増井真也 日記 blog

僕は壊さない建築家、つまりリフォームをとても大切にしている。

2023/01/28

埼玉県川口市にて工務店機能を兼ね備える建築家として、自然素材を大切にしたデザインで注文住宅・古民家再生を行っています。(分室 東京都町田市・群馬県高崎市)
午前中は埼玉県さいたま市にて計画中のMさんの家のリフォーム打ち合わせ。最近は古い住宅をリノベーションして暮らすと言う事例がとても増えている。そして僕は壊さない建築家、つまりリフォームをとても大切にしている。建築費の高騰も原因の一つだと思うけれど、住宅寿命が伸びていること、古いものを大切にしようという思いを持つ人が増えたことも原因なのだろう。

そもそも、日本人は短期間に住宅を壊し過ぎてきた。これは多くの社会資本を自らの手で壊してきたとも言えるだろう。多くの国民が投資してきたものを、簡単に壊してまた投資させるというのは、多分に経済政策の影響とも言える。

しかし経済政策のために住宅投資を促す時代は終焉を遂げた。経済政策は社会福祉や子育て支援、そして望ましくはないけれど防衛費などに向けられつつある。個人が住宅ローンに縛られる時代は終わりつつあるのだ。これからの住宅は本当に必要なものを必要な時に作ると言う形に変わるだろう。一度作られた住宅は少なくとも2世代(40歳で作り、そこに10歳の子供がいる場合、その子が80歳になるまでの70年間程度だろうか)にわたって住み続けられるよう作るべきだし、今の木造住宅ならばそれは十分に可能だと言える。もちろんメンテナンスは必要である。適正なメンテナンスを行えば、今の建築は100年は持つ。つまり3世代にわたる利用に耐えるのだ。2世代目、3世代目は住宅ローンから解放される。その分は社会福祉に回せばよい。よい社会を作らなければこの国の未来はない。建築ばかり作ったって仕方がないのである。

茶室紹介2

2023/01/24

数年前に作った鉄と毛糸の茶室である。その名も鉄毛軒。なんともふざけた茶室であるが、実はこれ建築家藤森照信先生のスケッチを実物化したものである。作ったのはますいいのスタッフ達。大工さんなどの職人さんは一切参加していない。ベニヤ板に穴を開け、10ミリの鉄筋を曲げて差し込んだところに、倒れないように横方向の鉄筋を結びつけていく。最後に白い毛糸を壁と感じるくらいの密度で結びつけていけば出来上がりである。草庵茶室とは戦国時代の仮設の建築物であった時もある。利休の待庵などはまさにそのような経緯で作られたものだと予想されているわけだが、それを現代的な素材で簡単に作ると・・・こんな茶室もあるのだなあになるわけである。

茶道家にとって、水屋実は茶室と同じくらいに大切な場所だ。

2023/01/22

埼玉県川口市にて工務店機能を兼ね備える建築家として、自然素材を大切にしたデザインで注文住宅・古民家再生を行っています。(分室 東京都町田市・群馬県高崎市)
今日は、東京都台東区にあるOさんのご自宅にて現地調査に伺った。Oさんは茶道をされているのだけれど、この度自宅に茶事を行うための茶室を作りたいということでご相談いただいたところである。既存の図面をもとに簡単なプランを行なったので、新しく作る間仕切り壁と実際の建物の窓との関係性や、新たな設備器具の給排水の配管経路、炉壇を設置するために床のレベルをどこに合わせるかの確認などなど現地でなければわからないことについての確認調査業務を行った。

写真は昨年作った茶室の様子である。いつも茶室の写真ばかりを掲載しているので今日は水屋の写真である。茶道家にとって、水屋実は茶室と同じくらいに大切な場所だ。この事例では茶碗だなを水屋の幅いっぱいに幅広くとるという工夫を施している。

