増井真也 日記 blog

仕事始めは8日月曜日の予定、皆様良いお年をお迎えください。

2023/12/30

今日から年末年始の休暇をいただいている。今回のお休みは久しぶりに家族で湯沢温泉を訪れた。この辺りにスキーをしにくるのはかれこれ10年ぶりくらいだろうか。群馬県の水上から関越トンネルを通って谷川岳の西側を潜り抜けるとそこは雪国となる・・・予定だったがなんとも雪が少ないようである。以前来たときは車の運転に不安を覚えるような雪の積もり方で、国道沿いには雪の壁が聳え立っていたのだけれど、今日は道路のアスファルトが剥き出しだ。周りに積も雪も所々地面が見えてしまっていて、まるで虫食いのように見える。1週間くらい前に大雪が降ったはずなのだが、それ以外の日の暖かさが雪を溶かしてしまったのだろう。

ここ湯沢は川端康成の雪国の舞台となった地である。僕はなんとなく山がある場所が好きで、冬の湯沢温泉はその中でも格別に良いと思う。スキーがあるおかげなのか、こうした温泉街にしては今時珍しく活気がある。年末年始は2日までここで過ごす予定である。仕事始めは8日月曜日の予定、皆様良いお年をお迎えください。

埼玉県さいたま市別所にて、庭の中の小屋を作っている

2023/12/29

埼玉県さいたま市別所にて、庭の中の小屋を作っている。とても小さな車庫のような大きさの小屋だ。そんなものを作る仕事があるのかと思うだろうが、僕はこれまでも結構小さな小屋を作ってきた。今回の小屋はアーティストである施主さんが庭の自然と一体になるための居場所として作っている。外壁には大きなガラス面を作り、中から庭が見渡せるようになっている。しっかりと作りすぎないことを大切に、あくまで手作りの粗野な小屋の風情を失わない程度に仕上げている。外壁には焼杉の板を採用した。焼杉はいずれ真っ黒からシルバーに変わり、周囲の緑に溶け込むようになるだろう。屋根は半透明の波板である。空から降り注ぐ光はそれを透過して内部を柔らかく照らしてくれる。屋根の上に落ちた落ち葉はその姿をぼんやりと見せてくれる。こういう魅力を大切にしたいから天井は張っていない。年明けには、塗装、薪置き場、庭の飛び石の工事を行って完了する予定だ。完成を楽しみにして欲しい。

この設計には以前訪問した石見銀山にある群言堂さんのカフェをイメージしていた。(下の写真)古民家の縁側を利用して作られたカフェのガラス面はとても粗野な作りだけれど庭の緑を取り込み、とても居心地の良い場を作り出している。屋根の透明のポリかも光と緑を柔らかく取り込むとても効果的な装置だ。こういう仕事では、現場での即興的デザインとあり合わせ感のある素材選び、職人の手作業の跡がとても大切である。つまりはプリコラージュ(あり合わせの器用仕事)の手法が重宝される場面なのだ。

午後、ものつくり大学三原研究室にて修士論文についての打ち合わせ

2023/12/18

午前中は事務所にて東京都杉並区にて設計中のFさんの家の見積書作成作業。物価上昇の影響は大きいようで、設計開始時点でお約束した予算よりも見積もり金額がオーバーする傾向にあるのだが、なんとか小さな無駄を探し出しそれを省くことや、協力業者に値引きの依頼などをしながら金額を合わせていく。

午後、ものつくり大学三原研究室にて修士論文についての打ち合わせ。来年4月の入学に向けて早くも論文の課題を命じられる。少々フライング気味のスタートであるがまあ学ぶことにいつからも何もないわけで、与えられた課題に挑戦しようと思う。埼玉県の行田市にある建築、機械といった製造業の担い手を育てる大学に初めて身を置いたのだけれど、学生たちがパリで開催される造園の世界大会に出場するための練習として型枠を組んでいたり、巨大な鏝絵が壁面に飾られていたり、家具工房では一生懸命椅子を作っていたりとなんとも感動的な場面に出くわした。日本にはまだこんなふうにもの作りに情熱を向ける人がいたのかの感動である。こういう特殊な環境で育んだクラフトマンシップが消えることのない建築業界でなければいけないと強く感じるし、その業界を作っていくのはまさに私たちの世代である。本当に良いものをどうしたら作ることができるかという、生産体制、組織運営に関する研究はとても意義のあることだと思う。

