増井真也 日記 blog

坂戸訪問診療所の高野副理事長とお会いした

2022/12/19

埼玉県川口市にて工務店機能を兼ね備える建築家として、自然素材を大切にしたデザインで注文住宅・古民家再生を行っています。(分室 東京都町田市・群馬県高崎市)
今日は坂戸訪問診療所の高野副理事長とお会いした。この診療所は在宅医療を専門とする病院で、いわゆる普通の外来の診療はしていない。患者さんは在宅で末期癌の最後の時期を過ごす方や、施設に入所する高齢者などだ。登録している医師が患者さんを訪問し、診療を行うのでとても手間隙がかかる方式なのだが、通院をすることができなかったり、末期で病院にいることができなくなってしまった患者さんにとっては「最後の砦」となるとても大切な病院なのである。

病院での出来事に46歳の末期卵巣がん患者さんのお話を聞いた。ご主人は地域消防士、お嬢さんが大学生で、息子さんが高校生、どこにでもある普通の家庭である。そこに余命半年の状態でお母さんが病院から退院してきた。初めの半年はお母さんが家事を行なっていたけれど、容態が急激に悪化し、その全てに家族が対応することができない状態になってしまったという。家族が不在の時に診療所の職員が8時間も付き添ってあげるというようなことも起きる状態となってしまい、再入院を勧めるも患者さんはそれを拒否。家族と患者さんのすれ違いまで生じてしまい、結局入院したのは朦朧とした意識の中での決定だったそうだ。(家族はこれ以上の介護は無理と言い、本人は一度追い出された病院には戻りたくないといっていたそうだ)妻として母としてこれ以上家族に負担をかけることを避けたのかもしれない。

お話を伺っていると本当に重く重要な最後の砦の診療所であると感じた。今後ますます高齢者が増え、それを支える若者の数は減っていく。マンパワーも経済的にもこれまで以上に厳しい状況になるだろう。看取りという言葉を数多く聞いたが、人の死を陰に追いやってしまった現代社会を生きる僕たち世代が、最もどうして良いかわからない行為であるような気がする。在宅医療との向き合い方という問題は、今後のこの国の医療を考えるともう少し身近に置いておかなければいけない事象であるような気がするのである。

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