増井真也 日記 blog

裏千家お家元による献茶式に参列

2019/06/29

今日は日光東照宮の裏千家お家元による献茶式に参列した。客殿と社務所は丹下健三氏による設計で、なかなか面白い建築である。この建築は大屋根が写真の角に見えるV字型の鉄骨柱によって浮かされており、それ以外に垂直力を受ける柱は存在しない。夜景だとよくわかるのだけれど、ガラス面が光っている上に屋根が浮遊している様子はその構造的な特徴をよく表している。神社建築というのは屋根の建築である。そもそも神殿というのもは神を祀る以外に用途はないので、いかに荘厳な雰囲気の中で空間を構成するかということに尽きるのだ。

献茶式は本殿において厳かに開催された。僕はといえば約1時間超の正座に身動きができないくらいの痺れ状態になってしまった。情けない限りである。

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ますいいではセルフビルドを推奨

2019/06/28

ますいいではセルフビルドを推奨しているのだけれど、その導入の程度については人それぞれで、ちょっとだけ壁を塗るだけの人もいれば、たまにはすごいセルフビルダーも現れたりする。今年の春に引き渡しをした荒川区の鉄骨造3階建て住宅のクライントであるSさんは、正真正銘のすごいセルフビルダーであった。リフォーム前の解体工事も自分でやろうとして、石膏ボードや下地の木を細かく切って袋に詰めていた。解体工事のようなつまらない作業を自分でやる人は珍しいのだが、Sさんは何でも自分でできることはやりたいという性格の持ち主であった。壁紙の仕上げ工事などのセルフビルドも引っ越しした後まで引き続き行っているから、つまりは石膏ボードの仕上げの状態で生活をしている。こういう状態で生活が始まるなど普通の人では我慢できないかもしれないけれど、Sさんにとっては別にどうってことはないのかもしれない。

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ネパールで出会った自分で自分の家を作っている人は、作っている途中のコンクリート5階建ての一部の躯体を利用して生活を始めていた。RCの建物を自分で作る、やっぱり日本とはちょっと違う。暮らしを営んでいる部屋にはサッシをつけて外部と仕切れるようにしているけれど、4・5階のまだ使っていない部屋にはサッシもついていない、いわゆる工事現場のような状態であった。しかもこの人が面白いのは、建築途中で工事予算を使い果たしてしまったので、この状態で購入してくれる人を探しているというのである。何と無計画なのかと思うけれど、日本人が計画的すぎるのかもしれないなアなんて思ったりもする。セルフビルドとは、なんとなく今の日本では失いかけたロマンチシズムのようなものかもしれないのである。

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南会津群にあるオグラさんを訪問

2019/06/27

朝7時福島県の南会津群にあるオグラさんを訪問した。オグラさんという会社は丸太でクリなどの国産広葉樹を販売していて、僕たち購入者は丸太の状態の木を選んで購入することができる。購入したら敷地内にある製材所で板に挽いてもらって、住宅の階段板やカウンター材として利用できるように製材してもらう。この状態では含水率100%の状態なので、雨を避ける風通しの良い小屋の中で半年から1年間乾燥する。そのまま天然乾燥を数年おこなってもよいけれど、これくらいの天然乾燥期間を経て、60度の低温乾燥で2週間ほど乾燥させれば、含水率は13%くらいまで下げることができる。こうなればプレーナーをかけてそりを取り、厚みをそろえれば現場で使用できるというわけである。

今日は合計で50万円ほどの費用をかけて丸太を購入し、製材などの作業を行った。この金額で購入した丸太を製材すると、サイズはばらばらだけれど約50枚ほどの板を手に入れることができる。この木が使用できるのは約半年から1年後であるが、乾燥後にひび割れが発生してしまうなどの仕上り状況の優劣によって価格を決定し、通常よりも格安でますいいのクライアントにお分けすることで、これまでよりもより良い家づくりにつなげることができることが何よりも楽しみであるのだ。

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丸太が保存されているヤードの様子。今日は栗が多く保管されている。

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栗の丸太を製材する。

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製材した後の栗の板。

設計中のMさんの家の打ち合わせ

2019/06/24

朝一番より群馬県前橋市にて設計中のMさんの家の打ち合わせ。Mさんは僕の大学時代の同級生のご実家である。出席番号一つ違い、4年間所属した理工ラグビー部や研究室まで同じだったわけだけれど、今回はご実家の建て替えに関するご相談である。今日は第1回目の基本設計プレゼンテーションということで、先日伺ったご要望に基づくご提案をさせて頂いた。多くのご意見を頂戴したので次回に向けてアレンジしたいと思う。

