最近、擁壁の作りかえの依頼が増えている。9月30日に東京都杉並区で擁壁が崩壊する事故があった。周辺住民や区役所は、古い擁壁のひび割れが次第に広がっていく様子を見て、所有者に擁壁の改善を求めていたというが、対策が施される前に事故が起きてしまったようだ。この責任はもちろんその擁壁の所有者にある。しかし、対策といってもそう簡単にできるものではないだろう。作り替えるのならその上に立つ住宅とともに解体し、新たに作りかえなければならないし、それには最低でも3000万円を超える費用(擁壁だけでなく、家も建て替えなければならない)がかかるのである。
僕が住む川口市にも擁壁はたくさんある。お隣のさいたま市もそうだ。住宅地を形成する擁壁は、その多くが土地を分譲した不動産開発業者によって作られた。戦後の宅地開発の波に乗って作られた住宅を形成するための宅造土木は、そろそろ寿命を迎える時期に差し掛かっている。そしてその多くは、高齢者が暮らす住宅となり、多額の費用を出して作り替えることが困難な場合が多い。そんな状況の中の依頼である。首都高なら行政の費用で作り替えたり、補強行使を施したりできる。でも個人所有の宅造土木は個人の費用でなんとかしなければならないのである。さてさて、少しでも安い方が良いし、でも安全に作らなければいけないし、・・・。今年から、盛土規制法が全国で施工された。これにより、こうした擁壁の作りかえには更なる許可制度が加算された。つまり、これまでよりももっとハードルが上がったとも言える。早く作りかえなければならない社会状況の中で、規制のハードルを上げ、それ以外の政策を施さなければ、ますます放置される危険な宅造土木が増えるだろう。これはなんとかしなければいけないと思う。そしてそういうことに関わることが街の工務店の仕事だとも思うのである。