増井真也 日記 blog

埼玉県の川口市にてリノベーションを行った古民家が「民家の再生と創造」という雑誌に掲載された

2024/09/28

先日、埼玉県の川口市にてリノベーションを行った古民家が「民家の再生と創造」という雑誌に掲載された。古民家再生をやってみたいと思って24年間の活動を行ってきたが、初めての古民家である。築年数は150年ほど、大きな蛇のような梁が印象的な住宅だ。都市部に残る古民家は地域の中に、昔が懐かしくなるような風景を生み出す資産である。こういうものの積み重ねで風土と呼ばれるようなものが定着し、地域愛のようなものも生まれのだろう。今の時代はモダン建築が沖縄でも北海道でもそして東京でも作られており、その結果等価な風景が日本中に、というより世界中に広がっていくわけだが、古民家の意匠は全く違う特異性があって、それが地域の定義づけにもなるのが面白い。沖縄の赤い屋根、東北の民家、高山の合掌、・・・失われていく風景の維持に少しは役に立つことができたと思う。

一部の富裕層のためだけに活動するのであれば関係ないが、そんな建築家には僕はあんまりなりたくない。今を一生懸命に生きる人々の暮らしを豊かにする設計についてほぼ9坪ハウスであるSさんの家を通して考えていきたいと思う。

2024/09/25

9坪ハウスという暮らし方がある。古くは戦後の物資が不足した時代に、建築家の増沢恂が若干28歳の時に建てた自邸である「最小限住宅」に由来する住宅の設計事例で、3間*3間の中にいかに生活のための設を施すかの工夫である。この最小限住宅は

・無理をせず、無駄を出さず、余計なことをしない
・簡単に手に入る安い材料をそのまま使う
・製品の寸法を尊重し、無駄を出さない
・少ない材料でつくる

というようなことを大切にして計画されたそうだが、今のような物価が上がっている時代にもそのまま当てはまる設計上の工夫であると思う。時代は色々と変化するわけだが、どんな時代の中でも人々は豊かな暮らしを手に入れてきた。そしてそういう工夫を時代に合わせて柔軟に行うことこそ建築家が住宅に関わる意味であるとも思う。一部の富裕層のためだけに活動するのであれば関係ないが、そんな建築家には僕はあんまりなりたくない。今を一生懸命に生きる人々の暮らしを豊かにする設計についてほぼ9坪ハウスであるSさんの家を通して考えていきたいと思う。

今日は左官の小沼さんと一緒にテラゾーの磨き作業を行った。

2024/09/18

今日は左官の小沼さんと一緒にテラゾーの磨き作業を行った。これは、自宅の床にペレットストーブを置くためのテラゾーを施工するという計画なのだけれど、なぜか僕が磨きをすることになってしまった。もちろん小沼さんの技術指導付きなわけだが、先日購入した磨きの機械を使えば素人も僕でも綺麗に仕上げることができた。以下がその様子である。もちろん種石の施工は小沼さんによるものである。緑色のガラスが蛇紋のように綺麗に輝いている。

京聚楽土なげすさ仕上げ

2024/09/17

今日は左官の小沼さんによる茶室の土壁塗り作業に立ち会った。今回の仕上げは京聚楽土なげすさ仕上げである。この技法は千利休が作ったとされている京都の待庵に用いられているもので、稲藁のはかまの部分を水につけて柔らかくしたものを土壁を塗ったところにコテで撫で付けていくというもの。出来上がると土壁からうっすらとすさが浮き上がるのが楽しみな仕上げである。今回用いた土は左官の上田さんから小沼さんがいただいたというとても古い土だ。その土に珪砂と藁を混ぜて、何年も寝かせた腐食土を入れて塗りつけている。古い土と腐食土の効果でサビが早く出ることを期待しているのだけれど、これは何年か待ってみないことにはわからない。写真は古い聚楽土と稲藁のはかま、そして引きずり仕上げのコテである。左官のコテは仕上げ方によってその形が色々とあってとても面白い。いずれ話をしたいと思う。

