埼玉県川口市にて工務店機能を兼ね備える建築家として、自然素材を大切にしたデザインで注文住宅・古民家再生を行っています。(分室 東京都町田市・群馬県高崎市)
先日基礎アルテックさんを訪問したときに漆の鷲というものを初めてみた。和紙に丁寧に漆を塗り乾燥させるとできるのだが、火や水にも強い特殊な和紙というだけでなく、様々な表情を持つとても風情のある仕上げとなる。茶道の世界にも漆製品はたくさんあるが、一体どれほど昔から漆というものは使用されているのだろうか?
北海道の函館で発掘された漆が塗られた糸で編んだ装飾品や櫛状の髪飾り、腕輪などは年代測定の結果約9000年前のものだということが発見された。これは現在のところ世界で最も古い漆とみなされているそうである。このエリアから津軽海峡を挟んだ地域のあたりは9000年前から縄文末期の2000年前ごろまでの集落後が多数発見されていることから、縄文時代には漆製品が多く使用されていたことが予想される。縄文時代にには各地で栽培されていた漆の木であるが、今では漆かきを生業とする人の数も減りだいぶ減ってしまったようである。現在日本で使われている漆はその98%が中国を中心とした外国産で、国産の漆を復活させようとしている人が僅かに活動しているだけになってしまったようだ。
漆の木というのは10年から15年ほどで漆を採取できる状態となる。漆の幹に傷をつけ、滲み出てくる樹液をヘラで掻き取るのだが、一本の木から採取できる量はわずか200gほどだそうだ。ネットで検索すると100gの国産生漆が1万円以上で売られているが、この年数を考えると安すぎるくらいのような気もする。
物の値段の決まり方、つまり資本主義の失敗はこういうところに起きるような気がする。漆製品がプラスチック製品に変わり便利さだけが重要視されたときに国産漆の値が下がる、つまり需要と供給の原理だけに任せた結果なのだろうが、それが正しいとは限らないということだろう。こういうことは他にもたくさんあると思う。失敗に気がついてもそれを再生させることは結構難しいものもある。だからと言ってそのときに不要と思われるものに税金で補助をして生きながらえさせることが必ずしもうまくいくわけでもない。木曽アルテックのさんの漆製品は漆製品の可能性を感じるものばかりだ。当然、木曽漆器の産地だからこその発想だと思うが、素材を利用した他の製品への活用の可能性をデザインすることは、一見不要となってしまった製品の需給バランスを再構築してくれる可能性があると思うのである。漆という素材にちょっと興味を持ってみたいと思う。