埼玉県川口市にて工務店機能を兼ね備える建築家として、自然素材を大切にしたデザインで注文住宅・古民家再生を行っています。(分室 東京都町田市・群馬県高崎市)
僕が茶道と出会ったのは今から10年以上前の2010年の秋、36歳の時である。これまでも日本建築は好きだったので京都の街を歩いたり、桂離宮や曼殊院、詩仙堂や南禅寺などお気に入りの古建築の見学をしたりの機会はあった。でも自分自身で和風建築の設計をすることをイメージするようになったのは茶道を始めてからのことである。日本の大学では日本建築の設計に関する教育は限定的である。一般的な研究室ではあまり取り組まず、日本建築史という歴史分野の教育に含まれてしまうことが多い。だから個人的な興味以上には関わる機会もなかったというのが正直なところだ。
今回の計画では、ご実家だった土地に姉妹で使う茶室建築を設計した。住まいではなく茶道を楽しむための建築である。
茶室建築にはその使われ方と連動した決まり事がある。寸法体系も独特で、基本的には京間の畳の大きさが基準となり多くのことが定められている。畳の枚数で広さが表現されることも独特だ。4畳半以下の部屋は「小間」と呼び、それより広い部屋は「広間」と呼ぶ。客三人くらいまでは小間を使い、それ以上なら広間を使う。茶事は小間、お稽古は広間と使い分けることもあるだろう。この計画では8畳と4畳半の二つの部屋を作ることにした。
懐石料理・菓子・濃茶・薄茶を振る舞う茶事が茶道の醍醐味であるが、それらの全てをスムーズに準備することはなかなか大変なことだ。客三人をもてなす料理を作り、盛り付け、運びながら片付けもする。菓子を盛り付け運び出し、同時に濃茶や薄茶の準備もできる。亭主側の動線を考え、客の動線も考え、限られた敷地面積の中でコストを抑えながら両者を成立させることが今回の設計の醍醐味であった。
客はまず8畳の待合に入る。見立ての路地を通り、腰掛け待合に待つと、迎え付けとなる。蹲で清め、見立ての路地を通り躙口から4畳半に入るとそこには土壁に囲まれた小宇宙が広がる。いよいよ茶事の始まりである。