ますいいリビングカンパニーさんって小さな工事もやってくれるの?の質問を受けることが多い。もちろんである。

2023/01/20

地元の町会の倉庫の棚の工事である。ますいいリビングカンパニーさんって小さな工事もやってくれるの?の質問を受けることが多い。もちろんである。建築家が工務店機能を兼ね備えるという経営スタイルをとって21年、ますいいには大工さんも社員雇用として所属している。だからこそ小回りが効くし、急なご要望にも応えることができる。材木だって奈良県の吉野とか栃木県の八溝地域、岐阜県の檜材がある木曽地域や群馬県の中之条市など直接製材所と取引をすることで、街の材木屋さんの仕入れ値と同じくらいに安く仕入れることを可能にしている。

このような取り組みは全て地域の皆様の暮らしを住宅建築を通して豊かにするためだ。町会の倉庫の棚を作る、これは立派な仕事だと思う。皆様もお気軽にお声かけいただきたい。

長い階段のある家

2023/01/19

埼玉県の川口市の高台の上に、長い階段のある家を作った。階段の向かい側にある大きな窓からは、隣の家の屋根の上の視線が抜けていて、街並みを見渡すことができる。窓の外にはウッドデッキがあり、まるでリビングの続きのように広がっている。階段の上は子供室だ。引き戸で仕切ってプライバシーの確保もできるようになっている。

全て壊すのではなく、残せるものは残す、そしてそれを地域にとっても魅力的な形で利用できる提案

2023/01/16

埼玉県川口市にて工務店機能を兼ね備える建築家として、自然素材を大切にしたデザインで注文住宅・古民家再生を行っています。(分室 東京都町田市・群馬県高崎市)
今日は東京都台東区にて新築住宅を検討中のSさんの敷地調査に伺った。Sさんの敷地には現在古い貸家兼住宅が建っている。今回のプロジェクトでは既存建築の大半を解体して、残りの部分を貸家として利用し、空いた土地に新築住宅を建築するというものである。浅草周辺の工事はとても多い。この辺は人情の街で祭りなども残っている。観光客が多く来るのもこれぞ日本という雰囲気に惹かれてのことだろう。路地裏を入ると古い木造住宅を改装したカフェなども多い。革製品を製造販売している個人の工房なども多く、歩いているだけで面白い街だと思う。多くの東京の街が大型再開発を起点に特徴のない街並みに変化してしまうものと比べると大変大きな差のように感じるがそれは住民の意識の差だろう。一人一人の住民がその町に対して愛着をなんとなく感じていて、だからこそワンブロックまとまっての再開発にはならなくて、古さを生かした街並みや和の文化が残っていることが今の形を作ってきたのだと思う。そして東京のこのような形は、観光立国を目指す日本にとってとても貴重なものであると思うのだ。全て壊すのではなく、残せるものは残す、そしてそれを地域にとっても魅力的な形で利用できる提案を考えていきたいと思う。

埼玉県川口市にて進行中の古民家再生プロジェクト

2023/01/12

今日は朝から埼玉県川口市にて進行中の古民家再生プロジェクトについての見積もり作業を行った。築100年の古民家をスケルトン状態まで解体し、耐力壁で耐震補強工事をおこおなってから暮らしやすい住宅に蘇らせるというプロジェクトである。下の写真は玄関を入った上部にある化粧梁の様子である。直径30センチ以上の丸太が四本、堂々と並んでいる姿はまさに荘厳だ。工事の進行が楽しみである。

成人式

2023/01/09

成人式。今日は長女が早生まれの19歳、つまり二十歳の記念ということで、振袖を着て家族で記念撮影をした。思えば今年で21歳になる長男が生まれた年がますいいリビングカンパニー本社の完成した年であるから、僕が戸田建設を退職して独立した実質的なスタートであった。今の本社で生まれ育ち、そこで5年ほどして現在シェアハウスに利用している家に引越し、そして現在の住まいに昨年より住んでいる。どの家が最も思い出に残っているかを聞いてみると、やはり予想通り最初の家、つまり今のますいい本社であった。この建築は僕の師匠の石山修武先生により設計されたもので、やじろべえのような鉄骨構造の上に木造の平家が乗っているというとても特徴のある建築である。住まいとしては決してふさわしい形ではなかったかもしれないけれど、建築に挑戦する工務店の強い気持ちを表すというコンセプトを存分に表現できているとても力強い建築である。

