建築に関わる僕たちの次の仕事は、実はこの広がりすぎた開発を縮小することなのかもしれないと思う。
昨年の夏はノルウェーのオスロの北側にあるヘルシンキ郊外にある小高い丘の上にある小さな小屋に泊まった。個室が3部屋ほどある、ちょうど良い小屋だった。部屋の真ん中には薪ストーブが置かれていて、部屋の前にはウッドデッキ、その上には焚き火スペースが配置されていた。極北の地だから夕方になると真夏でも肌寒くなる。外に出て焚き火をしていると、カランコロンと音がする。なんだろうと思っていると遠くの方から羊が歩いてきた。放牧されている羊が、普通に周りに歩いているのだ。日本もこんな国だった時があったのだろう。今の日本では地方の僻地までアスファルトの道路が整備され、どんなに田舎に行っても人が暮らし電気や水道が整備されているが、この国は人が住める地域以外は水も電気もない。こんなにも開発の状況に差があるのは、ノルウェーには人口が500万人しかいないからと言い放ってしまうのは簡単だが、当時の日本人の考え方にとにかくどこまででも開発をしなければ気が済まなかった気質というのもあったのだと思う。日本列島改造論などは、その典型的な思想だろうが開発=経済発展が、未来永劫継続するということは困難であることはすでに皆が気づき始めている。一度開発した大地が魅力的な自然に戻るのか、きっと戻す努力をしなければ戻りはしないだろう。建築に関わる僕たちの次の仕事は、実はこの広がりすぎた開発を縮小することなのかもしれないと思う。