綺麗な羽目板ととてもよく合っている。

埼玉県さいたま市の浦和駅から徒歩20分ほどの住宅街に中庭のある家を造った

2025/09/01

埼玉県さいたま市の浦和駅から徒歩20分ほどの住宅街に中庭のある家を造った。1階にリビングとアクセサリーショップが配置されていて、その中間部分に中庭を配置している。奥に細長い敷地で敷地奥にリビングがある。写真は、リビングから中庭を見ている様子だ。中庭の土間には大谷石を敷き込んだ。リビングの床は日光杉の赤身の無垢フロアリングで、壁には、コバウというドイツ製の紙クロスを貼った後に、漆喰と鹿沼土を混ぜ込んだ土入り漆喰を塗っている。これは吹き抜けの揺れやすい壁でも、左官で仕上げた漆喰を破れにくくするための工夫である。

僕は細長い敷地の場合には中庭を採用することが多い。中庭はプライバシーを確保しながら外部に開くことができるとても魅力的な装置となる。人目を気にせず、バーベキューをしたりの利用もできる。このプランでは南側の中庭なので、豊かな光も差し込んでくれる。植栽の向こう側は玄関である。来訪者の視線を遮るように植栽を配置し、その気配を感じることができるように工夫した。

増井真也 日記アーカイブ