茶室の壁に土壁を塗った話を数日前に書いた。その茶室の炉に炭を入れ、茶を点ててみた。もちろん炉開きの時期はまだ先であるが、試しに使ってみたいの気持ちはなかなか抑えることはできない。水指は萩、茶碗は黒楽、棗は黒漆の無地、花入には信楽を設えた。花は秋明菊に美男葛。余計なものを排除してみて土の空間を味わってみた。この部屋には一応照明がついているけれどそれを消してみるとわずかな自然光に照らされる方が美しいことがわかる。道具たちだけではなく、茶室の聚楽壁の表情もわずかな揺れ動くような明かりの方が、一つ一つの藁の様子がわかるような撫でものの優しい風合いが伝わってくる。
日本の家は明るすぎる。僕の家のリビングは、間接照明が中心であんまり天井についているダウンライトをつけることはない。夕食の時は蝋燭の光と、二つある間接照明の灯りを使うのだけれど、それに目が慣れてしまうと明るすぎる光は目が疲れてしまうようになる。バーの明かりが蛍光灯だったら嫌なのはみんな一緒だろう。でもなぜか家のリビングだとみんなめいいっぱい明るくしてしまう。北欧の家は総じて暗い。キャンドルとストーブの灯り、そしてわずかな間接照明が心地よい。
灯りの文化が日本にはないのか。そんなことはない。茶室にはそれがある。茶室に蛍光灯をつける人はいない、いないはずである、多分いないだろう・・・(一部の公民館などではそういう酷い事例を見ることもあるけど。)みなさんも思い切ってリビングにある蛍光灯を取り外してみてほしい。代わりに間接照明を二つくらい買ってみよう。それだけでもきっと灯りの魅力に気がつくと思う。