設計中のMさんの家の打ち合わせ

2019/06/22

14時より世田谷美術館にて石山修武講演会に参加。この講演会は世田谷美術館で開催中の企画展に合わせて開催されるもので、60年代ごろの学生運動のころに起きていた高山建築学校という運動に関するものである。今でもアリマストンビルの岡さんなどの手によって運営されてる建築学校だけれど、昔はもっと激しい人たちであふれていた。その一人が石山先生だったというわけだ。会場には町田分室の田村君と水原さんも来ていたが、総勢200名ほどであろうか、楽しい時間を過ごすことができた。講演のテーマは「高山建築学校の小野二郎、その後、ウイリアムモリスのアイスランドの旅・サガへの関心を中心に」というものであった。サガというのはモリスによる造語らしいけれど、つまりは風景の中にある何気ない地方や国柄や人柄などを示すようなものであるらしい。日本の原風景における祠とか、お地蔵さんとか、大きなご神木にまかれたしめ縄とか・・・。きっとそういうものたちだと思う。モリスが人の手による造形をテキスタイルなどの作品にして、それを産業にしたように、今の時代におけるサガがあふれている地域があるとすればそれはネパールである。僕も2回ほどネパールに足を運んでいるけれど、ここには世界のサガを造ることができるのではないかと思うような人的資源があるのだ。話の最後はネパールに関する紹介で締めくくられていた。僕自身も心してかかりたいと思う。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以下世田谷美術館HPより
ある編集者のユートピア
小野二郎:ウィリアム・モリス、晶文社、高山建築学校
開催概要
編集者にしてウィリアム・モリス研究家の小野二郎(1929-1982)が生涯を通して追い求めたテーマがユートピアの思想でした。弘文堂の編集者を経て、1960年には仲間と晶文社を設立、平野甲賀の装幀による本が出版社の顔となります。一方では明治大学教授として英文学を講じる教育者でもありました。晩年には飛騨高山の高山建築学校でモリスの思想を説き、そこに集った石山修武ら建築家に大きな影響を与えました。W・モリス、晶文社、高山建築学校の3部構成で小野二郎の”ユートピア”を探ります。

各プロジェクト打ち合わせ。

2019/06/21

朝礼終了後、各プロジェクト打ち合わせ。

12時過ぎ、六本木の日本木造住宅産業協会にて木造耐火建築の設計研修に参加した。この研修は木造で1時間耐火や2時間耐火の大臣認定を取得した壁・床・屋根・外壁等を構成し耐火建築物を設計できるようにしたものである。研修を受けた設計士が大臣認定の認定書を取得することで、確認申請を通すことができるという仕組みだ。耐火建築にするための基本的な考え方は、火や熱が木材の構造体に到達しにくいように石膏ボードの21mmという厚物を2枚貼りにしたりするという方法である。例えば、外壁の場合21ミリ石膏ボード2枚貼りの上に、透湿防水紙を施工し胴縁を付けたらラスモルタルで仕上げるという具合だが、内側も同じような考え方でべたべたといろいろなものを貼るのでどうしても壁が厚くなってしまうのが難点だ。とはいえ木造での4階建て住宅や、防火地域内での100㎡を超える建築計画などへの可能性が広がるのは大変利用価値があるのではないかと考えている。

帰りがけに東京駅の八重洲口にできた新しいオフィスビルを訪れた。この建物は竹中工務店が設計施工で造ったもので、プレキャストコンクリートを利用したものと思われる。道路に面した2階スラブが6mくらい跳ねだしており、跳ねだした部分の外壁には横ルーバーが取り付けられている。細部にわたり建築の意匠にこだわりぬいた姿勢が表れている建築で、とても見ごたえがあるものであった。ビルにおけるゼネコン設計部が面白い、というのはよく聞く話だ。個人のアトリエが大規模建築の設計を気合で乗り切ることができる時代ではない。多くの規制や様々な条件のコントロールは個人のマンパワーでどうにかなるものではなくなってしまっているなかで、ゼネコンの持つ人や経験が強みとなるのであろう。ますいいは小さなゼネコンである。ビルは作れないけれど、小さな建築における竹中工務店のような存在になれればよいなあの感である。