撮影は最後に川口駅前にて行った。思い出の場所をめぐり家族5人で映る写真を撮影するなどそうそうあることでもない。良い記念日となった1日だった。

 

以前東京都新宿区にて造ったFさんの家の外構工事が終わりましたの報告の便りをいただいた。

2023/01/08

埼玉県川口市にて工務店機能を兼ね備える建築家として、自然素材を大切にしたデザインで注文住宅・古民家再生を行っています。(分室 東京都町田市・群馬県高崎市)
以前東京都新宿区にて造ったFさんの家の外構工事が終わりましたの報告の便りをいただいた。川に沿った幅の狭い歩道に面する狭小敷地で、その歩道と建物の間約1mほどの隙間を利用した外構工事である。風情のある数々の木々が植えられ、石を詰め込んだ金属カゴの塀が立ち上がり天然石の飛び石まで出来上がるととても良い雰囲気の庭が出来上がった。やっぱり建築は庭とセットで初めて出来上がるものだと思う。そろそろコロナも落ち着き、念願の民泊施設としての利用も始められるかもしれない。それも楽しみに待ちたいと思う。

Iさんの避難観測所

2023/01/06

埼玉県川口市にて工務店機能を兼ね備える建築家として、自然素材を大切にしたデザインで注文住宅・古民家再生を行っています。(分室 東京都町田市・群馬県高崎市)
今日から仕事始めである。みんなが無事に出社とはいかず、1名コロナでテレワークとなってしまった。まあ仕方がない。

昨日の日記でご紹介したIさんの避難観測所の写真をご紹介する。下の写真は100歳になるおばあちゃんの様子である。毎日施設に通っていくが、施設では針仕事をしているという話をいつも聞かせてくれる。僕の祖母が生きていたら同じくらいの歳である。お互いご近所だからよく知っていて、あなたのおばあちゃんはねえ・・・の話はいつも聞かせてくれる。お年寄りは新しい記憶は忘れても昔のことはよく覚えているらしい。

外観。鉄骨の一本柱によって支えられたステージに木造の小さな小屋が建っている。鉄骨は水害時に水が通り抜けやすく水圧力を受けにくいデザインとした。上部のバットレスのような支えは筋交の代わりの役目を果たしている。

内観。支那合板仕上げである。赤い印は外部のバットレスで支えられているポイントを示している。天窓からは星の観察ができる。避難・観測所たる所以である。

母家との接続部。内部階段を上がって避難をすることができる。階段には移動式のスロープも設置できるようにした。スロープは普段はしまっておく。

新建築住宅特集にますいいリビングカンパニーの取り組みが紹介された

2023/01/05

まだ仕事始めではないけれど、今日から少しずつ動き始める。午前中は川口市役所挨拶回り。午後は裏千家埼玉県支部新年会に参加した。

今年は新年早々、新建築住宅特集にますいいリビングカンパニーの取り組みが紹介された。以前から紹介してきた、川口市が浸水被害にあった時のための避難小屋の計画である。クライアントは元大学教授のIさんだ。Iさんは僕がこの会社を作った時に知り合った。当時は壁の漆喰塗り替え工事をやらせていただいたことを記憶している。以来20年間のお付き合いである。当時Iさんには奥様がいた。二人のお嬢さんも同居していた。今年で100歳になるお母さんもまだ若かった。奥様は亡くなり、二人のお嬢様はすでに家を出た。75歳と100歳の老老介護の二人暮らしである。いざというときに近くの小学校や公民館に迅速に避難することなど到底難しい。そもそもこの地域には何十万人もの住民がいる。入り切るわけがないのである。だったら自分の敷地の中に避難できる場所を作ってしまえ、の発想である。

住宅の仕事をしているとその家族の一生にお付き合いすることになる。どれだけ寄り添ってその家族の要請に答えられるか、建築を通して、そして建築以外の部分でも、とにかくできることはなんでも答える、それが町医者的建築家の姿勢である。作って終わり・・・ではないのだ。作った時が始まりなのである。

