増井真也 日記 blog

東京都新宿区にて進行中のNさんの家の現場では、左官の小沼充による大津磨きの施工が行われている。

2024/11/29

東京都新宿区にて進行中のNさんの家の現場では、左官の小沼充による大津磨きの施工が行われている。小沼充さんは、現代に生きる左官の名人、東の横綱である。亡くなった榎本新吉さんのお弟子さんで、磨きを得意とする。数々の講習会などで講師を務めている。Nさんは小沼さんのことを知り、小沼さんのファンになり、小沼さんに塗ってもらうためにますいいに家づくりを頼んでくれた。小沼さんにはそんなふうにファンになってしまう人がたまにいる。そして、僕もその一人である。だから小沼さんはますいいの壁を塗ってくれるようになったのだ。職人の世界にたまに出現する上手達人は建築の世界のヒーローである。それに憧れて、職人になろうとする人がいるくらいに人を惹きつける存在である。

写真は和室の入り口のR壁に、沖縄の赤土を塗りつけて、大津磨きに仕上げる様子である。小沼さんはこの沖縄の赤土が好きだ。ますいいのモデル茶室にも塗っている。土壁というと聚楽壁の侘び寂びが有名だけど、赤土の華やかさもまた良い。想像してみてほしい。大好きな左官に塗ってもらった家で毎日を過ごすことを。ふと小沼さんの左官の作業の様子を思い出すたびに、ニンマリとしてしまうほどに嬉しいことである。左官の壁とはそういうものなのだ。

左官のかまど作り

2024/11/28

午前中、不動産業務に関する宅建協会の立入検査があったので、その時間を使って左官のかまど作りを行った。瓦の上にセメントと土を塗りつけて土台を作ったものに、日干しレンガを乗せていく。日干しレンガは、土と藁と砂を混ぜて醗酵させた土を型枠に入れて、約3ヶ月間乾燥させたものである。接着には土を使う。コンクリートブロックを積むような感じで、日干しレンガを積み、火窓を木型で開けておく。この状態になったら約2ヶ月ほど乾燥させる。次の工程は中塗り土を塗りつける工程だ。1月末ごろに挑戦したいと思う。

東京都台東区にて進行中のSさんの家

2024/11/25

東京都台東区にて進行中のSさんの家。この現場は一人暮らしの女性のための住宅である。ご両親から受け継いだご実家に建つアパートの一部を解体してできた空地に、2階建ての小さな木造住宅を建てている。写真は2階のリビングの様子。外壁にはサッシが取り付けられ、透湿防水紙が貼られているところである。いよいよ大工工事が本格的に進んでいく。3月引渡しに向けてしっかりと進めていきたい。

壁の四角いブロックは、ワークショップで作られた泥のブロックだ。

2024/11/24

朝8時ごろ、常滑のホテルを出て会場に向かう。会場ではまさにスタート直前、しばらくするとスタートの笛が鳴り競技がスタートした。一度競技が始まると競技者は本当に真剣に作業に集中しだす。なんだか見ているこちらまで緊張してしまうほどの気迫がある。それだけ真剣に取り組んできたということなのだろう。12時30分、作業が終了した。

終了後は、INAX ミュージアムにあるどろんこ館を訪れた。まるで伊豆長八美術館の如くに、多くの左官屋さんが集まって作業を行い作られた建築である。壁の四角いブロックは、ワークショップで作られた泥のブロックだ。展示されているのは泥団子、これだけ大きなものをいったいどうやって作るのだろう。すぐ近所にある陶芸研究所は、INAX の創業者である故伊奈長三郎氏による寄贈で作られた建築で、設計は堀口捨巳によるものだ。1961年に作られたモダンな建築だ。内部には二つの茶室があった。昨日一緒にお食事をさせていただいた、元どろんこ館館長の磯村さんの情報により茶室研究の権威の茶室を見ることができた。それにしても茶室の建具と壁の割り付けまでもがモダン、これは今後の参考にしようと思う。

