気をつけないと無くなってしまいそうな大切なもの
昨年から設計していた戸建て住宅の現場では、ベニヤを一枚も使用しない家づくりというものに挑戦してみた。ベニヤを使わない家づくりをしている理由は化学物質を最小限に抑えるための家づくりのため、だからもちろんビニルクロスもメラミンなどの化粧材も使わずに、内装漆喰はシーラーなしのプラスターの下塗りに漆喰仕上げの徹底ぶりである。キッチンだって、わざわざ家具屋さんにヒノキを使って接着剤最小限の注文で依頼した。断熱材も羊毛断熱材、ちょっと高いけど新築現場が臭くない、なんだかとても居心地が良い結果となった。
ベニヤを使わない、昔の大工さんならそれがどうしたの?という感じだろうが、ベニヤ板があることが当たり前の僕たち世代にとっては、なかなか大変な挑戦である。野地板、外壁モルタル下地合板、床下地合板といった部位に杉板を使用するのだが、非乾燥材ならまだしも床下時に使用する乾燥材の荒板など持っている材木屋さんはなかなかないのが実情だ。最近は売れないからね!の一言で断られる中、親しい福島県の製材屋さんから取り寄せることができた。しばらく前に、米松などの輸入材をやめて構造材を国産材に切り替えたことでできた山とのつながり、もしもこれがなければ買うことすらできなかったかもしれない。ちなみに床板は杉の30mmを貼っている。軒天なども然り、当たり前のものを当たり前に使っているだけだけれど、なんだかとても懐かしい良さを感じた。
ある時、ふと栗を使いたくなった。栗の丸太はどこにあるのか?群馬県の森林組合にはていよく断られてしまった。東北の岩手県にはまだたくさんの栗材があるらしい。ではそれをどこで買えるの?そしてどこで製材するの?寝かせるのは何年?製材ってどうやって目利きするの?誰に聞いたら良いかの暗中模索、でも困っている時は指導者が現れる、僕に丸太の目利きを仕込んでくれたのはなんと地元の木風堂の親父であった。そんなわけで最近は栗や桜、鬼胡桃の丸太を購入して製材所で製材し、1年間以上寝かせて造作材として使用するようにしている。うちの倉庫にはいつも100枚くらいの板がある、国産広葉樹の板を常にストック、これはとても大切にしていることだ。うちの大工さんはこの栗を使って建具の枠を作ったり、家具を作ったりの造作を楽しんでくれる。もっと難しい図面を描いてこい・・・、腕の良い大工はセリフまでかっこいい。
気をつけないと無くなってしまいそうな大切なものを、決して忘れないように大切にしたいと思う。僕たちはこの世代の責任世代である。もしも僕たちが亡くしてしまえば、子供たちの時代にそれは博物館の中のものになってしまうのだ。
(ベニヤのない家の建築後、52種類の空気環境測定の調査をしてみた。その結果検出されたのは、アセトンとαピネン。アセトンは配管工事の接着剤、ピネンは杉から放出する天然物質であった。)

