晩御飯の買い物に出かけて、どの食品を購入しようか迷っているとき、その素材の鮮度や値段、産地など様々な情報を天秤に欠け、お財布の中身と相談して、購入する食品を決める、これは毎日普通に誰もが行っていることだと思う。
しかし家を建てるとなるとちょっと事情は違ってくるようである。「坪○○万円~」という値段があたかも住宅を坪によって構成される完成された商品のように感じさせ、購入する側もそれを疑わない。本当は一つ一つの部材の組み合わせによって作り上げるものなのに、何がどうなっているのか皆目わからないままに購入してしまう。でもちょっと考えてみて欲しい。家作りというものはそれほど難しいものではない。地盤を固め、基礎を作り、柱を立てて、屋根を掛ける。窓を付け、外壁を作り、内装工事をしたら、設備器具を取り付け、ほぼ完成だ。ひとつの家を作るのにかかわる職種がだいたい20職種くらいだろう。そしてそれぞれの職人さんが作り上げる材料の一つ一つをばらばらに書き出してもA4用紙30枚程度で全て書き出すことが出来るのである。
たとえばヒノキの柱と杉の柱の値段がどれくらい違うのか。1本あたりの価格の差はせいぜい2000円程度である。30坪の住宅だと70本程の柱を使うことになるのでその差はせいぜい14万円だ。もちろん産地や等級によって値段は異なるが、「ヒノキの家」というパッケージを自分で作り出しても実は30坪の住宅で坪当たり5000円もかからないという事実がわかったとき、初めて自分自身の頭で採用するかどうかを決定することが出来るであろう。
買い物に付き合ってくれるシェフや料理人がいるとしよう。フレンチのシェフか中華の料理人かによって多少の意見の違いはあるだろう。得意とする分野も違う。でもプロとして材料を吟味し、安くておいしい献立を考えてくれる存在がいるとしたら大変助かる。私はそういう細かい比較検討を行ううえで、プロの技術者としての客観的な意見と建築家としての広い視野を持って、家についてクライアントと一緒に考えてくれる存在が建築家であると考える。フレンチと中華が違うように建築家にも様々な方がいる。それはその方のこれまで作った作品を見て判断してみて欲しい。
