津田寛治様邸に関する手記①
建てた家を巡るというインタビュー記事を書いたことがある。取材はもちろん自分で行った。今日はその中でもある俳優さんについての手記をご紹介する。
津田寛治様邸に関する手記①
建築家をやっているといろいろな人と出会う。年齢も職種もそれぞれで、打ち合わせをして いると、いろいろなお話が聞けてとても楽しいし、ためにもなる。 時には有名人もやってくる。13年ほど前に俳優、津田寛治さんのご自宅を建てた。映画やテ レビドラマなどで活躍されている方でご存知の方も多いだろう。津田さんとの出会いは、奥様 がさんかくの家が掲載されている雑誌「住まいの設計」をご覧になった時に、モルタルで作っ たキッチンやお風呂の写真を見て気に入ってくれて、ご連絡してくれたところから始まった。 (さんかくの家では名前の通り三角形の建築形状を採用しているのだが、その形状に合わせ て、左官屋さんがモルタルで作ったキッチンやお風呂を配置している。)
津田さんは当時、すでに土地を購入して、不動産屋さんに紹介してもらった設計士さんに図面 を書いてもらうところまで進んでいる状態だったのであるが、その設計士さんに塗り壁で仕上 げをして欲しいと依頼したところ、「この土地では地盤が悪いから塗り壁の仕上げは無理で す。クロスを貼らなければ仕上がりません」と言われて、決別してしまった時に、たまたま新 宿パークタワーにあるリビングデザインセンターオゾンのライブラリーで雑誌を見つけて、ま すいいに来ていただいたというわけである。
津田さんは当時のますいいとの出会い、印象をこのように話してくれた。 「僕の家づくりには、設計を押し付けるような建築家は絶対に入れたくないと思っていまし た。そういう建築家って他人の住む住宅を自分の作品としてとらえているじゃないですか。で もそれは傲慢なことでしかないと思うんです」 「住宅は決して建築家の作品ではないと思います。住宅はあくまでそこで暮らす人のものなん ですね。だからこそ、住む人の希望とか使いやすさとかをないがしろにして作品性を高めるこ とに偏りすぎてしまうことは傲慢だと思います」 「建築家がもしクライアントの希望を聞いていて、でもやっぱり後々後悔するよって思って も、お客さんがそう望むのであれば思うようにやらせてあげればよいと思います。それで、ど うしても嫌になったらやり直せばいいと思います」 「僕たちは、デザインを押し付ける建築家ではなく、工務店なんだけれどセンスのわかるとこ ろを探していたんですね。その考えにぴったり合う会社を見つけたのが、たまたま、ますいい リビングカンパニーさんだったんですね」