水や砂・藁すさを良い塩梅で混ぜ合わせ塗りつけると、求める風合いを出す左官仕上げとなる
土壁を作る場合、竹小舞下地を使用している伝統建築物は別として、一般木造住宅の場合、下地には杉の細材を釘打ちした木ずり下地を使用する。最初の層には半田という漆喰まじりの中塗土か漆喰を塗り、さらに中塗り土を薄く塗り重ねていく。場合によっては、中塗土に麻紐を釘に結びつけた尺とんぼや井草を伏せこんで補強する。これで仕上げとすることもできるが、上塗りを施す場合は仕上げ用の細かい藁を混ぜた上塗り土を塗って、ふわっと軽やかに仕上げる。
木ずりというのは飛鳥時代から続く下地の一つである。杉や檜の細材(厚さ15mm、幅30mm)を9mm間隔で釘打ちし、この上に約30mmほどの土や漆喰を塗って壁を仕上げる。土壁の土は、下塗土、中塗土、上塗土の三種類がある。下塗土はその土地で取りやすい粘土混じりの土で、関東では荒木田が有名だ。中塗土は下塗りと同じ土か、地場の粘土を使用する。上塗土は聚楽土や稲荷山土のような良質の土を篩に通し、最も細かい粒子にして使用する。どの土も水・適切な大きさにほぐした藁すさ・砂を混ぜて醗酵させて使う。
土壁は自然界に存在するものだけで塗られている。左官職人の高い技能によって、水や砂・藁すさを良い塩梅で混ぜ合わせ塗りつけると、求める風合いを出す左官仕上げとなる。カタログで選ぶ工業製品にはない、職人の手による仕上げの無限の広がりがあることこそ、土壁の魅力といえるだろう。