10年以上前に造った伊奈の家のメンテナンス訪問

2019/06/17

今日は10年以上前に造った伊奈の家のメンテナンス訪問をした。僕がまだ30代の前半だったころ、当時のスタッフの池上君と二人で作り上げた住宅である。ガルバリウムのシルバーとジョリパットの黒の二つのボリュームで構成されて、住宅棟とガレージがドアでつながっている。住宅部分には大きな土間が造られており、小上がり部分がリビングとして利用されている。大きな吹き抜けを介して一つの空間で構成されるワンルームのような住宅だが、様々な居場所が設えられていて面白い。吹き抜けにある梯子を上ると屋根に出ることが出来る仕掛けもある。当時セルフビルドで塗った壁の漆喰もまだまだ綺麗な状態を保っている。木製のガレージシャッターは毎年1回、自分自身で塗装しているそうだ。セルフビルドを行った人はこんな風にメンテナンスができるようになるのも良いところなのだ。

メンテナンスの内容としては、外部のお色直しという感じである。外壁のジョリパット仕上げは真っ黒だったものが紫外線でグレーっぽい色合いにまで色あせており、これがなかなか色っぽい表情であるのだが、とはいえこのまま放置するわけにもいかないのでそろそろ再塗装の見積もりを行うことにした。屋根も一部補修を施すことに。まずはお見積りを作成しよう。

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各プロジェクト打ち合わせ。

2019/06/15

朝礼終了後、各プロジェクト打ち合わせ。

14時より埼玉県坂戸市にて設計中のYさんの家の打ち合わせ。今日は実施設計第1回目の打ち合わせということで、1/100から1/50に拡大した平面詳細図と断面詳細図を用いての打ち合わせを行った。この住宅はほとんど平屋のような住宅で、一部子供室だけが2階に配置されている。2階と1階のリビングは吹き抜けでつながれていて、その吹き抜けには薪ストーブが置かれる予定だ。LDKは横並びで配置されていて、どこにいても庭を眺めることができるようになっている。庭は家族の意識の中心として存在しており、野菜を育ててたりの営みの中で季節の移ろいや家族の成長を感じることができるような場を目指しているのである。

16時、東京都台東区にて新築住宅を計画中のMさんご家族来社。今日は土地の契約に向けた諸々のご相談である。家の計画に向けて準備しておくことはないでしょうか?のご質問に対し、「あんまりショウルームとかにはいかないほうが良いですよ」のお返事、続けて「どのような家に住みたいかのイメージを固めるために、北欧の建築家のアールトとか、アメリカの建築家のルイスカーンとか、そういう名作を眺めてみてはいかがですか。最近の住宅メーカーや設備メーカーの流行りを無視して、本当に価値があると歴史が語っているようなものたちから理想を探す作業が良いのでは」のご提案をした。実はこれ、僕たちにも同じことがいえる。カタログばかり見ているとどうしても、メーカーの事情に毒されてしまうのである。

各プロジェクト打ち合わせ。

2019/06/14

朝礼終了後各プロジェクト打ち合わせ。

12時、東京駅八重洲口にて石山修武先生と待ち合わせ。待ち合わせの時間を10分ほど過ぎたところで、なんとなく心配になりご自宅にお電話するが、奥様とお話しするも予定に変更はない旨を伝えられる。高齢といえば高齢、若いといえば若い70代半ばの先生が、しかも時間に遅れたことなどない先生が来ないというので心配してしまったけれど、しばらくしていらっしゃった。何事もなく無事で何よりであった。

そのまま二人で上野まで移動し常磐線に乗り、一路我孫子市の天王台へ向かう。ここには真栄寺という浄土真宗のお寺があって、今日はその寺の和尚、馬場昭道さんを訪ねることが目的だ。馬場昭道住職は、檀家さんがいない全くのゼロ状態からこのお寺を造ったという、今の時代にはとても珍しい住職さんである。本堂には碁を楽しむ老人たちがいる。僕たちを見た瞬間、碁をやりに来たのかと思ったようで、なんだあ違うのかの声が聞こえた。奥にある住まいの方へ移動すると、2階の和室に通された。和室には4枚のふすまに金子兜太さんの俳句が大きな字で書いてある。昨年お亡くなりになった現代俳人の代表者である。その部屋で住職は何するでもなく座っている。石山先生もドカッと腰を下ろした。これから禅問答でも始まるのかなあと感じるような二人の素振りの中で、僕は神妙に正座をしていた。