朝一番で埼玉県越谷市にて中古住宅の購入を検討中のIさんの物件調査立ち会い。

2023/12/11

朝一番で埼玉県越谷市にて中古住宅の購入を検討中のIさんの物件調査立ち会い。この物件は平成10年ごろに作られた注文住宅で、木造2階建の30坪程度の建築である。この世代の住宅は、シングルガラスのアルミサッシ、断熱材はグラスウールの厚さが50ミリ程度の仕様なので断熱性はすこぶる悪い。床下断熱材などは申し訳程度の施工がされているのみで、場合によっては床下断熱材がないことだってある。だからこの世代のリフォームはまず初めに断熱性能を向上させることが必須となる。断熱性能の向上には、まずは1階の床を剥がすこと、床下にしっかりと断熱材を施工することで暖かさはだいぶ変わる。アルミサッシについては最低でもガラスをペアガラスに交換する。それでも足りない場合は二重サッシにすることを考える。場合によってはカバー工法で断熱性の高いサッシを取り付ける。さらに本格邸に行う場合、壁を全て剥がして断熱材を入れ替えるのだがこれは予算に応じて行うようにしている。

中古住宅の場合はこれに加えて、水周りのリフォームがある。風呂キッチントイレの3点セットは全て交換する場合が多いので予算の大部分を使うことになる。内装の仕上げなどはセルフビルドを取り入れて費用を抑えるように工夫する。購入が決まったら施工に入る予定だ。この模様はもしかしたらYOU TUBEでご紹介するかもしれないので楽しみにしていて欲しい。

埼玉県さいたま市にて設計中のOさんの家打ち合わせ

2023/12/09

午前中は古民家の現場にて古民家再生を考えているSさんのための見学会。Sさんは工事中から3回ほど見学にお越しいただいているが、見事に仕上がった様子を見てとても喜んでいただけたようである。下地の構造補強の時からの苦労も知っていただいているのでなんだかとてもお話が盛り上がった。古民家再生は新築ほどスムーズに進まない、だからこその面白さがあるのである。

午後、埼玉県さいたま市にて設計中のOさんの家打ち合わせ。Oさんとは約1年ほど前からであろうか、土地探しの段階からのお付き合いである。一緒に土地を探していると、まるで自分ごとのようにどんな家を探していて、どんな暮らしをしたいのかがわかってくるから不思議である。今日は1階リビング案と2階リビング案の二つの提案をさせていただいた。2階リビング案はとても日当たりが良さそうである。1階リビング案は道路側に作るアクセサリー工房とリビングの距離が近いので職と住の移動導線がとても便利そうだ。どちらも一長一短、結果は1階リビング案を採用することにした。次回はショップのデザイン周辺のご提案をすることに。進行が楽しみである。

林業をしながら国土の保全を担うわけであり、とても重いを背負いながら仕事をしなければいけない職業なのである

2023/12/06

今日は栃木県にある高見林業さんを訪問した。高見林業の斉藤社長は栃木県の鹿沼市を中心に、山林の植え付けや伐採などの受託施業から、作業道の開設、一般製材、木工品の製造販売を行っている会社である。斉藤社長が丁寧に育てた杉やヒノキを天然乾燥で家づくりに使用できるレベルまで乾燥させて、国産材の家づくりに利用するという流れをますいいの家づくりにも取り入れることができないかの検討を行うために、チルチン人の山下編集長よりご紹介していただき、今回の訪問が実現したというわけである。

日本の林業は衰退しているが、一部の林業事業者は山林を買い規模を拡大して営業効率を高めることで黒字化を図っている。しかしとても残念なことに、この黒字化を図っているというのは助成金があってのことであり、事業単体で利益が出る状況ではないのが実情だ。林業家というのはただ単に木を植えて商売をすれば良いというものではない。山から海に流れる栄養分を含んだ川の水は漁業にも影響するし、もしも山の木を手入れしなくなってしまえば豪雨の際に土砂崩れなどが起きてしまうなどの災害にもつながる。つまりは林業をしながら国土の保全を担うわけであり、とても重いを背負いながら仕事をしなければいけない職業なのである。斉藤社長は東京農業大学出身の60歳、息子さんも東京農業大学出身の好青年、ともに柔道部出身のがっしりとした体躯の持ち主で、この地域の林業をしっかりと支えてくれている。良縁に育てることができれば良いと思う。

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