田村和也 雑想 blog

ベンチのような小屋のような

2022/03/14

世田谷区砧の住宅のお庭に小さな小さな建築を設計しています。

お声がけいただいた当初は、用途も何も決まっていなく、

広さはそこそこあるのだけど、庭をどう使ってよいかわからず・・・

何か楽しいことをしたいんですが・・・

提案してもらえませんか??

こんな感じのご相談。

私たちも、何ができるかよくわからないまま、

模型を作り、提案を何度か重ね、

ようやく方向性が見えてきました。

担当は町田分室の和順君。

小屋のような提案から、打ち合わせを重ねるごとにどんどんサイズは小さくなり、最終的にはお施主さんの趣味である植物を育て、飾ることのできる温室のようなベンチのような不思議な建物になりました。

配置も建物側に寄せてみたり、離してみたり・・・

こちらは最後には、建物の真反対、塀の角にちょこんと置かれることになりました。

リビングの掃き出し窓の前に設けたデッキと対面した位置に置かれ、

玄関アプローチからお庭へ人をお迎えするような場所。

小さな小さな建築ですが、お庭に奥行きが生まれ、楽しそうなイメージが膨らみます。

完成が楽しみです。

 

 

吉野の山の話

2022/03/02

少し前の話。

昨年末、奈良県の吉野のお付き合いをはじめさせてもらった山に見学に行きました。

吉野と言えば杉が有名で、吉野杉という言葉を耳にしたことのある方も多いと思います。

ますいいリビングカンパニーは、構造材含め国産材料にこだわった家づくりをしていて、

従来、八溝と呼ばれる栃木県産、関東の木材を主に使っていました。

しかし、昨今のウッドショックの影響もあり、そこだけでは供給が追い付かず、

吉野産の木材を直接仕入れ構造材に使わせていただいています。

そして、お付き合いをはじめるにあたって、一度、現地を見させていただこうと奈良県まで行ってきました。

吉野の杉ってきっといいんだろうな、という漠然としたイメージで現地に向かいましたが、

やはりイメージと実際に見ることは大違い。

製材所や山で働いている人、木こりさん、いろいろな人の話を聞き、山に登って伐採に立ち会わせえてもらい・・・

そして、伐採した木の倒れる瞬間などはまさに圧巻です。

「吉野の木は悪いものから切っていくんですよ。

いい木ばかり切っているとこれからの人たちに何も残りません。

先祖から受け継ぎ、未来につなげていく。

だから吉野の山には100年、200年を超える木がたくさんあるんです。」

「今日切った木はだれが植えたのかな?

ひいおじいさんか、ひいひいおじいさんか笑」

まさに祖先から受け継いだものを未来に手渡していく。

普段、私たちの考えている時間の感覚、スケールと全く違います。

 

 

木は切ると、その断面から水があふれてきます。

それを見るとまさにさっきまで生きていたんだなと感慨深い気持ちになります。

100年、200年と生きた木、そんな大切な命を使わせていただいている。

もっともっと、ずっと大切にしてもらえる、世代を超えても使い続けてもらえるような

そんな建築を作らなきゃいけないと深く考えさせられる旅になりました。