「なんだかなあ、今日は何ですかああ?」住職の空気が抜けるような声が響く。

石山先生が一生懸命に話をしている様子も、普段ではあまり見ることができない珍しい様相だ。僕は聞かれたことだけ短く答えていたが、次第に住職の底なしの懐に吸い込まれるような気分になり、いろいろなことを思いつくがままにお話しさせていただいた。こういう僧侶にお会いするのは初めての経験である。僧侶とはこのようなものなのか、僕にとっては何とも言えない驚きを感じた。宗教、悟り、・・・言葉の意味は分かるけれど、いったい何のことだかわからないことだらけのなかで、もしかしたらこんな風に心を落ち着け、まるでそよ風のような言葉を、でもまっすぐな言葉を発することで人の心の何かを変えてしまうような・・・そういうことができることが宗教なのか、僧侶というものなのか・・・そんな感覚を短い時間の中で感じることができたのである。住職は世界100か国以上を旅したそうだ。その若い頃の記録を一冊の本にまとめてあるというのでいただいてきた。宛名に増井真成???せっかくの名前が間違ってはいたけれど、大切に拝読したいと思う。

自宅兼ギャラリーの現場管理へ

2019/06/13

朝礼終了後、自宅兼ギャラリーの現場管理へ向かう。きょうは大工さんたちが鉄骨のブレースを取り付けている。木造に鉄骨のブレースを取り付けるなどということはめったにないが、この建築は細長い建物のちょうど真ん中のあたりがえぐられるようなプランをしているために、その最も細くなっている部分にブレースを取り付けないと全体の剛性がNGになってしまうのである。ブレースの形状は写真の通り、鉄板に一面につき8か所程度の穴が開いているが、それと同じ位置に梁の貫通孔を開けてボルトを通すという作業である。ほんの少し角度がふれただけでボルトは穴を通らない。そうするとまたブレースの金物を外して穴をあけなおし、再び合わせてボルトを通す…。気の遠くなるような作業の結果何とか取り付けることができました。大工さん有難う、心からの感謝である。

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ますいいの勉強会

2019/06/11

今日は17時よりますいいの勉強会を行った。4つのテーマに沿って5か月間にわたり行ってきた勉強会も今日で最後である。次回は発表と好評ということで一つの区切りを迎えることとなる。勉強会のテーマは以下の4つだ。

・川口裏路地計画
旧市街地である川口市本町エリアを中心とした街づくり。銅板葺きの外壁を持つ洋品店など魅力的なスポットを抽出し、それぞれに対してリノベーションなどの可能性を探る。その土地にあるアイコンとなるような意匠をちりばめることで、町に眠っている歴史的な価値を再出させる。
→このテーマではこのエリア内でのシェアハウスの設計を行いながら、そのプロジェクトが街の活性化につながるような仕組みを考えている。その仕組みがシェアハウスの意匠を造る要素となることを目指している。

・寺院や神社に対して建築ができる事
寺院を構成している要素に対して建築が役立つことができる可能性を探る。
→塀の工事を予定している寺院で実際に取り組む計画のスタディーである。ただ単に塀を作るのではなく、地域住民や檀家が集うことができるような仕組みとすることはできないか、道行く人が寺に興味を持ってくれるような仕掛けのある塀とすることはできないかなどのスタディーを行っている。また、それ以外の部位についても檀家とともに取り組むことができる事例を生み出すことを目指している。

・建築におけるプロダクトデザイン
→ベニヤ板や段ボールなどの素材を利用して実際に1/1モデルを造る。

・新しいシェアハウスの形を考える
→職と住をうまく組み合わせた形の提案を目指す。

どのテーマも普段かかわっている実際のプロジェクトと関連しているので、リアリティーを持った検討ができるし、そのアイデアを実際のプロジェクトに落とし込むことでさらに魅力的な建築を造ることにつながるであろう。日常の仕事に忙殺されながらも、たまにはこうしてアイデアを絞ることに意識を割くことはとても大切なこと。今日も有意義な時間を過ごすことができたと思う。

各プロジェクト打ち合わせ。

2019/06/10

朝礼終了後各プロジェクト打ち合わせ。

ますいいでは古い木造住宅のリノベーションを手掛けている。現在も古い建売住宅を2棟リノベーションして、シェアハウスとして利用できるよう計画を進めている。このような事例では雨漏りやシロアリの被害などが発生しているケースが多く、また耐震強度が不足しているケースがほとんどなので、性能面でのメンテナンスや耐震補強などを適度に行いながら、魅力的な空間を作っているというバランス感覚が求められる。

