春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえて冷しかりけり
2023/03/19
日曜日。今日は所属している裏千家青年部の総会に参加した。コロナの規制が解けて3年ぶりのリアル開催である。裏千家茶道というのは、現在の千宗室お家元を頂点とする立派だが、僕は縁あって35歳の時からこの流派で茶道を嗜んでいる。元々のきっかけは、鵬雲斎大宗匠の講演会を拝聴したことであった。自分が建築家として生きていく中で、日本人としての文化的なアイデンティティーを芯に据えた上で活動していきたいと感じたからである。元々そういう人間だったのかといえば全くそんなことはない。元々は49年生まれにありがちな暮らしぶり、ロックを聴き、英語の勉強はするけれど国語の勉強はしない、理系は好きだけれど歴史などは苦手・・・、そんなタイプだった。大学を卒業し、働き始め、35歳というのは文化との出会いとしてはちょうど良い時だったのかもしれない。僕は引き込まれるようにその世界に入ることができた。これまで目にしたことはあるけれどそいの用途が全くわからない、例えば棗とか建水などなどの道具についても知識を得ることができた。焼き物の数々も観れば窯元がどこかまで想像することができる位の目を養うこともできた。
今日の講演会は筑波大学の石塚先生をお招きしての講演会であった。石塚先生は国語の先生である。今日の講演のテーマは和歌。この僕が和歌である。これまで全く興味のなかった世界観だけれど、なぜだかスーッと入ってきた。そして面白いと感じることができた。短い言葉の中にある思いを封じ込める行為は実は無限大の広がりを持っているのかもしれない、言葉だけは何にも左右されずにどこまでも表現できるという感覚を覚えたのである。
・・・家に帰り石塚先生の本を手の取って読んでみた。「茶の湯ブンガク講座」その中に川端康成「うつくしい日本の私」という章がある。ちなみにこの題名はノーベル文学賞を受賞したときの受賞スピーチの題である。その章の中に
春は花夏ほととぎす秋は月冬雪さえて冷しかりけり
という道元の和歌が記載されている。四季の自然の情景をただ4つ並べただけの無造作な歌だけれどその中に自然を愛おしむ日本の良さがあるとのこと、これこそが茶の、というより人としてとても大切なことだと思うのだ。この短い言葉の中に世界を変える力があるかもしれないと思えるくらいに、何か響くものがあったのである。
・・・この章を読んで井上陽水「夢の中へ」の歌詞が浮かんできた。探し物はなんですか、見つけにくいものですか、・・・今日は楽しき仲間たちとの集いの時間を大切にできて本当によかったと思えた1日であった。