このプロジェクトは大学の後輩である佐藤研吾君(コロガロウ/佐藤研吾建築設計事務所)と一緒になし遂げた。佐藤くんには心より感謝したい。詳しくは紙面にて紹介されているのでぜひご覧ください。

僕たちの暮らしの中には古き良きもの、風習、習慣、風景、が沢山ある

2023/01/03

新しい年が始まったが、なんだか昨年来の戦争や物価上昇、それを抑えるための金利上昇などのきな臭さを纏ったスタートとなっている。さてさて、今年はどんなことが起こるのやらである。世界の未来など予測できるはずもなく、それは誰の意思だかわからないけれど海の波のようにゆらりゆらりと動いていく。そう言うことは今も昔も同じで、でもそう言う不安定な世界の中で、この国は独立した立場、つまり主権国家であるという形を失うことなく続いてきたわけだ。

岡倉天心の東洋の理想を読んだ。その中に、
「日本はアジア文明の博物館となっている。いや博物館以上のものである。なんとなれば、この民族の不思議な天性は、この民族をして、古いものを失うことなしに新しいものを歓迎する生ける不二元論の精神を持って、過去の諸理想の全ての面に意を留めさせているからである。・・・一方においては近代的強国の地位に押し上げると同時に、アジアの魂に常に忠実にとどまらかしているものは他ならぬこの粘着性である。」とある。

仏教や儒教といった文化宗教の伝来や、元寇や日清戦争や日露戦争などの争い事まで、隣国との関係は切って捨てることができるはずもないという現実の中で、古きを生かしながら新しいものを受け入れて変化することで生きてきたこの国は、この先もきっとそういうふうに発展していくのだと思う。しかしながら昨今のこの国はこの古きを生かしの粘着性に欠けているような気もするのだ。これがなくなるとただ単に新しいものに振り回されるだけとなるであろう。僕たちの暮らしの中には古き良きもの、風習、習慣、風景、が沢山あるのだ。こういうものに対する粘着性ということについてもう少し考えを深めてみたいと思う。

 

 

新年あけましておめでとうございます

2023/01/01

新年あけましておめでとうございます。

今年の正月は妻の実家の滋賀県東近江市に来ている。妻と結婚してかれこれ21年が経つが、コロナなどで来れない時を除いては、ここ東近江氏で過ごす正月が我が家の恒例だ。結婚したのが26歳、今年は49歳になる歳だから23年間という長い年月がたった。妻のお父さんはとても活発な人で、本業の工務店の他に、魚釣りや鴨などを獲る猟師もやっていた。年末の30日には職人さんも交えて餅つきなども行った。餅米を蒸し、何臼も餅つきをして、それをその場で食べる、とても良い思い出である。結婚当初はよく山に連れて行ってもらった。山菜やワサビ、きのこ、そして猟・・・いろいろな経験をさせてもらった。高齢となった今では鉄砲をやめ畑作業を中心に釣りなどを楽しんでいる。

昨年薪ストーブをプレゼントした。MOKI製作所のMD140というちょっと大きめのストーブで40センチほどの長い薪も入れることができる。大工さんが自分で作った家なので、どこに煙突を通そうかと考えて全てを自分で作ってしまった。バックパネルやスチールアングルのガードも手作りである。セルフビルドと言っていいかどうかは微妙だけれど、プロによるDIYであることは確かだ。薪は山でとっている。1年以上乾燥させた薪がたくさんあって、その過程で写真のような欅の足置きまで作ってしまった。毎朝火をつけるのが楽しみなんだよ・・・暮らしの一部に溶け込んでくれたようで何よりである。ここに来て二日は早起きの僕が火をつけたけれど、うまくつくとそれだけで気分が良い。夜の団欒もいつもは和室でゴロゴロだったのが、自然と火の前に集まってくる。やっぱり家の重心には火があると良いのだ。

いよいよ新しい年が始まった。今年もいい家、そしていい家族の団欒を作って行きたいと思うのである。

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