小さな仕事にも、難しい仕事はある。でも一生懸命に取り組めば、やっぱりなんとかなる。小さいからといって、適当にやれば上手くいかない。
2024/11/09
今日は僕の茶道の先生のご自宅の照明器具の交換と、障子の張り替えの作業立ち会いを行った。この障子、水屋の棚の向こう側、サッシの手前にあって、以前来た障子屋さんは外すことができないと言って断ったそうである。棚の向こう、棚板は4段もある、障子と外部の冊子の隙間はわずかに5センチほど、斜めにしても外せないことは明らかである。「でもその前に来た障子屋さんは、外すことができて綺麗に張り替えてくれたのよ」の話を聞いてしまっては、やっぱり自分が現場に行って、障子を外すことができるところを見せなくてはの、変な意地を持ちつつ、現場で悩むこと約10分、やっぱり外れないものは外れない。すると先生から「前の職人さんは、外側にも人がいたなあ」のヒントをいただく。まるで子供の頃の愛読書、江戸川乱歩の少年探偵団の小林君にでもなった気分だ。。ということはやっぱり窓のサッシを外して、外側に出したのかなということで、僕たちも窓を外してみることに。網戸と窓を外すには、ネジを緩めて留金を外さなければならないのだけれど、照明を頼んでいたS君が器用に外してくれて無地に外すことができた。内側にS君、外側に僕、上手い角度を見つけるとなんとか外すことができた。小さな仕事にも、難しい仕事はある。でも一生懸命に取り組めば、やっぱりなんとかなる。小さいからといって、適当にやれば上手くいかない。なんだか、達成感のある午前中であった。
13時より、日本建築学会教育シンポジウムに参加。今日は事例の発表である。この論文査読はとても苦労した。というのも査読社の厳しいチェックに応えるべく、合計10回ほどの教授とのやりとり、ようやく認められての再査読、そして採用となったのである。発表すると、おそらく査読者と思われる先生が質問してくれた。教育の世界にも、経済学の考えが必要とされていて、でもそういう事例は少ないので参考にしたい、のお褒めの言葉であった。大変だった分、とても嬉しく思った。真剣に取り組めば必ず指導してくれる人がいる。本当に感謝の午後であった。
18時、左官の小沼さんを自宅にお招きする。先日茶室の聚楽壁を塗ってもらったお礼である。この壁の土は小沼さんが親しい左官屋さんからいただいたとても古い土で、なんとも言えない味わいがある。床の間の中は、なげすさ仕上げと言って、稲藁のはかまの部分を水に浸し、聚楽壁の中に円相のように埋め込んでいる。この仕上げは利休が待庵で採用したもので、今の時代にはあまり見ることができないものである。僕も初めて見るのだけれど、小沼さんも初めて採用したそうだ。お招きした茶碗は、左官の茶碗である。稲藁の模様の中に左官鏝が描かれているものだが、これは京都の粟田焼き安田浩人さんに作ってもらった。終了後は居酒屋で会食。とても充実した夜であった。