今日は、左官の小沼さんが埼玉県蕨市にて進行中の古民家再生の現場にて、木摺下地への中塗土の施工を行った。木摺下地というのは、杉の小幅板を9mm間隔で柱に打ちつけたものである。まず初めの工程では、初めに漆喰を塗り、少し乾いたら追っかけで中塗土を塗る。そこに畳表に使用される井草を伏せ込み、さらにこの尺トンボを写真のように施工する。最後にもう一度中塗土を塗って終了となる。この後約1ヶ月乾燥させて、もう一度土を塗る。そして最後に仕上げ塗りだ。
Today, plasterer Conuma applied a mud wall to the wooden lath base at a site in Saitama Prefecture,Japan where an old house restoration project is underway. The wooden lath base is made of narrow cedar boards nailed to the pillars at 9mm intervals. The first step is to apply plaster, and once it has dried a little, the mud with straw is applied next. The rush grass used for tatami mats is then laid down, and this snake-tonbo is then applied as shown in the photo. Finally, the intermediate soil is applied again to complete the project. After this, it is left to dry for about a month, and another layer of soil is applied. Finally, the finishing coat is applied.
土壁は手間がかかる。大量生産大量消費社会では、この時間と手間が災いし、土壁などやるものがいなくなった。小沼さんは、そんな時代に生き残った奇跡だと思う。でも今の時代は、ちょっと変わってきている。手間と時間をかけて作るもののほうが良いとされる時代になりつつある。でも、すでに土壁の素材の生産者は、左官屋さんがいなくなってしまったのと同じようにいなくなってしまったのだ。その代表格が尺トンボの生産者である。尺トンボは、釘に麻紐を巻いて作る。ただそれだけの作業だから誰でもできる。でも誰もやらない。昔は刑務所の中の人たちがやってくれたそうだ。農家のお婆さんの内職にもなっていただろう。でも今ないなくなってしまったのだ。
ある日、娘から、「親友の妹さんが重度のダウン症で、もしB型終了支援施設に就職しても袋詰めの作業で月給が6000円にしかならない。お父さんの会社でなんとかならないの?」という話を相談された。うちの会社は小さいから障害者雇用の義務はない。義務はないけれど、何かの形で貢献したい。そう考えてこれまでも、就労支援施設からの物品の購入などを続けていた。今回は、娘の親友の妹さんからの相談である。さてさて、ここでなんとかできなければ、僕は一生障害者雇用をすることはできないだろう。そんな思いで、何ができるかを考えた。そういえば、最近左官の伝統構法の素材の中には、作り手がいなくなって困っているものがあると聞いた。作り方はどう考えても簡単そうだ。これならさきちゃんにもできるかもしれない。試しにやってみる?の話から練習を繰り返し、ようやく商品が完成した。素材は麻紐である。麻はとても高価な材料で、まともに購入すると売値よりも高くなってしまう。どうしようかと悩み、栃木県の麻問屋「もみぢや」さんに電話をかけて訪問し、事象を説明すると、なんと無償で提供してくれるという。本当にありがたい。これならなんとかできそうだ。そして、この物語を絵本にした。それが下の写真である。
この日小沼さんが使った尺トンボは、さきちゃんの尺トンボである。100年前の解体した土をとっておいて篩にかけて、今の新しい土と混ぜて塗ったこの壁に、いろんな人の思いが詰まったさきちゃんの尺トンボが使われていることがとても嬉しい1日だった。