両国のリノベーションでは、まるでますいいのような設計施工の工務店を営んでいたお父様が造った古い住宅を大切に使い続けているご兄弟のために、今後も快適に暮らし続けることができるようなリノベーションを行った。もともとは小さな部屋に区切られている間取りをなるべく開放的な一体空間とし、天井をはがした結果現れた屋根の下地をそのまま現しとして、さらに大きな大空間を生み出している。この操作は古い建築のリノベーションでの常套手段だが、天井をはがした結果現れる屋根の下地があまりにもひどい場合は利用できないので注意が必要である。構造体の柱などには仕口の欠き込みが多数見受けられるので、適度に埋木等の処置を施し美化することが必要であるが、こういう傷跡はリノベーションにとって最大の魅力ともなるので大切にしたい。

現在計画中のリノベーションはこの事例よりもさらに古い建築だ。すでにシロアリの被害も見受けられるので覚悟して取り掛かりたいと思う。

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昨日に引き続き京都滞在。

2019/06/08

昨日に引き続き京都滞在。今日は京都東急ホテルに移動して裏千家の会合に参加した。茶道の一つの流派に運営に協力し様々な行事に参加しているわけだけれど、僕にとってはとても良い事情がある。最も大きな一つには京都生まれでもなく、関係者でもない僕のような凡人が、普通では見ることができないような建築の中に実際に足を踏み入れ、その空間を体感することができる。昨年はなんと大徳寺の密庵に入らせていただいたし、利休が造った茶室として現存する待庵も観ることができた。一人の観光客として観る事しか許されなかったかった建築を体感できる喜びは、この仕事をしている人なら十分に理解していただけるであろう。

地元の大きな建設会社を造ったメンバーの一人で、僕が大好きな80歳の老人がいる。なんとこの人はいまだ現役で、工事現場を歩き回っているのだが、この人物の口癖は職人を育てろ!!という言葉だ。僕はこの言葉を聞のが好きだ。僕たち設計者は建築のあるべき姿を考え、それを造ることができる職人を育てなければいけないということだけれど、これは簡単なことではない。これはバーチャルの世界での話ではなく、本当に生身の人間の心をつかむ話である。建築の理想を共に感じ、同じ方向を向くことができる職人を育てるには、その人の心を動かすような言説や思想が必要だ。そして細やかなコミュニケーションも重要である。

理想を描くには理想を体感しなければいけないと思う。自分が体感した物以上のものを造るのはおそらく無理なのだ。

朝礼終了後、京都へ。

2019/06/07

朝礼終了後、京都へ。14時、修学院にある唐長さんという唐紙屋さんを訪れた。店につくと奥様が出迎えてくれた。前回がご自宅の方にお邪魔したが、こちらのお店が昔から住み続けてきたご自宅らしい。何回も増築を重ね少しずつ広げてきた住宅である。その工事の跡がかすかにわかるけれど、でも建築が大好きな奥様のセンスでアンティークモダンの素晴らしい空間が出来上がっている。

この唐紙屋さんは江戸時代から続く唐紙の老舗である。江戸時代から受け継いだ400年前の型を使って、鳥の子に文様を写している。鳥の子というのは和紙の種類で、唐紙に使用される丈夫な紙のことだ。泥絵の具を水で溶き、それを型に塗って和紙をのせ刷り込むという一連の作業を正確に移動しながら一枚の型紙を仕上げていくのである。今回は埼玉県桶川市にて進行中のAさんの家で使用する予定の花兎なる唐紙を拝見した。この文様は中央アジアから渡来した文様で、美しい月に行くことを願った人々が、その思いを兎に託して造ったものらしい。ピンクがかった綺羅の地にうっすらと浮かび上がる文様がとてもきれいな唐紙である。出来上がるのがとても楽しみなところなのだ。

各プロジェクト打ち合わせ。

2019/06/06

朝礼終了後各プロジェクト打ち合わせ。

11時、現在工事中のMプロジェクト現場打ち合わせ。1階部分が鉄筋コンクリート造、2階3階を木造で造っている僕の自宅兼ギャラリーの工事現場である。1階部分にはURの土地返還の関係で閉鎖を余儀なくされてしまったMASUII RDRギャラリーを再開するためのスペース、茶室を設け、2階から上部は住宅に利用する予定である。冬ごろにはお披露目ができると思うので楽しみにしていてください。

