増井真也 日記 blog

今日は石山修武先生の傘寿のお祝いが鳩山会館にて開催された。

2024/03/30

今日は石山修武先生の傘寿のお祝いが鳩山会館にて開催された。会場には伊豆松崎町の方々や、石山研究室OBの方々など総勢100名程度が参加していた。石山先生を知らない方もいるかもしれないのでご説明すると、ますいいリビングカンパニーの生みの親である。工務店機能を兼ね備える設計事務所というのは石山先生から生まれた形態だ。住宅建築においては、建築家が独りよがりの美術作品を作るのではなく、一人ひとりの施主に寄り添って施主による工事参加や設計への参加を受け入れながら、一緒に家づくりを楽しむような建築家であるべきである、というのが石山先生の考えだ。そしてそれを社会の中で初めて実践したのがますいいリビングカンパニーというわけなのだ。当時のますいい本社の建設を担当していただいた土谷さんは、大成建設の設計部である。23年ほど前の懐かしい面々と再開できたとても心地よい時間であった。

終了後の建築イベントとして建築家の佐藤研吾氏を招いてのミニ講座と、ますいいのスタッフ全員とのディスカッションを行った。

2024/03/29

今日は1年に一度の経営計画発表会を開催した。2024年度はますいいリビングカンパニーがスタートして30年の節目となる。僕が2000年から住宅部門を立ち上げてちょうど24年目、これまた節目となる年なのである。24年というのは長かったようで、でもあっという間でもあった。石山修武先生との協働で立ち上げた工務店機能を兼ね備える設計事務所としてのモデルは、アレクサンダーの言うアーキテクトビルダーに通じる新しい住宅建築と建築家との関わり方である。50歳からの10年間は、さらに深いものづくりを進めていける体制づくりに取り組んでいきたいと考えている。

終了後の建築イベントとして建築家の佐藤研吾氏を招いてのミニ講座と、ますいいのスタッフ全員とのディスカッションを行った。2時間30分があっという間に過ぎてしまうとても楽しい時間であった。

そして身近なところから土壁などの伝統的構法の実践をしてみようと試みている。

2024/03/28

現存する遺構から判断して、左官構法の起点は法隆寺金堂の壁画の下塗りである。飛鳥時代から続く長い歴史と伝統を持つ左官であるが、左官工事量は工事の絶対量、相対量のいずれも減少している。建築工事全体に対する左官工事業の完成工事高が占める割合は、近年は概ね1%前後で推移している。業種別の就業者数に関しても令和3年で27634人と全体に対しての構成比で0.6%、前年度比では-23.5%と大幅に減少した。

左官はこのまま滅んでもよいのか。いやそうではない。

住宅の壁仕上げとして左官仕上げの持つ美しさ、自然材料を原料とすること、壁の持つ調湿作用等のメリットは非常に魅力的である。現在では多くの左官仕上げが健康志向の住宅に採用されており、その総量も増加している。しかしその多くは、水と混練するだけで手軽に材料が出来上がる既調合漆喰等の新建材を採用する傾向が強く、伝統的左官仕上げを採用することは稀である。その理由としては、伝統的左官工事は手間と技術を要するため、他の仕上げ材料や技術と比較してコストが高くなりがちであるということである。特に、熟練した職人による手作業が必要な工法では人件費が大きな割合を占めることが挙げられる。また伝統的な技術は、乾燥や硬化に時間を要することが多く、建設プロジェクトのスケジュールに影響を与えることが多いことも理由の一つだ。さらに現代社会は熟練した左官職人の数が減少しており、このため適切な技術を持つ職人を見つけることが困難になっていることも理由となっている。

そこで僕は4月から左官に関する研究をするためにものつくり大学の大学院生になることを決めた。今後の研究を通して左官の盛り上がりに貢献したいと思っている。写真は弊社のトイレに塗った土壁の様子である。素材は淡路島の土に藁を混ぜたのみ。とても素朴で良い風合いに仕上がった。

今日は石山修武先生率いる「窓計画」の打ち合わせのために、早稲田大学の松村秀一先生の研究室がある喜久井町キャンパスにお邪魔した

2024/03/25

今日は石山修武先生率いる「窓計画」の打ち合わせのために、早稲田大学の松村秀一先生の研究室がある喜久井町キャンパスにお邪魔した。松村先生とは石山先生のご縁で東京大学時代の研究室にお邪魔したり、建築士事務所協会の全国大会で米子に出向く際に同じ飛行機で同じホテルというご縁だったり、はたまた住まいのリフォームコンクールの授賞式で審査員として賞をいただいたりと何かと最近お会いしているのだが、今日は「窓計画」の出展打ち合わせである。「窓計画」というのは、石山先生により呼び掛けられて集まった建築家と彫刻家と工務店による展示であり、各々がこれからの未来を見据えた計画を発表するものだ。ますいいリビングカンパニーは工務店機能を兼ね備える建築家集団としての22年にわたる取り組みと、これからの未来を展示する。