朝一番から新幹線に乗って愛知県の常滑市にある中部国際空港近くの愛知県国際展示場にて開催される「技能五輪」の応援にきた

2024/11/23

今日は、朝一番から新幹線に乗って愛知県の常滑市にある中部国際空港近くの愛知県国際展示場にて開催される「技能五輪」の応援にきた。技能五輪全国大会は、技能者の技術向上と職業訓練の振興を目的として設立された大会の一部であり、日本国内での技能競技大会の重要な枠組みとして発展してきた。その背景には、戦後の復興とともに日本の技能者育成が国家的な課題とされた歴史的な流れがある。技能五輪大会は、1947年にスペインで初めて開催され、若い技能者がその技術を競う場としてスタートし、日本は1962年に第11回国際技能五輪大会から初めて参加した。国際大会への参加を契機に、1963年から技能五輪全国大会を開始したわけだが、左官職人種競技は、1964年の第2回技能五輪全国大会から正式に競技種目として導入されている。この大会は若手技能者の育成を目的としているため、23歳以下の若手技能者を対象に、左官技能の基礎から応用までを競う内容となっている。技能五輪全国大会で優秀な成績を収めた選手は、国際技能五輪大会への代表として出場することが奨励されているというものだ。

会場に着くと、すでに選手たちが競技に取り組んでいた。選手の周りには多くの応援者がいる。指導者、保護者、様子を見にきたその業種の技能者などなど、見学者にはいろいろな人がいる。写真はものつくり大学から参加している女子学生が、石膏の置き引き作業をしている様子である。2枚目の写真は完成見本。この見本と同じものを1日半で作成しなければいけない。3枚目の写真は大工職種の競技風景である。左官は11人、大工はそれに比べると随分多い。左官、がんばれ!である。

防犯についての打ち合わせ

2024/11/15

夕方、埼玉県川口市にあるIさんの家で防犯についての打ち合わせ。Iさんは今から24年ほど前、僕がこの町で仕事を始めた年に、珪藻土の左官仕上げの仕事を頼んでくれた千葉大学の名誉教授である。それからは、数年に一度の割合で、いろいろな工事を行なってきたのだけれど、今回の相談は「防犯」、最近の犯罪の増加を受けてのとてもタイムリーなご相談である。最近の押し込み強盗の傾向は、素人が数人で武器を持って侵入し住民を縛り上げて現金を奪っていくということにある。こういう強盗に対応するにはどうすれば良いかの対策の一つとして、まずはセコムへの加入が挙げられる。セコムは約5分間で現場に駆けつけてくれるわけだが、5分で警備員が来ることがわかっている現場をわざわざ狙う犯罪者は少ないだろうということである。二つ目の対策は、侵入されにくい家とすることである。事例を見ていると玄関や窓をこじ開けての侵入が多いので、例えばダブルロックにするとか、防犯合わせガラスに変更したり、鍵付きの雨戸をつけたり、などの対策を重層的に行なっていくことで、侵入するまでの時間を稼ぐことができる。侵入に時間がかかり、しかも5分で警備員が駆けつけるとなれば、これは余計に狙われにくいわけだ。

ご相談終了後は、いつものお食事会である。持ち込んだ料理とお酒をいただきながら9時過ぎまで。今夜も楽しい時間を過ごすことができた。

今日は悠久楽土という漆喰の話である。

2024/11/11

今日は悠久楽土という漆喰の話である。この漆喰は村樫の漆喰と鹿沼土を混練りして、塗壁材として利用するものである。下地の石膏ボードの上にKOBAUというドイツ製の壁紙を貼る。その上に先ほどの土入り漆喰を左官で施工するのだが、土が入っているおかげで吸放湿性も高まり、テクスチャーも出て、色も落ち着く。KOBAUはとても強いので、振動などの揺れによるひび割れも生じにくくなる。実はこの商品はチルチンびとの工務店である響屋さんが開発した商品で、僕の会社でも使うことを勧めていただいて採用した。同じチルチンびとの工務店の名古屋のエコ建築工房さんでも使用しているというので信用度も高い。僕たちの工務店の勉強会は、みんなが家づくりにとても真剣に取り組んでいるので、こういう情報交換があるのである。

