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増井真也日記

暮らしに自然を取り込むような感覚こそが軒下空間の魅力なのだと思う

2023/05/15

好きな建築の一つに、先週末に訪れた群馬県高崎市にある旧井上房一郎邸がある。この住宅はアントニン・レーモンドが設計したもので、当時東京にあったレーモンドの自邸兼アトリエと同じような建築を井上が注文したことによってこの地に造られた。今では高崎市が公開しているので誰でも見ることができるようになっている。

この写真は井上自邸の軒先の写真である。この日はあいにくの雨、でも傘をささなくとも軒下にいれば濡れることはない。軒の出寸法は僕が両手を広げたくらいだから大体1800ミリほどである。内部空間に広がる丸太の登りばりが外部に跳ね出していて、その上に垂木を支える受け梁が乗っている。屋根は軽い板金屋根だ。ちなみに妻面は軒が出ていないから、板壁の下部がだいぶ腐り始めているようだ。軒は日本の気候に適したデザインであるのだ。

軒下空間はとても日本的な居心地の良さを感じるから不思議である。軒下の床は鉄平石で仕上げられている。雨樋はなく、屋根から降り注ぐ雨水は那智黒石の敷き詰められた溝に落ちる。内部との境目は一面のガラスによって構成されている。この場所は内部と外部の境界を曖昧に繋ぐ場なのだ。これは最近よく造られるウッドデッキのようなものであろう。庭と内部の中間にある曖昧な場所があることで暮らしに広がりが生まれる。暮らしに自然を取り込むような感覚こそが軒下空間の魅力なのだと思う。

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