現場は川口駅からほど近い場所、今は上棟して大工さんの工事の真っ最中というところだ。今日は鉄筋コンクリート用のサッシの取り付け位置を示す墨だし作業を、田部井君と高本君と一緒に行った。鉄筋コンクリートの工事現場は、木造中心のますいいでは珍しい。僕はもともと戸田建設というゼネコン出身なので、逆に若い頃に慣れ親しんだ工法なのだけれど、木造しかやったことが無いますいいのスタッフにとっては、雲をつかむようなわからないことがたくさんある現場である。

サッシの取り付けもその一つ。木造ならば大工さんが勝手に作業を進めてくれる部分なのだけれど、RCの場合は現場監督が正確に位置を出してあげないとサッシ屋さんは取り付けることができない。何でこんな風になってしまうのかといえば、それは職人さんの経験の問題である。大工さんの場合、昔は手刻みをして上棟して、サッシをつけてといった一連の家造りの作業全体を統括していた存在であり、現場監督などいなくとも家一軒を造ることなどたやすいことだったわけだが、RCの現場では昔からサッシやさんが監督さんの指示に基づいてサッシを取り付けることが慣例なわけで、監督が指示をしないと何にも先に進まないのが当たり前なのである。17時ごろすべての作業を終えて帰事務所。なんだか楽しい一日であった。

階段の防腐剤塗装の続き

2019/06/05

朝一番で階段の防腐剤塗装の続きを行う。一年に一度のクレオソートの塗装工事は枕木製の階段があるますいいリビングカンパニーでは恒例行事である。木というものは水分と空気と適正な温度の条件がそろってしまうと腐食する。でも腐食を防止することができる薬剤を塗布すればそれを止めることも出来るというわけだ。大きな階段のすべてを塗装するのはなかなかの仕事である。最後の仕上げは新人の高本君に任せることとした。

10時、草加市水道局にて協議。古い給水引き込み管なので布設替えの工事を行わないといけないという見積もりを業者からもらっていたのだけれど、水道の引き込み工事を行わなければいけないのかそうではないのかについての協議を行った結果、水道業者とは違う見解、つまり無理に行わなくともよいという見解に落ち着くこととなった。やらなければいけないという指導が、どちらでもよいとなるケースは初めてである。やっぱり自分の耳で聞いて判断することは何よりも大切なのだなあの感だ。

14時、神社の境内に造る施設について某神社にて打ち合わせを行う。

夜、高本君とそのお兄さん、そしてお兄さんの務める会社の社長さんと一緒に会食。左官屋さんの御両人はとても人がらの良い同世代の職人さんだ。こういう人たちとの出会いは何よりも大切なもの。今後の良きお付き合いを期待したい。

大宮の氷川神社にて茶会の席主

2019/06/02

今日は大宮の氷川神社にて茶会の席主である。年に一度の献茶式という行事の中での立礼席を持つということで、一緒に活動している仲間とともに茶席を運営する。一回の席に50名のお客様が入り、それを10回も繰り返すのだからさすがにへとへとに疲れるわけで、設営をしているメンバーが全力投球でのおもてなしをするわけである。茶道の精神と、大寄せの茶会との間のなんとなく感じるギャップはあるものの、僕の場合は多くの人々に出会うことができて、しかも年々繰り返していくうちに知っている顔が増えて、話をしてくれる人も増えて、なんとなく親しみを感じる人が増えていくというような現象を心から楽しむことができる性格なので、これはこれでよいものだなあなどと感じながら一日を過ごさせて頂いた。

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現場進行中のAさんの家の打ち合わせ

2019/06/01

10時、埼玉県桶川市にて現場進行中のAさんの家の打ち合わせ。今日は設備器具関係の詳細について最終確認を行った。

ますいいでは造作のキッチンを造ることが多い。造作キッチンは安価なシステムキッチンよりお金がかかる場合が多いけれど、高額なシステムキッチンよりは安くできるので、こだわりのデザインを予算内で実現したい場合などにはなかなか良い手段である。通常は大工さんに木製の箱を作ってもらい、そこにステンレスの天板などを施工する。場合によってはモルタルの天板などを左官屋さんに塗ってもらう場合もある。扉などの造作は建具屋さんの出番だ。簡単な引出しなら建具屋さんに作ってもらうことも出来るけれど、やっぱり造作の場合は開き戸のほうがコストを抑えられる。

下の写真は草加市に造った住宅のキッチンだ。木製の本体は白く塗装を施している。天板はステンレスで、コンロは反対側に独立して配置している。造作キッチンの場合はこのようにシンクとコンロを別のスペースに取り付けることも可能なのでプランのバリエーションが広がるというメリットもあるのだ。

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