住宅建替えのご相談を受けてから敷地調査に行くと、高台の閑静な住宅地の一角にある住宅は、築80年という非常に古いものであった。中に入ってみるととても全てを壊してしまうのがもったいないと思うような丁寧なつくりのものであった。特に客間として作られたと思われる部屋は床の間や縁側の作りも非常に見事で、この部屋のある部分だけは壊さずに、新築住宅とつなぎ合わせることでこれから先数十年使われるようにしたいという案が生まれた。縁側に面する庭にある小さな池には数匹の金魚が泳いでいて、その池の前には大きな槙の木が立っている。床の間に飾られる掛け軸はいまも季節ごとに変えられ、祖父の銅像が部屋にある。80年前、昭和初期の質の高いまさに民家が今も生活空間となっている。この空間と新築住宅をどのようにしていくか、設計はそこから始まった。
元々建っていた築80年の住宅の一部分を保存し構造補強と仕上げの補修等を施して再利用し、それ以外の部分に関しては解体後、新たに2世帯+お姉さんという大家族が住むことが出来る住宅に生まれ変った。また古い住宅部分と新しい住宅部分を接続し、一つの大きな家として利用できるようにしたことで、これから先数十年と新たな記憶と共に古い住宅の記憶も語り継がれていくことでしょう。