家の庭に蹲を設置した。蹲というのは水をためることができるようになっている石のことで、お茶室に入る前に身を清めるために使用する設備である。水道で手を洗えばいいじゃないかという現代社会的な考えもあろうけれど、まあそれは神社の手水舎とおんなじこと、こういう伝統的設えがあってこその茶室なのだ。
ようやくできた蹲、だが一つ大きな問題があった!!なんと蹲の隣に西王母、白侘助、むくげが植えられている。どれもこれもお茶らしい花である。まさにお似合いと思うところなのだが、実はこれらの花は茶室に生けられる代表選手たちである。ということはお客様が蹲に身を清めに来てみると、そこには茶室の中に生けられるその日の一番の楽しみの花があるということになってしまうわけなのだ。茶道では、その日にどんな花が活けてあるかというのが一つの感動ポイントだからこそ、ここにこれらの花があることは普通ではないということになる。もちろん茶会に必要な花々なので、庭の見えないところに植えることは必要だけれど、堂々と植わっていてはいけない、なんとも難しい存在なのだ。
そういえば利休のエピソードに朝顔の話があった。秀吉が見事な朝顔を見たいといったところ、利休はすべての花を落とし、茶室に一輪の朝顔を生けたそうだ。秀吉が利休の茶室を訪れてみるとそこには朝顔がない。怪訝に思って茶室に入ると、一輪だけそっと飾られている。そして秀吉は感動するという話である。
こういうおもてなしの心が茶道なのである。このままいけば、僕も茶会のたびにすべての花を落とさなければいけないことになる。早速植木屋さんに目につかないところへの移植を頼むこととしようと思う。