工務店機能を兼ね備える建築家の意味とは何か。これはますいいを定義することでもある。ではその対立軸にあるものはといえば、設計のみを行う設計事務所と建設会社による協働方式、はたまたハウスメーカーやパワービルダーのように同じ形式を作り続ける大量生産方式である。大量生産方式はすでに終焉の時代を迎えつつあるので省くとして、建築家による設計との違いをいくつか述べる。
まず大きな違いは、工務店機能を兼ね備える建築設計事務所であるますいいの場合は、10年保証ができるしっかりとした建築しか作らないということである。設計者のエゴで雨漏りをするような危険な納まりを採用したりはしないことがとても重要だと思う。また社員大工による施工を行なっていることで、設計と施工が阿吽の呼吸でもの作りに向かうことができることも大きな特徴である。これは他の職人さんたちも同じことで、たとえば左官屋さんや屋根屋さん、建具屋さんのような手に職の方々と設計者が阿吽の呼吸でものつくりを行うことができるというのは、とても理想的な状況だと言える。他にも山から購入した木を設計者が目で見て設計に取り入れたり、それをそのまま施工に使用できたりの材料との距離が近いことも挙げられる。そして最後にはやっぱりものつくりの現場を知っている設計者による設計の方が良い設計ができるということであろう。(もちろん設計事務所でも現場を熟知している設計者もいる。)これからの未来ではこんなこともできたら良いなの理想を提示したいと考えている。住宅に関わる理想的な環境を創造するための取り組みをさらに深く追求する良い機会としたい。

こんなところに2世代にわたる建築家の意匠が残されているのである。

2024/03/23

今日はホテルオークラにある山里という茶室を訪問した。実はこの茶室の運営をしているのが僕の師匠なのである。この茶室は谷口吉生先生による設計で、数年前の建て替えの時に綺麗になったのだけれど、建て替え前の部材を洗って利用しているので新築とは思えないような経年変化をした部材が点在している。天井に特徴があるが、これらの部材も古いものを生かしているそうだ。父、谷口吉郎氏と親子2代にわたる設計をしたことで有名なホテルオークラだが、こんなところに2世代にわたる建築家の意匠が残されているのである。

能登半島地震が起きて以降、関東地方でも地震が増えてきているように思う。これからは古い住宅の耐震診断が増えると思うが、なるべく安全な建物を増やしていきたいと思う。

2024/03/22

現行の耐震基準は、1981年に改正された建築基準法がベースとなっている。81年より前を「旧耐震基準」、81年以降を「新耐震基準」と呼んでいる。さらに2000年に「基礎」「柱梁や筋交の接合部」「壁のバランス」に関する告示が示された。これは「2000年基準」と呼ばれていて最も強固に建てられている可能性が高い住宅となる。いわゆる耐震診断補助金などは旧耐震基準で建てられた建物に適用されることが多いのだが、熊本地震では新耐震基準や2000年基準の建物も倒壊してしまった。具体的な数値としては、新耐震基準が73棟、2000年基準は7棟倒壊、崩壊している。

被害が大きくなってしまった建物にどのような理由があるのか。その一つに、壁位置の上下不揃いが挙げられる。倒壊した耐震等級2で建てられた建物では、耐力壁の直下率が極端に低かったそうである。通常の耐震診断をした場合はこの直下率に関しては調べることができるのでなるべく直下率を高めるように耐震補強の計画を立てることも大切となるだろう。

壁の配置に偏るがある場合も要注意である。建物の剛心と重心の位置が離れている場合はその位置が近づくように補強壁を増やしてあげると良い。

1981年以降2000年基準以前の建物では金物の使用方法が明確に規制されていなかったために、異なる金物がついていたり、向きが違っていたりの間違いも多い。筋交金物の場合は断熱材をどかしたりすれば見れることが多いのでなるべく確認して是正することで適正な強度がえらっるようになるだろう。

そのほかにも筋交に断面欠損があったり、はたまた極端に急・もしくは緩やかな筋交だったりする場合もある。大きな節があればそこから筋交が壊れてしまう可能性もある。こういうことに気がつけた場合はその節の部分に補強のための添木をするなどの対応だけでぐーんと強度が向上する。予算が少ないから1階だけを補強する場合もあるが、これもできれば上下共に補強した方が良い。どうしてもできない場合は1、2階ともに0.8にするなどあまり強度の差をつけないようにすることも大切だ。