今回は、まずは僕の住まいの寝室に塗ってみた。毎日寝ている部屋だからその良さがよくわかる。次はさいたま市で進行中のOさんの家に塗る予定だ。この様子はまた報告しよう。

今日は、栃木県鹿沼市にある高見林業さんへ、数組のクライアントさんと一緒に林業体験ツアーに訪れた

2024/11/10

今日は、栃木県鹿沼市にある高見林業さんへ、数組のクライアントさんと一緒に林業体験ツアーに訪れた。ますいいでは、この鹿沼市にある高見林業さんの山で採れた木を製材し、住宅の構造材である柱や梁の一部に使用しているのだが、家づくりにあたって事前に山の木を見ることも良い機会ということで企画した。山は紅葉真っ盛り、真っ赤に燃えるような紅葉やブナなどの広葉樹が綺麗に色づいている。今日は檜の伐採を実践していただいたが、この伐採を見るたびに、何十年もかけて育った木を使わせていただいているということに感謝の念が湧いてくる。近くで見なければ、頭で分かっていても、心が理解できないことがある。こういうことはまさに現場で見ることが大切だと思う。

小さな仕事にも、難しい仕事はある。でも一生懸命に取り組めば、やっぱりなんとかなる。小さいからといって、適当にやれば上手くいかない。

2024/11/09

今日は僕の茶道の先生のご自宅の照明器具の交換と、障子の張り替えの作業立ち会いを行った。この障子、水屋の棚の向こう側、サッシの手前にあって、以前来た障子屋さんは外すことができないと言って断ったそうである。棚の向こう、棚板は4段もある、障子と外部の冊子の隙間はわずかに5センチほど、斜めにしても外せないことは明らかである。「でもその前に来た障子屋さんは、外すことができて綺麗に張り替えてくれたのよ」の話を聞いてしまっては、やっぱり自分が現場に行って、障子を外すことができるところを見せなくてはの、変な意地を持ちつつ、現場で悩むこと約10分、やっぱり外れないものは外れない。すると先生から「前の職人さんは、外側にも人がいたなあ」のヒントをいただく。まるで子供の頃の愛読書、江戸川乱歩の少年探偵団の小林君にでもなった気分だ。。ということはやっぱり窓のサッシを外して、外側に出したのかなということで、僕たちも窓を外してみることに。網戸と窓を外すには、ネジを緩めて留金を外さなければならないのだけれど、照明を頼んでいたS君が器用に外してくれて無地に外すことができた。内側にS君、外側に僕、上手い角度を見つけるとなんとか外すことができた。小さな仕事にも、難しい仕事はある。でも一生懸命に取り組めば、やっぱりなんとかなる。小さいからといって、適当にやれば上手くいかない。なんだか、達成感のある午前中であった。

13時より、日本建築学会教育シンポジウムに参加。今日は事例の発表である。この論文査読はとても苦労した。というのも査読社の厳しいチェックに応えるべく、合計10回ほどの教授とのやりとり、ようやく認められての再査読、そして採用となったのである。発表すると、おそらく査読者と思われる先生が質問してくれた。教育の世界にも、経済学の考えが必要とされていて、でもそういう事例は少ないので参考にしたい、のお褒めの言葉であった。大変だった分、とても嬉しく思った。真剣に取り組めば必ず指導してくれる人がいる。本当に感謝の午後であった。