今日は裏千家の淡交会青年部の行事で群馬県の桐生市に訪れた

2024/09/15

今日は裏千家の淡交会青年部の行事で群馬県の桐生市に訪れた。近いようで、なかなか実際に行く機会のない街である。僕は今回初めて訪問した。桐生の本町は、徳川家康公が江戸に入城した天正18年(1590)ののち、代官大久保長安の手代大野八右衛門 によって「桐生新町」として新たに町立てされたそうである。約400年前、養蚕と絹織物の拠点として徳川家康公の命で作られたというが、養蚕業自体が衰退している現在は、人口減少が始まっている地方都市に特有の問題を抱えているようだ。

会場に使われた美喜仁桐生文化会館は坂倉建築研究所の設計とのことだが、よくもまあこの時代にこんな建築が建ったなあと思うような奇抜な建築であった。竣工は1997年、バブルが終わった直後でまだ予算がつきやすかったのだろう。今ではなかなか考えられない建築であるが、日本にもまたこんな建築ができる時代が来るのだろうか。建築はその国の国力を表す。最近の日本の経済状態では難しいかもしれないが、ドバイなど信じられないようなビルが建っている訳なので、日本だって経済が再興すればまたとんでもない建築が生み出されるのだと思う。

話は変わるが、この建物はオスロにあるオペラ座である。屋根の上を市民に開放するというアイデアが面白く、この国の活発な経済を象徴する湾岸エリア再開発の大規模建築である。この建築、奇抜ではあるが、でもなんとなく無理なく街に根付いているようにも見えるところが良い。この辺のバランスが文化度であり、知性なのだろう。再び日本経済が再興する時が来ても、是非こうした理性ある建築を生み出したいものだと思う。

 

 

ライカのBLT360

2024/09/06

今日は3Dスキャナーについての説明を受けた。この商品はライカのBLT360と言って、短時間で建物のスキャンを行うことができる。他にも色々とあるようだが、住宅レベルだとこの商品がおすすめとのことだ。従来のリフォーム現場では、二人で現地測量に行って、平面図や立面図、展開図を起こして、そこからリフォームの打ち合わせに入るのだが、3Dスキャンを利用すると測量の作業を一人で行い、そのデータに基づいて図面作成をすることができるようになる。さらに進むと、その点群データを利用しながらBIMの図面を書いて3次元設計をすることも可能となるわけで、これはなかなかの便利な代物だ。今回ご説明いただいた住友林業アーキテクノさんはこの作業をアウトソーシングでやってくれる、つまりスキャンから既存図作成までを依頼できるということだから、僕たちは建築家としての作業からスタートできるようになるわけでとても良いサービスだと思う。これもまた北欧研修で得た知見による対策である。やはり学びは大切なのだ。

豪雨対策のためのリフォーム

2024/09/02

今日は以前からリフォームのご依頼をいただいているHさんの家の調査へ。最近発生している豪雨の際に屋上のドレン排水がうまく機能せずに、家中が水浸しになるという事故が発生してしまったことに対する修繕工事の依頼である。屋上のドレン排水というのは、どうしてもゴミや葉っぱなどによって詰まってしまったりの事故が発生する可能性がある。ある一定の水量までは溢れることはないのだが、その屋根の構造によってはある水量が溜まってしまうと水が内部に侵入することになってしまう。Hさんの家では、緩勾配の板金屋根の上に水平なウッドデッキを構成するという珍しい屋上がある。(僕が設計したのではなくって、すでに亡くなられた建築家による作品である)板金屋根だから、繋ぎ目があるわけで、そこに水位が達したところから漏水事故が始まるわけだ。

ドレン排水の事故リスクを減らすには日頃のメンテナンスと、ドレンの個数を増やすことが有効だ。今後も予想される豪雨への対策をしっかりと計画して、これからも長く快適に住むことができる家にしてあげたいと思う。

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