能登半島地震が起きて以降、関東地方でも地震が増えてきているように思う。これからは古い住宅の耐震診断が増えると思うが、なるべく安全な建物を増やしていきたいと思う。

2世代にわたる住宅のご依頼、22年もやっているとこういうことが起きるのだなあとなんとも感慨深いひとときであった。

2024/03/20

午前中、埼玉県さいたま市にて計画中のOさんの家の打ち合わせ。今日は減額案のご提案を行った。

午後、モデルハウス見学のご説明。このモデルハウスを作ってから多くの方々にお話をさせていただいている。特徴としては、
・国産材の檜と杉の構造材
・ベニヤ板を一枚も使用していない健康住宅であること
・LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)の認定を取得しているエコロジカルな住宅であること
・左官の技術にこだわって、木ずり土壁やラスボードの上の本漆喰仕上げなどの伝統的な工法を採用していること
・街並みの印象をちょっと良くするような普通のデザインであること
である。リビングには薪ストーブが設置されていて、この時期はとても良い。大きなガラス面から見える炎を眺めていると、あっという間に時間が過ぎてしまう。まるで焚き火の炎を眺めているような感覚になる。家の魅力というのは何か一つの要素があれば良いというものではなく、こういうものたちのバランスと全体的な調和によって生み出される。このモデルハウスはその調和がとてもバランスよくとれているのだ。

夕方、三角の家の施主の田中さんと会食をした。僕が20年前に作った住宅の施主さんである。三角形の敷地に建つ三角形の住宅、当時のローコスト住宅最盛期に設計したとても思い出深い作品だ。妻も一緒に3人で楽しい時間を過ごさせていただいたが、なんと当時4年生だった可愛いお嬢さんがご結婚されてお母さんになり、今度はそのご家族のための住宅を相談して頂けるとのサプライズであった。2世代にわたる住宅のご依頼、22年もやっているとこういうことが起きるのだなあとなんとも感慨深いひとときであった。

住宅作家を目指す夢を持ち続けていれば、必ず一人前になれる時が来る。設計の力、生産に関する見識、素材を学ぶこと、資格、・・・このいくつかの条件を自分を信じて身につけること、そしてまた夏休みにおいでね

2024/03/15

今日は関西学院大学の2年生インターンシップ最終日、今回は二人の大学生が1週間の体験をしてくれた。今回のテーマは、とある住宅設計の温熱環境シュミレーションと1/30の模型作成である。3回目と2回目の参加ということもあって、だいぶ慣れてきているようで作業もだいぶスムーズに進んでいる。

将来の仕事として住宅設計をやりたいという学生はたくさんいる。でも工学部建築学科は必ずしもそれに対して前向きは教育をする人たちばかりで構成されているわけではない。これは仕方がないことである。そもそも大学で建築を扱い始めた理由は、木造建築しかなかったこの国において西欧のコンクリートや鉄骨の技術を学び高度な都市型建築物を作る人材を育てることを目的としているからである。

しかし時代は変わり、逆にこの国の風土にあった建築を作る技術者が不足し、高度な建築を扱うゼネコンがあまり気味である。風土に合った住宅に暮らしたいと願う人々に対してそれを供給するには、設計と素材、そして職人が欠かせない。それをマネジメントする総合的な技能を身につけるには、設計の教育、生産の教育、そしてそれらをまとめ上げる人間力の教育が必要となる。

住宅設計を行う場は少ない。ハウスメーカーや分譲会社は論外である。アトリエは一人の作家性を学ぶことはできるが、そこで働き続ける環境ではない。ますいいはそれができる唯一の場であると考えている。建築家として設計を行い、施工のマネジメントを行うことで住宅をやり続ける自由を手に入れられるのである。

今朝、二人には「住宅作家を目指す夢を持ち続けていれば、必ず一人前になれる時が来る。設計の力、生産に関する見識、素材を学ぶこと、資格、・・・このいくつかの条件を自分を信じて身につけること、そしてまた夏休みにおいでね。」の言葉をかけさせていただいた。また再開しよう。

Iさんが毎日論文を書いている1階のリビングの机の周りと寝室のベッドの周りを、上部構造が崩壊しても潰れることのないように補強するという計画を検討している

2024/03/05

今日は近所に暮らすIさんの家にて耐震シェルターの打ち合わせを行った。Iさんは僕の日記にも度々登場する千葉大学の名誉教授である。とても古い木造住宅に暮らしているが、昨年は洪水発生時の避難施設に使用できる避難観測所なる建物を建設した。(この計画では担当した古市渉平さんと佐藤研吾さんのおかげでAND賞という構造計画の賞をいただくことができた)
今回はIさんが毎日論文を書いている1階のリビングの机の周りと寝室のベッドの周りを、上部構造が崩壊しても潰れることのないように補強するという計画を検討している。いわゆる耐震シェルターである。建物全てを耐震補強することと比べればだいぶ安価で行うことができるであろう。今後の展開を楽しみにしてほしい。

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