18時、左官の小沼さんを自宅にお招きする。先日茶室の聚楽壁を塗ってもらったお礼である。この壁の土は小沼さんが親しい左官屋さんからいただいたとても古い土で、なんとも言えない味わいがある。床の間の中は、なげすさ仕上げと言って、稲藁のはかまの部分を水に浸し、聚楽壁の中に円相のように埋め込んでいる。この仕上げは利休が待庵で採用したもので、今の時代にはあまり見ることができないものである。僕も初めて見るのだけれど、小沼さんも初めて採用したそうだ。お招きした茶碗は、左官の茶碗である。稲藁の模様の中に左官鏝が描かれているものだが、これは京都の粟田焼き安田浩人さんに作ってもらった。終了後は居酒屋で会食。とても充実した夜であった。

この大学の授業の一つに、版築の土塀を作るというカリキュラムがある。

2024/11/05

今日はものつくり大学にて授業の見学や、先生からの論文の指導を受けたりの1日であった。

この大学の授業の一つに、版築の土塀を作るというカリキュラムがある。このカリキュラムは、造園チームと左官チームの2チームから構成されていて、初めに造園チームが、石積みの土台と版築の下地を作り、そこに左官チームが荒壁を塗って最後に漆喰で仕上げるというものだ。荒壁は荒川の河川敷から採取した荒木田土を何年もかけて少しづつ使用しているのだけれど、その土もだいぶ発酵が進んでいてなかなか見事な状態であった。学生たちも体験したことがない内容に、真剣に取り組んでいる。この中から毎年わずかではあるけれど、左官や造園に入職してくれる。でもほとんどは現場管理者になる。大学まで出て職人というのが少ないのは仕方がないことなのだろうが、職人の地位が向上すればそれも少しは変わるかもしれないわけで、やはり社会全体で優れた職人を大切にする文化を醸成したいと思うのである。

僕は左官技能者の評価基準の作成に取り組んでいるのだけれど、左官版ミシュランのようなものを作って、それを出版することで、施主や設計者が左官職人を選ぶことができる社会を作りたいという思いでやっている。もしもそんな社会ができたら、ゼネコンに搾取されて安い値段で左官工事をやらされるのではなく、自らが設定した適正な施工単価で施工を請負、自らの仕事に誇りとやりがいを持って取り組むことができるようになると思うのである。

赤城山、八ヶ岳、奥秩父、そして富士山と山々が連なる様子がみごとであった

2024/11/04

今日は久しぶりの登山。人生で初めての尾瀬である。尾瀬ヶ原に行くのかと思い込んでいたのだけれど、一緒に行く登山の先生のKさんが示した目標は、富士見峠であった。鳩待峠までバスで行き、小屋の裏にある登山道を登ると富士見峠の方向に進。斜面はとても緩やかで歩きやすい。今日は鳩待峠行きのバスの最終日ということで、それなりに人がいるようだけれど、高尾山のような人混みというわけでもなく、特にこの富士見峠方面は人が少なくてとても静かな登山を楽しむことができた。途中の絶景を写真に撮れた。赤城山、八ヶ岳、奥秩父、そして富士山と山々が連なる様子がみごとであった。

今日はモデルハウスで行われた森の扉に参加した

2024/11/02

今日はモデルハウスで行われた森の扉に参加した。このイベントは木育を目的として、行なっているもので、チルチン人の呼びかけで全国的に行われているものである。ますいいでもテーマに合う作家さんたちにご協力してもらい、賑やかに開催することができた。この写真は、ますいいの家づくりの中で発生した、建設廃材を利用したカトラリーづくりだ。

ますいいでは丸太で国産広葉樹を購入し、製剤して家づくりに利用している。その中で例えば棚板などを指定の寸法に加工すると、どうしても細いあまり部分が出て、これらは建設工事の中で使用することはできない廃材となる。今回は山桜の廃材を作家さんに提供し、加工してもらうことで、写真のようなカトラリーキッドになった。これは面白いということで僕もチャレンジした。約一時間ほどの作業で1本、なかなかやりがいのあるワークショップだった。

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