東京都杉並区にて造ったUさんの家の現場
梅雨も明けて急激に暑くなってきた。畑の野菜も全く育っていなかったゴーヤがようやく実をつけ始めるなど、日本の本来の夏野菜が成長しだしてくれたので一安心である。トマトはどうやら完全にダメになってしまったようだ。雨を遮る設備もないので仕方がないのだけれど、長い梅雨がこんな風に食糧事情に影響を与えるというのは考え物である。水は不足しても作物を育てることができなくなってしまうし、かといって多すぎてもダメなわけで、これまでの日本の気候のちょうどよい具合というものがいかに貴重で奇跡的なものだということを改めて感じるのである。
昼過ぎより、東京都杉並区にて造ったUさんの家の現場に向かう。小さな土地に造った最大ボリュームの住宅である。2階建て+ロフトのプランだがロフトに面して吹き抜けを配置し、できるだけ大きな空間を確保するように設えた。吹き抜けに面した屋根にはトップライトを設え、十分な光を取り込むように工夫している。内部の造作工事には無垢材をふんだんに利用し、壁には漆喰を塗り、キッチンなどにはタイルを施工した。クライアントの手によるセルフビルドの塗装工事などもあって、しかもそれがとてもきれいに仕上がっており良いアクセントになっている。今日のところはダメ直しなどについての話し合いをして夕方には終了し帰、事務所。
1年以上かかって造り上げた住宅がまた一つ完成したけれど、この瞬間というのは我々造り手にとってもなんとも言えない嬉しい瞬間である。この先もしかしたら息子さんの代まで使い続けてもらえるかもしれないわけだし、そうなればもしかしたら僕の人生が終わった後も使われ続けるわけだ。日本の建築はプレファブリケーションによって合理化されたハウスメーカーや、建売住宅のように同じデザインのものを並べるといった、手間のかからない簡単に造れるものばかりになってしまった。手間のかかることはできないから、設備器具とかの大量生産できるもので住宅の良さをアピールしているけれど、それは所詮まやかしである。しかもそれに多くの消費者は気が付いている。
しかしこういうものが合理性や生産性の向上を重んじる資本主義社会の中では正義であることは確かだし、それは否定のしようもない。近年の働き方改革のごとき流れにものっとっている。でもますいいにはそうじゃない家づくりをしたいという人間が集まっている。そりゃ若いんだから遊びたいし、休みも欲しいけれど、でもつまらない家造りなんかして生きていくのは嫌だという人間が集まっているのである。
ますいいでは今でも、膨大な時間をかけて話し合い、沢山の図面を作成し、職人さんが丁寧に造り上げ、最後にクラインとの手によってセルフビルドで自分流に味付けをするような作品ができるという状態が、そんなロマンチックな状態が保たれている。モノづくりのロマン、この先もずーっと残し続けていきたいものなのである。